17話 初めて


「わたくしのターン、ドローですわ」


 マリアさんの宣言とともに、苺の木の枝に巨大な実がなった。


「ふふふっ。では、本格的に攻めていきますわよ。イチゴナイト、スターナイトにアタックですわっ」


 剣を手に持ちイチゴナイトは駆け出した。


「にゃぁっ! このままでは、スターナイトはたおされてしまうにゃ!」


 熱い瞳でわたしは、ステージ上のかぐやちゃんを見る。


「いえ、かぐやちゃんの瞳を見てください」


 わたし以上に、瞳を輝かせていた。


「かぐやちゃんは絶対に負けません」

 

 手札の分身である『星の子』にそっと触れると、黄色い粒子になり、ステージ上にキラキラと散らばった。


「『ソング魔法マジック』! スターカーニバル!」


 ステージが、輝く星の空間に変化した。

 かぐやちゃん満面の笑顔で観客席に手を振った。


「みんなぁ、あたしの歌を聴いてねっ!」


 お客さんは湧き立ち、隣のねこにゃん――ではなく、猫谷先輩は興奮した様子で。


「ソング魔法マジック、スターカーニバルにゃ! 歌と踊りでお客さんを盛り上げて、ソングゲージを【100】にした時、モンスターのレベルを7上げるにゃ!」


「イチゴナイトはレベル6。ソング魔法マジックスターカーニバルが成功すれば、スターナイトのレベルはいっきに12にアップします」


 実況席で見守るなか、マリアさんは苺の実にちゅっとキスをする。


「させませんわ! ステージ魔法マジック、『苺畑ストロベリーパニック』」


 魔法発動とともに、輝く星の空間が『苺畑』に変わってしまった。


「――あれは、ステージ魔法マジックにゃ! ステージの光景を変えて、相手のソングゲージを上げるのを邪魔するのが目的にゃ」


「ああ……。きらきら光輝く星の舞台が……苺畑に……」


「歌に合わないステージは、お客さんの盛り上がりを下げるにゃ。このままじゃソングゲージが100に到達せず、ソング魔法マジックが失敗に終わってしまうにゃ」


( がんばれぇ、かぐやちゃん! )


 心の中で強く祈った。

 歌いながらかぐやちゃんは星の子に触れる。


「あたしもステージ魔法マジックを発動! スターダイヤモンド」


 星の子は粒子になりステージに広がっていく。


「ステージの苺畑が、ダイヤモンドに変わって、きらめく星の空間になった………きれい……」


 その光景に、わたしはうっとりと心を奪われた。

 そして観客席が盛り上がり、ソングゲージがぐんぐんと上がっていった。


「ソングゲージが【100】に到達にゃー! スターナイトのレベルが12にアップにゃ!」


 迫りくるイチゴナイトに、スターナイトは剣を輝かせる。


「スターフラッシュ!」


 放たれた閃光に、イチゴナイトは目を回してバタンと倒れた。


 『 わあああああああっ! 』


 観客席は盛り上がり、悔しそうにマリアさんは顔をしかめる。


「くっ。わたくしはストロベリーレディを召喚して、ターンを終了させますわ」


【ストロベリーレディ レベル4 属性 火】


 かぐやちゃんが手を勢いよく振り上げた。


「あたしのターン、ドロー!」


 上空から、星の子が降ってきて かぐやちゃんの周りにぷかぷかと浮いた。


「スターナイトで、ストロベリーレディーにアタック! スターフラッシュ!」


 剣から放たれた閃光に、ストロベリーレディはバタンきゅ〜と気絶した。


「さらにモンスターを召喚、『星姫 リリー』!」


 星の子をぎゅ〜っと抱きしめると、大きくなっていき、サングラスと現代風の衣装を身に纏ったうさ耳少女になった。


「あのモンスター、うさぎちゃんの『月姫 カグヤ』に とっても似てるにゃ」


「はい。2人は仲が良い姉妹で、月と地球に別れて暮らしているんです。わたしのカードは、かぐやちゃんから貰った大切なものなんです」

 

 わたしが心を踊らせるなか、かぐやちゃんは星の子に触れ――。


「ソング魔法マジック、『きらきら星』を発動! ソングゲージが100に到達した時、星姫 リリーは3回攻撃できる」


 星の子はキラキラとなり、ステージが きらめく星の空間に変わった。


「また、ソング魔法マジックがきたにゃ! このままソングゲージが100に到達したら、3ポイントのダメージをあたえて、かぐやちゃんの勝ちにゃー!」


「で、でも、ソング魔法マジックは強力な効果があるけど、使うたびにソングゲージが上がりにくくなります……」


「そうにゃ。2枚目のソングマジックで100までいけるカードアイドルは、高等部に10人もいないにゃ」


「ステージ魔法マジックで、ソングゲージを上がりやすくする方法もありますけど……きっとかぐやちゃんの手札には……」


 毎日かぐやちゃんとカードバトルしていたからわかる。

 もうステージ魔法は手札にないことを――。

 そして知っている。

 かぐやちゃんが絶対に諦めないことを――。


 ステージ上のマリアさんはわなわなと震え――。


「に、2枚目のソング魔法マジックで、100に届くわけありませんわ……」


 華麗に歌うかぐやちゃん。その歌に誰しもが酔いしれる。

 ソングゲージも70、80、90と上がっていった。

 あと少しで歌も終わる。

 このままでは100に到達せず終わってしまう――観客席から ため息が漏れる。

 でも、わたしだけは、かぐやちゃんの成功を確信していた。


( 届け届け届けェ! うさぎに届け! うさぎの心を、誰よりも光輝かせてみせる! )


 歌い終わり、拍手が響き渡るなか、ソングゲージが―――


「いったにゃー! 2枚目のソング魔法マジックで、【100】に到達したにゃー!」


 わたしは感動で瞳をうるうると潤ませた。


「はい! かぐやちゃんなら絶対にいくと信じてました! 凄いよかったです……かっこよかったです……ぐすっ」

  

 星姫 リリーはソング魔法マジックの効果によってパワーアップ。

 光線銃を取り出し、3連射――。

 ハート型のエネルギー弾がマリアさんにポワンポワンポワンと当たる。


 満足しきった様子でかぐやちゃんが立ち尽くすなか―――


《 アイドルカードバトル勝者は、竹月 かぐや選手 》


 アナウンスがステージ上に流れた。


 ――わああああああああああっ―――


 大歓声が観客席から響き渡った。

 マリアさんは涙を浮かべ――。


「こ、この、わたくしが、ボロ負けしてしまいましたわ………え〜〜ん」


 泣き崩れるマリアさんに、かぐやちゃんが近づいていき。


「な、なんですの?」


「笑って」


「え?」


 観客席にチラっと視線を送ると、それに気づき、2人は笑顔で手を振った。


「ううっ。今度は負けませんわよ」


 そして言いづらそうにマリアさんは―――


「そ、それと、あなたの友達をバカにして……ごめんなさい」

 

 かぐやちゃんはうなづき、野外ステージの巨大モニターに映るわたしを見た。


「うさぎ! さあ、来て」


「!」


「一緒にきらきら光輝こう。あたしたちの初アイドルカードバトルだよ。みんなに、あたしたちの輝く姿を見せてあげよう!」


「うん、かぐやちゃん!」


 わたしたちの、初めてのアイドル活動が始まった。

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