第39話 魂削(こんそぎ)

翌朝になってから俺は飛び起きた。

時刻は午前6時。

というのも...何だ今のは。

そう思いながら俺は頭を掻きながらゆっくり動く。

それから俺は先程の夢を思い出す。


どういう夢かといえば...山口美鈴が出て来たのだが。

奴がその。

姉に裏切られており。

その姉が山口美鈴を殺していたというもの。

まさかな。


「...」


俺はテレビを点ける。

だがそんなニュースはどこにもあってなかった。

流石に思い違いか。

考えながら俺はテレビを切ってから俺は「...せっかく朝起きたしな」と呟きながら着替えてランニングをする事にした。

それから俺は玄関に鍵をかける。


「...ったく。朝から変な嫌な夢を見た」


そんな事を呟きながら朝の景色を味わいながらランニングをする。

そうしていると目の前から誰かがヨロヨロとゆっくり歩いてきているのに気が付く。

俺は立ち止まってその姿を確認する。

それは...山口美鈴だった。


「久しぶり」

「...何をしに来たんだお前。久々どころじゃないぞ。超久々だ...というかなんだお前。その姿...」


その姿はやつれていた。

何があったかは定かではないが。

俺は「...」となってから山口美鈴を見る。

すると山口は「こうなった以上、アンタには教えてあげたほうが良いかって思って」と言ってから俺を見据える。

なんだ?


「アンタには教えるって何を」

「姉が浮気したんだけど...その相手は飯田っていう男」

「...そういう事か」

「そうだね。アンタを嵌めた様な男だけど」

「この事は予測していたのか」

「大体は。...だけど確証出来るものが無かった。だから何も言えなかったけど」

「なんで今それを教える気になったんだ」

「...年を取ったから。私自身が」


その言葉に「は?」となってから山口を見る。

山口は「多分私の体内はお婆さんレベルの話になってる。...あまりもたないかも知れないしアンタには全て教えようって思って」と言い出す。

俺は「...それは何故分かったんだ」と聞いてみる。


「病院に行っても原因不明としか言われないけどゴリゴリ魂が削れていってる気がするから。足もあまり動かないし」

「...そうなのか」

「それで調べたんだけど。文献とかで分かった事は...貰った力の代償らしくて」

「なんだそれは...」

「以前私を止めたでしょ。貴方が。...あの力は急激なパワーと引き換えに魂を削る力らしくてね」

「...」

「体内はもう既に70歳ぐらいの臓器のレベルだと思う。見た目はこんなんだけど。病院でもあまり分からなかったみたいだけど。ってか分からないよね」

「じゃあアイツも。奴も劣化するのか」

「放って置けばね。...だけどいつ死ぬかそれは分からない」

「...」


俺は無言で山口を見る。

この夢だったのか俺が見たのは。

山口は俺を見てから肩をすくめた。

それから「私は放って置けば死ぬ。...その前にアンタに」とそこまで言った時。

山口は倒れた。


「オイ山口!!!!!」

「...やば。死ぬかも...まあ仕方ないかな」

「...お前...」

「しゃーない。...これも天罰だろうから」

「天罰ってお前な...」


俺は直ぐに救急車を呼ぶ。

山口を仰向けにしてからそのぜえぜえという呼吸をしやすくした。

正直こんなもんが効果あるのかどうか俺にも分からない。

なんというかコイツの身体を蝕んでいるのは完全に未知の話だから。

コイツが言っている通り...全身が70代の叔母さんの様な身体であれば助かる余地はないだろうけど。

そう思いながらも俺は救急車のサイレンを聞いて手を振った。

そして救急隊が下りて来る。

医療器具、ストレッチャーなどを持って来た。

これに対して山口は俺を見る。


「劣化が予想以上に早まっているんだと思う」

「本当に馬鹿だよなお前って。マジにクソだ」

「知らなかったしね。こういうの。クソって呼ばれるのもまあ仕方がない」


そう言いながら駆けつけた救急隊に運ばれる山口。

山口は俺に対して「ありがとう」と感謝の言葉を述べていた様な気がした。

俺はその口の動きを見ながら俺は山口を見送る。

救急隊の人が「ありがとうございます」と言って直ぐに乗り込んで行き...病院に向かって行った。

そうか...代償があるのか。

こういう能力には、だ。


「...」


俺は救急車のサイレンを聞きながら考え込む。

それから盛大に溜息を吐いてから歩きはじめた。

そして俺はとある場所に行き着いた。

それは河川敷の広場だ。

俺は駆け下りて行ってから鉄棒で運動をする。

懐かしい気分だ。

こうして運動をやっていたよな昔。


「...」


なにかもう。

複雑としか言いようが無い。

でもだから...どうすれば良いのかと言われたら。

正直、奴が悪いんだ。

だけどこういう結末になろうとは思わなかった。


「...どうしたもんかね」


そう言いながら俺はランニングで汗を掻いてからタオルで額を拭い河川敷に腰かける。

草むらはゆっくり揺れていた。

そして心地の良い風が吹いていた。

まあでもこれではっきりした。

奴も...この力を使えば自滅する可能性があるという事を。


「...それなら誘発して暴発させて倒せば...」


そんな事が思い浮かぶ。

というかもうこれしか手段が無い気がする。

このままだと御剣も危ないしな。

だとするなら...。

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