第3話 森での再会、そして騒がしき弟子

森の小道を歩きながら、俺とヴェルトは久しぶりの再会を噛みしめていた。


「お前、また厄介ごとに巻き込まれたのか?」


 俺が問いかけると、ヴェルトは肩をすくめる。


「まあな。とある遺跡で、ちょっとな……」


「遺跡?」


「ああ。妙な連中が俺を狙ってきた。どうやら、俺の剣に興味があるらしい」


 ヴェルトの剣——魔剣ヴァルムンクは、かつて彼が大陸の果てで手に入れた伝説の武器だ。その力を狙う者は少なくない。


「ったく、お前はどこへ行っても問題ばかり起こすな」


「俺が好きで巻き込まれてるわけじゃない。……それにしても、お前は相変わらず平和な暮らしをしているんだな」


「まあな。俺は"医者"だからな」


 そう言った瞬間——


「師匠ーーーッ!!」


 木々の間から、騒々しい声が響き渡った。


「……ん?」


 振り返ると、勢いよく飛び出してきたのは俺の弟子、ルークだった。


「やっと見つけました!何してるんですか、こんな森の奥で!」


 ルークは息を切らしながら、俺を指さす。


「何してるも何も、薬草を摘みに来てたんだが……」


「えっ、またですか!? 俺も連れて行ってくださいよ!」


「お前は薬草の見分けもできないだろ」


「うぐっ……」


 ルークは悔しそうに唇を噛んだが、すぐにヴェルトに目を向けた。


「師匠、この人は……?」


「ああ、昔の知り合いだ。ヴェルト・アークレイド。流浪の魔剣士だ」


「魔剣士……!?」


 ルークの目が輝いた。


「まさか、伝説の"闇に生きし剣士"とかじゃ……」


「いや、普通の流れ者だ」


「ええっ!? いやいや、そんなわけないでしょう!その漆黒の外套!鋭い眼光!背負った長剣!これは……まさしく"宿命の剣士"の風格……!」


「……お前の弟子、なんかすごいな」


 ヴェルトが呆れたように俺に耳打ちする。


「いつものことだ。気にするな」


 だがルークはさらにヴェルトに詰め寄る。


「魔剣士ヴェルト!あなたの剣技、ぜひ俺に教えてください!」


「いや、なんでそうなる」


「俺、"影走り"という技を習得してるんです!それに"無音の刃"の構えも極めました!」


「……なんだそれは」


「俺も詳しくは知らんが、本人曰く"カッコいいから作った"らしい」


 ヴェルトは深いため息をついた。


「お前の弟子、なかなか手がかかるな」


「今さら気づいたか」


 俺は頭を抱えながら、ヴェルトとルークを連れて診療所へと向かった。


 ——こうして、静かだったはずの一日は、さらに騒がしくなっていくのだった。

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