第5話
「聞いたことがある?」
『ええ、信じられないような
話だけども妙な話があるの』
彼女は少し声色を変えてこう言った。
『本当かどうかじゃなく、あった話らしいの』
彼女の語彙力が壊滅的なほどのものになった。
「あった話」
『うん、話していい?』
私は呼吸を整えて彼女へと聞く耳を持つ。
「ええ、どうぞ」
『単刀直入にいうと、異変の異の方の異体というものが出るとされていて。年に数回その部屋に現れるの』
「異体?」
『そう。同じ体勢で、同じ人物が』
「そうだとしたら昔に
何か事件でもあったのですか?」
私は彼女にそう問いかけた。
しかしながら彼女の返答はこんなものだ。
『それが確認できるところで、その人物に当たる事件や事故が全くと言って存在しないの』
全くと言って、その言葉に
またも戸惑いを覚える。
「全くと言って」
『そうなのよ』
その会話が途絶えた後、私はそちらを見た。
あいも変わらず同じ姿をしている
それに同情のようなものが芽生え始める。
私はこんなことを尋ねてみた。
「何か悪い影響とかは、
そういうのはないんでしょうか」
彼女にそう問いかけた。
すると彼女の返答は
如何にも恐ろしいものであった。
『背中を見せたら、憑かれる、
そんな噂はある』
私はその背中に冷たい震えを覚えて
後ろを振り返った。
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