30 記憶が消えても
カーテン越しに、病室の空気がわずかに動く。
「――朝陽くん、少し話せそうですか?まだ気持ち悪い?」
青いスクラブの医師が静かに近づく。
スマホを置き、ベッドから上半身を起こしながら、朝陽は答える。
「あ、大丈夫です。休んだら、だいぶ良くなりました。」
医師は、朝陽の検査結果を渡しながら言った。
「再発が一番怖かったんだけど、どこも異常はありませんでした。よかったね。」
朝陽は「は、はあ…はい…。よかったです。」とほっと胸をなでおろした。
そして、「…あの、聞きたいことがあるんですけど」というと、医師がうなずいたため、朝陽は続ける。
「全然覚えてないけど、やっぱりデジャヴっていうか…。これ前にもあったような…これ言われた気がする…みたいな。感覚?みたいなの、けっこうあるんです。他にも、これなんか好きだな、これなんか気になるな、とか。いや、気のせいかもしれないですけど…」
医師は言いよどむ朝陽をせかさず、ゆっくり答えた。
「以前も説明したけど、確認のため言うね。……前の手術は無事に終わりました。記憶が戻るための条件も、ちゃんと整ってると思うよ。」
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