第30話「点火、その瞬間」

監視モニタールーム。

ガス濃度:臨界点4.98%──あと少し。


アキはボトルを握り、

中居はライターをカチリと構えていた。


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「……いくぞダベッ……」


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その瞬間──


**バァン!!**


ドアが弾け飛ぶように開いた。


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「やめろおおおおおおおおお!!!!」


**ヨウタだった。**


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アキと中居が振り向く暇もなかった。

ヨウタは全力で突進し──

2人を**思い切り突き飛ばした。**


---


ゴンッ!!

机にぶつかる中居、背中から倒れるアキ。


---


ヨウタは、**床に転がっていた100円ライター**に手をかけた。

スパーク。

空気が焦げる。


---


> 【ガス濃度:5.01%】

> 【爆発条件、成立】


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中居が震える声で叫ぶ。


「やめろ!!お前が吹っ飛ぶぞ……!」


---


だが、ヨウタは叫んだ。


「──俺だって、もう誰かのうんこ食いたくなんかないんだよ!!」

「こんな世界、**終わらせてやるッ!!**」


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**カチン……シュボオオッ!!**


点火。


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直後──

爆風。


---


**ドゴォォォォォン!!!!!!**


---


監視室が崩れ、壁が吹き飛び、

天井の鉄骨がひしゃげて落下。


アキと中居は、爆風で**廊下側へ吹き飛ばされて**いた。


---


崩れる天井の下で、

中居が、床に膝をつきながら**呻いた。**


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「……なんで……」

「なんでオレじゃねえんだダベッ……」

「……オレが、お前らを生かすって……決めてたのに……」


---


アキは、呆然と火の海を見つめていた。

炎と煙。

何も言えなかった。


---


そして──

その奥から、低く、湿った嗚咽が聞こえた。


---


**「……助けてくれ……浜田……」**


---


崩れた瓦礫の中で、

全身すすまみれになった**松本**が、

歯をむき出しにして泣いていた。

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