第28話「選ばれた理由」
九日目、深夜。
点呼のあと。
校庭の片隅。
生き残った4人が、はじめて自然と集まっていた。
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アキがポツリとつぶやいた。
「……もう、私たち、4人しかいないんだね」
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誰も言葉を返さなかった。
ヨウタはうつむき、リュウジは煙草もどきの草を噛んでいた。
ミナトだけが、飄々と笑って言った。
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「さーて、この中に“裏切り者”はいるのかね」
「それとも──全員、最初から“選ばれて”ただけか」
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アキが、ミナトを見た。
「……選ばれた?」
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ミナトは草をかき分け、地面に落ちていた小さな紙片を拾った。
破れた「当選通知」の一部。
そこにはこう書かれていた。
> 『あなたは、“特別な青春を取り戻す旅”に当選しました』
> ※参加資格:本人確認済、未納履歴照合済
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「気づかない? “未納履歴”って……あれ、NHKの書式だったんだよ」
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沈黙が落ちる。
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ヨウタが声を絞り出した。
「……じゃあ、僕たちは……全員……」
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リュウジが低く言った。
「……**NHKの受信料、払ってなかったんだ。**
俺んとこ、昔からテレビ置いてなかったしな」
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アキも呟く。
「……そういえば、実家に集金きてたけど……ずっと居留守使ってた」
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ミナトは続けた。
「この場所に連れてこられた理由、全部つながるだろ?」
「俺たちは、“全国民が見てる受信料エンタメ”の生け贄だったんだよ」
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アキの顔から、少しずつ表情が消えていく。
「そんなの……じゃあ……」
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ミナトは口角を上げて、言い切った。
「今これ、**NHKで放送されてるんだよ。**
多分、“教育枠”でな。
“うんこと青春のバトルロワイヤル”──とか、タイトルついてるかもね」
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ヨウタが震える。
「ふざけんなよ……
こんなのおかしいよ……
これ、テレビで流されてるって……」
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リュウジが吐き捨てるように言った。
「でも、俺はNHKなんて見てねぇ。
これがテレビに映ってようが、どうでもいい。
“今ここで生きる”ってだけだろ」
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アキは静かに立ち上がった。
「……わかった。
じゃあ私は、“それごと”終わらせる」
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ミナトが振り向いた。
「“それごと”? 何を──」
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アキの目は、完全に静かだった。
「このシステムごと。
“受信料と放送の暴力”ってやつを──全部、吹き飛ばす」
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