二  美麗しきものに毒がある

一  天子の御辭

 昼晝比ひるごろ弥和国みやまとのくにを統べる天子てんしのところへ、摂政せっしょうが参った。


「陛下。禁毒寮きんどくりょうの者より、論叢ろんそうが……」


 志学しがく(十五歳)のあどけない声で、天子がのたまう。


「禁毒寮……《毒鬼どくき》にかかわる論叢か」


「おそらくは。陛下、お目通し頂戴いただけますでしょうか。すでに検閲はしており、全く問題は御坐ございません」


 一瞬声が裡返うらがえったが、天子は気に留めることもなく論叢を手に取られた。

 摂政はてのひらに汗をかく。


(嘘だ、嘘だ。ほんとうは、女御にょうご様の御辭おことばがなければ、古書ふるほんと共に燃やすつもりでいた)


 職務放棄しているも同然なほど、成果が上がらない禁毒寮のことだ。ろくでもない論叢をるような莫迦ばかな真似をしたのだろう。

 まして、著者は名からして、女だ。禁毒寮に女は、いない。いれない。

 齋木さいきの蓉子ようしだなんて、そんな女は禁毒寮にいなかった。


「……《毒鬼どくき》の研究は、ここまで進歩すすんだのか」


「左様で御坐います」


 摂政はこうべを垂れ、口唇くちびるみ締める。天子は論叢のページ枝折しおりをはさんだ。



   ◇



 本日から「平安毒鬼姫の雅なる施し」の第二章が始まります。

 今後ともよろしくお願いします。

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