第4話 【2日目には隣に花を】
俺たちは2人並んで学校へ向かっていた。ただ勿論、教室まで一緒に行くと色々とよくない噂が立ちそうだから学校の直前でどちらかが先に学校へ行き、時差をつけてもう片方が登校する。
この方法を今日の朝考え、今実際に実践しているところだ。
「じゃあ、俺はこの辺で」
「先、言ってますね」
「ああ、また教室で」
「はい」
今日のところは皇城に先に登校してもらう事になった。
5分ほどその場で英単語帳を読み、いざ学校へ行こうと足を進め始めたその瞬間。俺は誰かに呼び止められた。
「ねえ、きみ直己くんだよね?」
「そうだけど、誰ですかあなた?」
見たことのない女性。だけれども、声色でなんとなく優しい人なんだと感じる。
「あ〜ごめんごめん。まだ名前言ってなかったね。私、
「ああー」
俺は面倒ごとの気配を察知にその場を後にしようとした。
「ちょっと待ちなさい?」
俺は肩甲骨を粉砕せんと言わんばかりの力で肩を抑えられ、皇城の姉と話をすることになった。
「ご、ご用件は…」
「単刀直入にいうね。君と妹との現在の関係を無かったことにしてほしいの」
「は、はい」
ほらね?予想通りだ。やっぱり厄介ごとだった。こういうことには巻き込まれたくない。だから今までなるべく目立たないように生きてきた。だというのにお父さんのせいでこんな面倒ごとに巻き込まれるだなんて…
「勿論ただで別れろとは言わないよ。それなりの対価は用意する予定だし、なんなら君の新しい婚約者でも探してきてあげようか?」
「……」
(具体的な対価を提示せず、理由の説明もなし…裏があるような気がしてたまらないのだが一応ダメもとで理由の説明を求めてみよう)
「なぜですか?」
「はあ?」
「だから、別れろというのであればそれなりの理由を提示して貰わないと。そんな急に言われても意味がわかりません」
「そうよね。理由ね。『妹には妹の人生がある』これでどうかしら」
そうきたか。俺とおんなじ思考回路というわけか。確かに今思えば自分の可愛がってきた妹が突然お嫁に行くだなんて言われても納得できないよな。そんなのよく考えれば分かる話だ。
「理由は理解できました。そしてそれと同時にあなたが俺と同じ考え方をしているという事もわかりました」
「それはつまり…」
「ですが、皇城を自由にさせてやりたいと思う反面、この生活を手放したくないという思いがあるのも確かです」
「……」
「ですから、あなたの要求は……」
「ええ、あなたの思いはよく分かったわ」
「?」
「あなたみたいな人間、私嫌いなの。うちのお父さんみたいに他人の幸せを願っているふりをして自分のことしか考えていないような人間が。嫌いで嫌いでしょうがないの」
あれ、俺これ選択ミスったか?やはり敵前逃亡が最善手だったのでは?というかそろそろ学校に行かないと遅刻してしまうんだが?入学二日目に遅刻するやつは十中八九やばいやつなのよ。
「そうですか。あなたとは分かり合えると思ったんですけれどね」
「私は最初からそうは思っていなかったけどね。まあいいわ、来月。私たちの実家に来なさい。そこでしっかりと話し合いましょ。あなたにも学校があるでしょうから」
「……」
(終わりだよ終わり…許嫁実家呼び出しはほぼ確実に破談の知らせなのよ…)
俺は朝っぱらから疲労困憊になりつつ学校へと登校した。
学校に着いたのはいいものの、当然遅刻。隣の皇城がとんでもなく心配そうな顔でこちらを見ているがそんな顔で見つめないでくれ…惨めになる……
「九条くん、なんで遅刻したの?」
「いや、ちょっと英単語帳に集中しすぎちゃって……」
「本当?ならいいんだけれど……」
皇城には申し訳ないがあのことは今伝えるべきじゃない。せめて家に帰ってから。俺はそう思った。
無駄に頭のいい学校に行ったせいで今日から授業が始まる。高校生になり、授業の難易度はぐんと上がる。定期テストまでに余裕を持って範囲を終わらせるために早いうちから授業を始めるのだろうが、入学式の次の日から授業が始まるというのは生徒にとってはただの拷問である。
クラスの全員が死にそうな顔をしているのがわかる。だって今日の授業
歴史
現代文
化学
数学
だからな。嫌いな人間が多いであろう教科が勢揃い。しかもこの高校には文系理系の区分がないため、3年間毎日この地獄を繰り返すのだ。
(あと2つくらい下のランクの高校にしておけば良かった……)
俺は本気でそう思った。
そのあとは脳死で授業をノートにまとめ、なんとか初授業を乗り越えることはできた。
そういえば化学の先生が『480人から今年は何人減るだろうねフフフ』とか言ってたが大丈夫だろうかこの学校。
もしかしたら俺は盛大に学校選びを間違えたのかもしれない。
当然と言わんばかりに置き勉は禁止なので、あまりにも重たすぎるバッグを背負い下校する。
修行でもしているんですかと思わずツッコミたくなるような状態でなんとか帰宅し家に着いて一言。
「俺多分、今年中に死ぬわ」
皇城はまだ帰ってきていないので誰にも聞かれていないと思うが高校生活二日目にして俺はもう弱音を吐いていた。
手を洗いリビングのソファーでぶっ倒れていると、皇城が帰ってきた。
「ただいまー」
「はい、おかえり」
「私友達できちゃったー」
「そりゃ良かったな」
そんなに嬉しいのだろうか。皇城のいつものクールなイメージとは違う感じで俺に話しかけてくる。
そして俺は、そんな皇城の喜びに水を差すように今朝の出来事について話し始めた。
「皇城、すまない。俺はお前に嘘をひとつ吐いた」
「知ってるよ。どうせ朝のことでしょ?」
「……」
「で?どうしたの?何があったの?」
「今朝、君のお姉さんに会った」
「そうなのかーお姉ちゃんに会ったのか…何か言われた?」
「1ヶ月後……実家に来いって…」
「なるほどね〜お姉ちゃんにちゃんと話しないとね……」
「……」
「大丈夫だって!九条くんには何もさせないから!」
「ありがとう。疲れたし勉強してくるな」
「うん…」
本当に皇城にとって俺とこのまま過ごすことは幸せなのだろうか。俺は本当に皇城を幸せにできるのだろうか。
俺の隣にいる
無言の食卓。無言の寝室。その日の夜はなんの音も鳴らなかった。騒がしい話し声も笑い声も。何も無かった。この家には本当は俺しかいないのではないか感じるほどに。
──後書──
なんか…話が暗くなってしまった……で、でも大丈夫…きっと次の話は明るい話のはずだから……
ぜひよければ❤️…応援コメント…作品のフォローよろしくおねがします…
https://kakuyomu.jp/works/16818622174139445333
今じゃなくても大丈夫です…5話を見てからでも大丈夫ですので上記のリンクから⭐️の方をよろしくお願いします……
5話は明るくしてみせますから……
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