第1章

それでも時間は動き出す

彼女のいない夏休み

 次の日。


 カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。寝惚けたままカーテンを

開けるといつもより日差しが強く、思わず手で目を塞いだ。


 少しして目が慣れてくると着ている服に違和感を抱く。

慌てて鏡を見てみると昨日着ていた服のままだった。


「もしかして…」


 枕元の目覚まし時計をみると朝はとっくに過ぎて昼前になっていた。

寝坊した。この事実だけで、半覚醒の状態から一気に覚醒する。

それと同時に昨日の出来事を思い出す。


「そっか…フラれたんだった…」


 彩春にフラれた後、空が真っ暗になるまで泣いていた。

その後どうやって帰って来たのかは思い出せそうにない。


 急にお腹が鳴る。そういえば昨日から何も食べていない。

すぐに食べたかったので昼食はそうめん(薬味なし)にする。


「一昨日は彩春とそうめん食べたな…」


 2人だと少し狭かったキッチンも1人だとだだっ広く感じる。

独りには慣れていたと思っていたけど、見当違いだったようだ。


 ふと壁に掛かっているカレンダーに目を向ける。

カレンダーには大きく8と書かれた隣に小さい文字で『墓掃除』

と書かれていた。…あ、墓掃除やってない!

それどころか最近お墓参りに行ってなかった事を思い出す。

今日は何もする事がないし今から掃除しに行く事にしよう。


 今日の予定を決めながら、茹であがったそうめんをザルに移して水で冷やす。

洗い物を増やしたくないので皿には移さない。

つゆもササっと作り、テーブルに並べる。


「いただきます」


 1日振りのご飯、最高…!!栄養バランスフル無視だけど…

お腹が空いていたのであっという間にザルが空になる。


「ご馳走様でした」


 洗い物も少ないのですぐに終わった。目的地はそこまで遠くない。


 少し休んでから出発する事にする。

なんとなくテレビを点ける。この時間帯はワイドショーをやっていた。

どうやら帰省ラッシュを避けようと遅めに休みを取った

人達が高速で渋滞を作っているらしい。混雑を避けようとして

渋滞に巻き込まれるのが可哀想に思える。


 幸い、電車は混んでいないみたいで助かった。

そろそろいい時間なので出発する。


 最寄り駅から昨日と逆方向の電車に乗る。2駅程揺られて降りる。

改札を出て、バスへ乗り換える。


 花を買い忘れていた事を思い出し、途中で降りて花屋に入る。

この時期は花が少ないと思っていたが、色とりどりの花が沢山ある。

種類はわからないがおそらく秋の始めが旬なのだろう。


 しばらく店内を見て回ってカーネーションとリンドウを

レジへ持って行った。


「お買い上げありがとうございました〜」


 外へ出ると、暑さが一気に押し寄せて来た。


「あっちぃー…」


 急ぎ足でバス停へ戻る。バスは1分経たない内に来た。

よかった…あのまま待たされてたらたまったもんじゃない。

バスには俺を除いて3人しか乗っておらず空いていた。


 冷房、最高…そんな事を思いながら外を眺める。

この町にはあまり来ないから新鮮な景色だ。


 しばらくすると建物も減って山の麓の辺りまで来た。目的地までもうすぐだ。

10数分程バスに揺られてバスを降りる。そこから少し歩いて

目的の場所に着いた。


「長かった…」


 片道1時間弱。人によっては短いかもしれないが、この暑い中来たのだから疲れた。


「久しぶりだな…」


 辺りを見渡して、そんな声がこぼれる。最後に来たのは去年の春、

無事高校に入学した報告をしに来た時だ。

目的のお墓は園内の奥の方にある。お盆が終わったからか誰かに会う事はなかった。


「確かこの辺りに……お、あったあった」


 誰も来ていないのか墓に苔が生えていた。先に掃除しないとな。

バケツを借りて来て、掃除を始める。苔を取るのは簡単だけれども、

量が多く時間がかかる。濡れないように気を付けていても、飛び散った

水が掛かって服が濡れる。タオルは持って来たが着替えを持ってない事を悔やむ。


 1時間半程で掃除は終わった。慣れない掃除に手間取ったが、なんとかなった。

やっと近況報告ができる。掃除道具を片付けてお墓の正面に立って話しかける。


「久しぶり……父さん、母さん」


 それからここ最近の出来事を中心に話す。学校生活や成績、考えている進路。

そして…中2の時から付き合っていた彼女と別れた事。


「俺、どうすればよかったのかな…」


 答えは返ってこないのに気付いたら声にしていた。

悩みを父さん達に打ち明けた事で少しだけ楽になった気がした。

沢山話していたら、日が傾いていた。


「じゃあまた来るね…」


 最後にそう言って手を合わせる。次に来る時にはいい報告ができるように。

そして、もう大丈夫だよと笑顔で言いたい。


 そんな事考えながらバス停へ向かって歩き出す。

来た時と同じ道のりで帰る。帰りながら今日の夕食の献立について

考えられるくらいには余裕が出てきた。

スーパーに寄って食材を調達し、出来上がりを想像していたら家が見えてきた。


「…………え、」


 俺の家の前にがいた。






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ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!

第一章夏休み編(残り数日)開幕です!

これからは第〇章××編の形で進みます。よろしくお願いします!

よければ☆やいいね、拡散などよろしくお願いします!

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