第3話

翔は研究資料を開きながら、顔を上げることなく仲間に言った。


「“花の病”はただの病気じゃない。人工的に作られたものだ。遺伝子に作用して、身体の細胞を花に変質させていく……」


「人工的って、誰がそんなことを……」月宮ルナが眉をひそめた。


「わからない」


翔の目は鋭く、怒りと使命感が混じっていた。


「つまり……葵は狙われた可能性があるってこと?」花野ヒナが肩のピナに目をやりながら問いかける。


「いや、むしろ……巻き込まれたんだ。無作為に投与された中の“成功例”。症状は進んでるけど、ある種の“安定”を見せてる……つまり、治療の鍵になる可能性がある。」


「……じゃあ、その“鍵”を見つければ、葵さんは……」前田健一郎が真剣な声で言う。


翔は、決意を込めて頷いた。


「助けられるかもしれない。」



その夜、葵は翔の病院の屋上に呼び出された。冷たい風が吹く中、翔は彼女に白いノートを手渡した。


「これ……?」


「研究ノート。今まで集めた“花の病”の資料と、君の検査記録……全部書いた。」


「……そんなの、もらってどうするの?」


「君に知ってほしいんだ。俺が本気で、君を救おうとしてるってこと。」


葵はノートを開いた。そこにはびっしりと書き込まれた文字、図、数式、メモの数々。読み進めるうちに、葵の手が震え始めた。


「翔くん……こんなに、私のために……」


「俺は医者だ。でも、それ以上に……君のことを……」


翔は、言葉を止めた。葵の目と視線がぶつかる。その瞳に浮かぶ涙は、もう誤魔化しきれないものだった。


「ありがとう……」


葵は、ゆっくりと翔の胸に顔をうずめた。


「こんなに誰かに本気で思われたの、初めてだよ。」



そして数日後、翔と仲間たちは“花の病”の製造元とされる施設の手がかりをつかむ。そこには、誰れかが作り出した「原花剤」と呼ばれるサンプルが眠っているという。


「ここに行けば……治療法の糸口が見つかるかもしれない!」


翔たちはついに、命を賭けた戦いへと足を踏み出す。


一方、葵は最後のステージを控えていた。


「もう少しだけ……もう少しだけ、奇跡を信じていいかな?」


彼女の心には、翔がくれた“希望”が灯ってい

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