逆十字の宴~堕ちた魔女は嬌り妊る~
出会いは、入学してすぐの罰ゲーム。
友人を作ろうと奔走していた僕は賭けにらめっこに負けて、今も活躍している邪教系メタルバンドの歌を屋上で熱唱しないと肝臓を失う羽目になってしまったのだ。しかもフルコーラス。困りながらも意を決して屋上に忍び込んだときの先客が彼女だった。
『……稀代のプリマドンナ?』
観客のない屋上で風を受けながらひらひらと舞う彼女を見た僕は、思わずそう呟いていて。
『違うわ、
『受肉したセイレーン?』
彼女の声を聞いた僕の胸に浮かんだのは、そんな感想で。
『私は
『……おもしれー女の子』
高らかな宣言を聞いた僕は、風の産声を聞いた気がした。
☪︎ ☪︎ ☪︎ ☪︎ ☪︎
「ねぇ
涼やかな声と肩を揺すられる感覚、そして鼻腔をくすぐる爽やかで甘さも含む香り。それだけで、もう僕の目は覚めていた。ただ、もう少しこの声を聞いていたくて、僕は寝たふりを続けることにした。あからさまな狸寝入りを感じ取ったのだろう、彼女は「もう」と呆れたような吐息をひとつ落として。
「そんなんだと、今度の
「それは困る!」
……あっ。
思わず顔を上げた僕を待っていたのは、『うわ』という声がそのまま書いてありそうな顔をした真理愛さんの姿があった。小林さんは「呆れたわ」と小さく息をつく。
「
小林さんは、簡単にいうとすごい美人だ。もちろんそんな言葉じゃ足りないけど、
けど、僕は違う。
恐らく
「……
「おほ……ぉ……!」
小林さんのごにょごにょ『……えっち』頂きました!
星5つ……ッ!
圧倒的星5つ……ッ!
小林さんからの『……えっち』、超気持ちいい!
何も言えねぇ、こりゃ手ぶらで帰らせるわけにはいかない!
「~~~~、いいから来なさい! 早くしないと移動教室に遅れるわ。刻限を告げる鐘は、もう鳴る刻を待ちわびていてよ」
「はいはい」
あーあー、照れちゃって可愛いんだ。
頬を弛ませながら立ち上がったのと、チャイムが鳴ったのはほぼ同時で。
「嗚呼、もう! 言わんこっちゃない! 来なさい
言うが否や小林さんは僕の手を引いて、廊下を小走りに駆け始めた。
ポニーテールに纏められた髪が彼女の躍動に合わせてゆらゆら揺れて、それが何だか綺麗で。
「……
思わず、彼女から教わった言葉のひとつを呟いていた。
簡単に言えば、僕こと坂本麗破と小林真理愛さんは彼氏彼女の関係だ。自分でも信じがたいけど、
地平を越える魔女を自認するだけあって何につけても優秀な小林さんと、平々凡々を絵に描いたような僕ではあまりに不釣り合いだけど、小林さん曰く『魔女には忠実な従者が必要』ということで、見事僕がその座に収まっているわけである。
あの出会いから始まって、いろんなことがあった気がするけど。
僕らの距離がここまで縮まったのはきっと、
「ちょっと急いで! 遅れたら私たちの心臓コキュートス堕ちだからね!?」
「はいはい」
じゃあ、ちょっと
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