別れ

 「……こうして、少女は大好きだった青年に別れを告げました」


 不意に、彩春の声が途切れる。語っている途中から

泣きそうになっていたし限界が来たのだろう。

だけど、俺は声をかけない。かける事は許されない。

せっかく彩春が勇気を出してくれているんだ、

今声をかけてしまったら彼女の覚悟を踏みにじってしまう。

その代わりに彼女の手を包み込むようにしてそっと握る。

少しして泣き止んだ彼女は顔を上げて優しい笑顔を向けた。


『ありがとう』


 彩春の口がそう動いたように見えた。

何で…と思ったが、今はまだ彩春が語っている最中だから、

関係ない事を話さないようにしたのだろう。


「…この話には続きがあるけど、今日は…やめておくわ」

「……ぇ」


突然彩春が語るのをやめた。理由はよくわからない。

だけど、彩春が決めた事なら不思議とそれでいいと思えた。


「…わかった。でも、いつか続きを聞けるんだよな?」

「それ…は、…わからないわ」

「そういうもんなのか?」

「そうね…」


 このお話に出てくる女の子は、おそらく彩春の事だろう。

……わざわざ女の子と言った理由はわからないけど。

そんな事を考えていると彩春が立ち上がった。

なんでなんだろう……

「最後に、日向は私と別れてから……もっというと名月さんと過ごしてから幸せ?」


 俺は彩春の問いかけについて考える。

楓と過ごす日々は楽しいが、幸せかどうかで言えば少し違う気がする。

楓と一緒にいると、ふとした時に寂しさを感じる。

なんでそう感じるのか俺にはわからない。


「その様子だと、今は答えられないようね」


 彩春は俺が悩んでいるのを見透かしたように言う。

俺の考えは彩春にはお見通しのようだ。…俺がわかりやすいわけじゃないよな?


「…まあ、今は答えなくていいわ。まだ貴方の中に私がいるって事だし…

今日はありがとう。それと…ごめん。この後は1人で帰らせて」


 そう言うと、彩春は俺の返事を聞かずに走って帰ってしまった。

追いかけた方が良かったかもしれないが、突然の事に反応できなかった。

それに1人で帰りたいって言ってたしな。……なんて、ただの言い訳だ。

俺は、彩春と話す事から逃げてしまった。

その事実に自己嫌悪に陥る。しばらくベンチに座ったままだったが、

そろそろスーパーに寄って帰らないと楓に心配させてしまう。


 1人のままずっと待たせるのも可哀想なので早めにスーパーへ向かう事にする。

道中に、今日の夕食を何にするか考える。あまり手の込んだものを

作る気分ではなかったので簡単なものにしよう。

でも夕食の時間にしてはまだ少し早いのでカレーにしよう。

献立が決まったと同時にスーパーへ着いた。

必要な食材をパパッと購入し、家へ帰る。


「ただいま〜」

「おかえり、お兄ちゃん♪」


 玄関のドアを開けると、奥から楓が小走りでやってきた。

心なしか、いつもより楓のテンションが高い。どうやら心配させたらしい。


「悪い、遅くなった…あと呼び方についてはツッコミを入れた方が?」

「前々から思ってたけど日向兄さんって長いしね〜。

あと、お兄ちゃん欲しかったし」

「まあ、呼び方は気にしないからいいけど」

「やった〜! ありがと!」

「あ、でも学校では呼ぶなよ? お前の人気凄いんだから」

「わかった!」


 そんな会話をしながら、キッチンへ向かう。

買ってきた物を冷蔵庫へ入れて手洗いをしに洗面所へ向かう。


「今日はカレー!? 楽しみ!」

「すぐ作るから待ってろ…あ、少しは手伝ってもらうぞ」

「りょ〜かい!」


 すぐにカレー作りを始める。楓もやる気があるようだし、楽しみだ。

楓は少し危ないところもあったが、何事もなくカレーが完成する。

手分けして配膳を終わらせて席に着く。


「「いただきます」」


 2人で作ったカレーは美味しかったが、なぜか少し物足りなく感じた。





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 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

別れてからようやく2人がちゃんとした会話しましたね!

ここからどうなるのか見守っていただけると嬉しいです!

話が面白いと思っていただけたら、フォローやいいね、

星を付けてもらえると嬉しいです!

次回からは投稿ペースを戻していきたいです。

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