第3話 13区一門 錠 繋刃

「そんなの眺めて楽しい?」

「はい、飽きないです」

「そう…物好きねホント」

 解体師が執務室でソファーで横になって寝ている。清掃員が隣にしゃがみ込んでじっと見つめる。幸福の一時。

 何度振り返っても変わらぬ光景に、収集家がため息混じりに尋ねる。物音はしないが気配を感じる。気になって仕方ないのだ。

「君達、仕事がないのは分かるんだけど執務室なんだと思ってるの」

「寝るとこです」

「ゲームするとこでしょ」

 清掃員と収集家から飛んでくる回答。仕事をする場ではないらしい。所長も予測していた。深呼吸してから自分の仕事に戻る。もはや注意すらする気もないらしい。

 ドアが開き怠惰屋が入ってくる。部屋の中を見渡し、収集家のいるソファーの隣に座る。

「私がゲームしてる時に隣に座るな」

 大型ディスプレイでそれなりの音量でゲームする収集家。右の蒼い瞳で怠惰屋を睨みつける。動じる様子のない怠惰屋は、黙って煙草を取り出し口にくわえた。

 瞬間、煙草は壁に叩きつけられてねじ切れる。壁に残る半分以上その身体を埋めたボールペンが悲鳴を上げていた。

ビィィィィン。

「ちょうど死角なのに、なんで付ける前から気付けるんだよ」

「あっぶな!所長、私の頭越しに狙わんでくれる?!」

 ライターを悔しげに握りしめる怠惰屋。殺気を感じて、上半身を前に倒して咄嗟に回避した収集家。

「禁煙だ。何度言えば分かる」

「普段はちゃんと屋上で吸ってんでしょ」

 壁に突き刺さったままのボールペンはそのまま。手元のボールペンを使って仕事に取り掛かる。

「所長、それいつもデータに起こしてるの私だって事忘れてない?」

「その分、多めに契約金を出しているだろ。それに、私程度の攻撃にやられるなら、昔、解体師に肉体ごとバラバラにされていたろう」

「あんな化け物、誰が勝てるのよ」

「やりたくもない」

 物申す収集家に対して、所長は仕事をしながら多めの契約金、過去の出来事を掘り起こして、暗に黙れと言う。収集家も怠惰屋も解体師に勝てるわけがないと呆れる。

「好き放題言うよねぇ」

 のそりと身体を起こしてソファーに座り直す解体師。その横に座る清掃員。ずっと話を聞いていたのか、解体師はいつもの様子でにこやかに返す。

「そうです。解体師さんは化け物なんかじゃありません。英雄です!」

「「それはない」」

「あはは〜」

 英雄と豪語する清掃員を、二人して否定する。笑う解体師。

「まぁ、あんたたち一緒に住んでたらしいから、そう思いたいんだろうけど。私からすればそれは化け物なの。じゃ、私はそろそろ時間だし、行ってきます」

 ゲームのコントローラーをテーブルに置いて背伸びをする。収集家は気怠げな足取りで部屋を出ていく。清掃員は物申すため、収集家に付いて部屋を出ていく。扉の向むこうから怒声が聞こえる。携帯端末に視線を落としていた怠惰屋。裏ニュースの見出しを流し見して、一つのタイトルに目をとめ、ボソリと呟く。

「13区一門解錠…なぁ、一門の建物の清掃はこの間やったのは知ってるけど、解錠なんていつ誰がやった?スートアートだったりすんのか?」

 所長に視線を送ると、黙ってボールペンが向いている先がある。その視線の先。

「13区一門の錠、繋刃(つなぎば)なら、同じ日に俺が開けたよ」

「は?つくづく規格外な奴だな」

 事も無げに答えた白衣の男を見て怠惰屋は目を細めた。



『解体師さん。この依頼は危険すぎるので、断っても所長も許すと思いますが…』

「スートアートからの依頼なら受けないと。掃除屋の今後が色々ヤバいのは俺にも分かるよ」

 清掃員が門の建物の清掃を行っていた同日。

 通信から聞こえる事務の言葉を聞く。解体師はのんびりとした足取りで、一門が拠点として構えている建物を目指していた。

 彼の歩んだ道程の後方に広がっているのは、荒廃した軌跡。亀裂。弾丸。クレーター。瓦礫。荒れ果てた惨状。

 転がる数多の敵。彼の手には無造作に奪ったと思わしき、血みどろな銃器や刃物が握られている。硝煙と錆びた鉄。それらが混ざった独特な嫌な臭い。

 ここは13区武器の塔が支配する区。銃器は勿論、近接武器に至るまで、異常な力を人に与える。

「ところで、依頼したスートアートって誰なの?」

『…レベル5サーバーの上位52人に与えられる称号。スートはハート。その中でも超常的な強さを誇るアートを与えられた者スートアート。彼女はクイーンハート、茨の乙女です。』

 事務は丁寧に答える。トランプをモチーフにし、レベル5の常識を超えた札、スート。その中でも一線を画す異常者がトランプの絵柄、アートとなる。それが、スートアートと呼ばれる者。塔に単騎でも挑める力を持つ異常者。アートはレベルの枠組みから外れた存在である。

「見つかった。ってことでいいのかな」

『恐らく、8年ほど前から解体師さんと思われる人物を探していたので』

「知ってはいたけど、見つかるとは思わなかったな。まぁ、昔は今ほどスマートにやってなかったしね」

『懐かしいですね。第3に来て間もない解体師さん』

「今よりかっこよかっただろ?」

『どうですかね。ともあれ、モテる男は大変ですね』

「ははは、じゃぁ、ちょっと解錠しに行くかな」

 既に返り血で白衣は赤く染まりつつあり、一門の本拠地の入口に立つ。両手に持っていた武器を転がす。

 入口で待ち構えていた侍が一瞬で間を詰め、解体師の首を跳ねる。居合のように振り抜いた刀。確かに振り抜かれている。だが、振り抜かれた腕の先に刃はない。いや、肘から先がない。

「とても良く鍛錬され、洗礼された剣だけど、俺にとっては、まだまだーーー」

 手に持っていた肘から先の腕を捨てる。刀を握り、一瞬で構え、一歩踏み込む。彼は建物の中に入り、刀を捨てる。

「ーーー遅い」

 そのまま、階段を目指し上層を目指す。先程まで彼の居た場所。真っ赤な水たまり、頭から胴体がバッサリと開いた赤いオブジェが飾られていた。

 建物の中に入ると妨害は無い。最上階に辿り着き、社長机と呼べそうな大きく豪奢な机。その先に窓の外を眺める女性が座していた。

「こんにちは、あなたが13区一門の錠、繋刃でしょうか」

「何処かで会ったことあったかな?」

「申し遅れました。東京23区第3掃除屋処理班、解体師と呼ばれる者です。依頼により解錠を果たしに来ました」

「錠を目の前にしていい度胸だ。建物を壊したくない。外でやろう」

「かしこまりました」

 ゆっくりと立ち上がった女性はかけていた上着を羽織る。立てかけてあった刀を手に取り解体師の隣をすり抜け、ゆったりと降りていく。解体師は彼女の背中を眺めながら、黙ってついていき外に出る。

「私の掛金もこんな有り様とは…かなり評価していたんだが、次の掛金はもっと厳しく躾けないといけないか」

「解錠される気はないと言いたげですね」

「当然だ。13区の錠の中でも私は最も強い、それでも勝てると?」

「依頼は解錠なので」

「調子に乗るなよ」

 建物からしばらく離れたところで二人は向かい合う。繋刃は刀を構え、解体師は手ぶらで何も構えない。ただ、彼女を見つめている。

「どこまでもバカにしてくれる」

「皆に言われます」

「私はね。こんなふざけた世界を全て破壊するためにここまで登ってきた。塔の首元に届く刃を研いできた。私は世界を繋ぐ。あの美しい世界に、この腐った東京を繋ぐの」

「無制限世界に魅了されたんですね。哀れな方だ」

 繋刃は一つ深呼吸してから、解体師をしかと視界に入れると、構えを解いて凛と立つ。

「私の掛金の速さについてこれるだけで、調子に乗るな」

「驚きましたね」

 解体師の左肩が根元から彼の足元に転がっている。赤より赤い血が噴き出しながら、カラカラと笑う。空気さえ切られたことに気付いていない。

 解体師の様子を見て眉間にシワを寄せる繋刃は、苛立ちを覚えながら再び構える。

 深呼吸。

 解体師を見つめるーーー。

「一度見せた芸が通用するほど、東京の空は低くないですよ。あなたは首を狙うべきでした」

「?!」

 解体師は彼女の刀の柄を彼女の手の上から握り込み、先ほど見せた神速の居合を振るう前から止めていた。

 咄嗟に後ろに跳ぶと解体師は抵抗すること無く手を離し、彼女の次の構えを許す。

 焦る。しかし、すぐに頭は冷える。

 鞘から刀を抜き、刀を水平に構える。世界の時間が少しずつ遅くなっていく。光さえ歪むほど、十分に遅くなった世界。光に最も近い彼女に追いつける者など居よう筈もなく。一息で踏み込み、解体師の胴体を両断する。

「舐めるなよ。私は札に並ぶ実力がある。無名のお前如きに遅れを…え、あ…?」

 解体師の胴は両断されることはなかった。彼女の持っていた刀は、手首ごと目の前の赤に奪われていた。赤が平然と立っているのを見て、自分のあるはずの右手に視線を送ると何もなかった。

(ダメ、ダメダメダメダメダメダメ!ダメだ!まだ、まだ死ねない。私は塔に登り、空に触れて、世界を…あの美しい世界に繋げる!お父さんと約束した!人間が人間らしく生きるため、私の努力ーーー)

 刃を失ってなお、彼女は一歩前に出て赤を深く睨む。

「私が!私が繋がなくて、誰が繋ぐの?!あの空を忘れたこの東京に!誰が!!!」

「それ、俺に何か関係ありますか?」

 その赤の目はどこまでも深淵だった。底がない。映り込んでいるはずの自分の目は彼の目には映らない。全てを飲み込みバラバラにしてしまう。解体師。彼女の頭に浮かぶ言葉。それは彼の名ではなく存在。そして、その存在に思い当たる節があった。

「まさか…ロストジョー…」

 言い切るよりも先に彼女は自分の刃で、均等に輪切りにされ、肉の塊となって崩れた。

「一門の解錠、完了ですね。外にどんな幻想を見たかは知りませんが、果たして世界はそんなに美しいものなのでしょうかね…それにしても、錠ともなると気付くものなんですね」

 彼女の刀をその場に突き立て、自分の左腕を拾い上げて左肩に押し当てながら去っていく。

 パキッ

 彼女の刀は中ほどから亀裂が入り、折れて、落ちる。

「13区一門、解錠。加速する刃を使いこなす繋刃を一切の苦戦無く…これは予想外。外に目を向けなければ死ぬこともなかったのにね可哀想な子。」

 一門の本拠地の屋上から見下ろす赤を纏う女。にやりと笑いながら満足そうに笑った。赤い瞳に長く赤い髪、その顔立ちはまるでーーー。




「東京の空は低い。外の空はどこまでも突き抜けている」

 これは彼女の記憶。父親が見たという本物を見に、彼女は門を築き、一門とされるまでに至った。

「父上の武器、加速する刃。これからもずっと私のそばで見守っていてください」

 彼女は父親との死別後に強化手術を経て、13区のテイカーとなった。今の彼女にとって世界はとにかく遅い。門を築くためには力と統率力が求められた。まずは、底辺サーバーをその刀で負かし、従え、堅実に組織力を高めた。そのほとんどが彼女の遊びにすらついてはこれない。

 ある時、傘下に加えた当時の掛金、スラムを漁ってかき集めたテイカーの中でも実力のあった男。その始末にやってきたレベル4のサーバーが派遣され、壊滅的な打撃を受ける。

「表を荒らす指名手配犯の首は取ったし帰るか」

「あなたは?」

「なんだい?お姉さん、売り子かなんか?成長しつつある門って聞いてたけど、この程度ならいつでも潰せるな。売り子置いてる門とか、下半身に脳ついてんじゃねぇの?まぁ良いや、死んどけ」

「売り子に見えるのは、ほめ言葉ととっておくわね」

「え?」

 肉欲を吐き出すための女に向かって放った銃弾。掛金を失った彼女は微笑む。彼女が売り子ではないと気付いた時には、もう終わっていた。その一閃は見ることさえ敵わない。4つに分裂した弾丸は彼女の後ろで壁に突き刺さっていた。

「レベル4のサーバー程度に苦戦とは。組織の底上げが必要ね。この程度の有象無象に錠へ辿り着かれる門か。はっ、一門になれるわけもない」

 門としての組織力を揃えた彼女が次に目指したのは、門の力を底上げすること。彼女一人が強くても、彼女が目指す空に辿り着くことさえ許されなかった。

 彼女は実力のある有名なサーバーやテイカーに声をかけ、彼女の掛金を探した。

 掛金とは門の力の物差し。掛金が弱い門は構成員の全てが弱い。そして見つけた掛金は、彼女と同じ13区のテイカー。あらゆる区を旅して身に付けた実力は、レベル5に届きうる実力者の侍。

 彼女の遊びについて来れる数少ない人間。彼女の見える斬撃を受けることのできる者。

「あなたの刀。とても美しいわね。誰なのかしら」

「妻。美しい刀、私の夢に寄り添う武器だ」

 彼を迎えてからは一足飛びの様に駆け上がる。彼女たちの門が一門であることを誰もが認めるほどになった。彼女の刃は鋭くしかして見えず、門としての組織力も大きくなっていった。そして、彼女は最初の目的に辿り着く。

 巨大シェルターの入口は何層もの扉に区切られ、外の汚染された空気を取り込まないように細心の注意が施されていた。何枚も抜けた扉の先で彼女は父親の言う本物を見る。

 彼女が見た空はどこまでも透き通った蒼。どこまでも広がる美しい蒼に斑に漂う白のコントラスト。中では味わうことのない澄み切った風。彼女はその美しさに涙し、赤く染まり藍色に閉ざされ宝石が輝くまでその場でただただ立ち尽くしていた。中で見る空と変わらないはずの、その光景に涙がとめどなく流れた。翌日、無制限世界の汚染された空気に一日中さらされていたため、体調不良で倒れることなったが、それでも彼女は本物の空に魅了された。

「世界を繋げなきゃ。あの世界こそ、人のいるべき場所なのよ。父上の言う通りだったわね」

 事務所に戻る途中、解体師の左目から一筋の涙が流れていた。

「彼女の記憶ですか。…確かに、あなたが見た空は綺麗でした。それほどに美しく映った世界…か」

 まだうまく動かない左手の人差し指で涙に触れるとため息をついた。




 掃除屋の雑居ビル。このビルは掃除屋が所有しており、3階以降は掃除屋の従業員が使用する部屋だけで構成されている。1階には食料品や雑貨を取り扱う小型マーケット、コンビニエンスストア。2階は掃除屋の受付が構えてある。処理班が事務所として使用している部屋は8階にあり、6階から下が主な清掃班の事務所となってる。

「13区大清掃の依頼主はクイーンハート、茨の乙女。識別番号は…記載無しか」

 掃除屋ビルの7階。過去の資料や情報が集中している階層。大学ノートサイズの機械端末に、四角い箱の記憶媒体を接続している者が一人。この前の大規模清掃についての情報を閲覧していた。

「クイーンハートなら、攻略できそうなのに、どうして大清掃の依頼なんて…それに、この1週間で一門の所有する建物。全て処理と清掃が終わってる。何が目的だ?」

 落ち着きがないその影は、暗闇の中で何かを探っている。

「誰かいるんすか?」

「?!」

 扉が開くと金髪の青年は部屋に入ってくる。罠師だ。灯りがつけられておらず、扉横の操作パネルで灯りをつけ、部屋が明るく照らし出される。

「あれ?誰も居ない。さっき、誰かの声が確かに聞こえたのに、誰も居ないんすかー?」

 罠師は声をかけながら、不審な点はないか物陰から、隠れられそうなところまで軽く見て回る。やはり誰も居ない。

「ん?Qubeがなんでこんなところに…それに、光ってる。さっきまで誰かが見てたってことだよな」

 棚に整列させて整頓されているはずの箱。14区が一般的に販売している記憶媒体Qubeが奥の机に取り残されていた。そして、その箱は青い筋の光が走っており、幾何学模様が映し出されている。

「えっと?あー、一門の下っ端処理の時の依頼の全容かぁ。スートアートが関わってたんだね。一門相手にするなんて珍しいこともあるもんだなぁ。」

 携帯端末でQubeを軽く2回小突く。小突く度光が走り、携帯端末にQubeのデータが表示される。それらのデータを眺めながら、興味深い内容についつい目を通してしまう。

「掛金の推定レベル4て…じゃぁ、下っ端も3が基準値じゃん。新人にやらせる依頼かよ」

 既に終わった仕事に対して悪態をつきつつ、概要欄が終わり依頼の収支欄に移る。

「一門の解錠するほどの仕事ですし、金額は納得ですけど、この金額を払えるってアートの収入エグいな」

 サーバー時代の稼ぎの約100倍近くの金額。それに比例するだけのスートアートの規格外な力を想像して背筋が冷える。

「スートにだって会いたくない」

 データの閲覧に満足して、Qubeを持ち上げてQubeが並ぶ棚の隙間に置く。彼はそのまま部屋を出ていき、元々の用事を済ませに行く。

「んー、機密の集まる部屋だし、何かあっても困るし、所長さんに声かけてトラップ設置の打診してみるかなぁ。誰かがあれ見てたのは確実だし…」

 暗くなり誰も居なくなった部屋。片付けられたQubeはまだ光り続けていた。



解体士、普段はそうでもないが、仕事中の彼には慈悲の一切がなく、感情が見えない。


所長、てっぺんハゲの中年男性。人の話を全然聞いてくれないが寛容。


清掃員

赤毛の長髪で赤目の女性。解体士の血は落ちにくいので嫌い。


事務、ロングスカートの女性。真面目で仕事熱心だが、抜けてる所も多い。


収集家、右が蒼、左がエメラルドグリーンの瞳、白髮ボブ娘。ゲーム好きで口が悪い。ハッピーウィズバレットと呼ばれたレベル3元サーバー。


怠惰屋、タバコを吸う茶髪の青年。不真面目なことを言うが、意外と真面目。


罠師、ひ弱そうな金髪の青年。16区の機械技術を使った罠を使う戦闘スタイル。


赤を纏う女、赤い瞳に赤い髪、その顔立ちはまるでーー。解体師を影から見守る存在。


東京

かつて日本と呼ばれた国は、ある時から東京23区に区切られ統治されることとなった。

1区の技術により汚染された外界を遮断する巨大ショルターに日本は閉ざされ、完全な鎖国状態となっている。

外界とのアクセスも可能だが、かなり厳重なセキュリティと浄化、洗浄を経なければ出ることも入ることもできない。

区画毎に巨大な企業「塔」が治める人口過密国。

1区は巨大ショルター技術により、実質的な東京の実権を握っている。

2区は義体、3区は肉体改造、4区は悪魔契約、13区は武器、14区は記録、16区の機械、20区は再現

それぞれの唯一無二の技術を持った「塔」が各区画を支配し、区ごとに独自の生活基盤が設けられている。

塔の管理下では人は不幸になることはなく、衣食住と職、娯楽が約束されている。

東京の管理から外れるとその全てが奪われることとなる。

36進数8桁の番号で人間を管理している。


テイカー

塔の技術で強化された人間のことを指す。基本的に同区の技術で強化されるのが一般的だが、別の区の技術を取り扱うところもある。


サーバー

面倒事の処理を担当する職業。5の倍数区で試験が行われ、合格することで就ける。

塔が管理しているため、塔の許可の元に活動する。東京の管理から外れた人間の排斥や始末など、東京の管理システムの一部。

実力がある者はレベルが上がり、あらゆる待遇が良くなるが、レベル1は普通の人間以下の待遇のため、管理から外れてまでサーバーになると大抵悲惨な人生が待っている。


レベル

あらゆる強度を指す言葉1〜5までで示され、数字が大きいほど高評価。


スート

レベル5のサーバー上位52位に与えられる称号。

ハート、ダイヤ、クラブ、スペードの4つがあり、1〜10と組み合わせて呼ばれる。

11〜13のナンバーを持つスートの中でも特に異常な存在をアートと呼ぶ。

11をジャック、12をクイーン、13をキング。

トランプがモチーフになっていることから、スートの死は「札が流れる」と表現される。

逆に欠けたスートが埋まることを「札が場に並ぶ」と表現される。


区内で塔の管理が行き届かない裏を牛耳る組織の総称。

東京の正規管理から外れると、門の管理下で生きていく必要性がある。

力ある組織が管理する地域を確保し、門を主張することで門として認知されるようになる。

門毎にルールは様々だが、東京の管理から外れると普通は門の管理下以外で生きていく術はない。

特に区内でトップの門を一門と呼ぶ。


門を統率する者。つまりはリーダーを指す言葉。

門と呼ばれるため、門を守る者を錠としたのが始まりとされる。

そのため、錠の死は解錠と呼ばれ、門の解体を門が開くと言う言い回しになる。

錠は門毎に数は異なり、一門の錠ともなるとスートに匹敵する実力が標準だと言われている。


掛金

門の錠の誇る一番の部下。錠一人に対して一人が一般的だが、その限りではない場合もある。

掛金の実力はその下の門の構成員にほとんど比例しており、強い掛金を有する門は構成員の段階で非常に強力。


Qube

14区が提供する記憶媒体。黒色の10-10-10の正立方体の箱。触れると青い光を走らせて幾何学模様が浮かび上がる。幾何学模様のデザインや箱の色、光の色は様々なバリエーションが用意されている。

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