第32話

「よっしゃ!今日から俺は……!」


グラウンドに響く俺の声は、部活紹介の喧騒を吹き飛ばすレベルの熱量だった。そう、俺はついに決めたぜ!この俺の拳と肉体を存分に発揮できる、最強最高の場所――格闘技部に入部だッ!


「か、格闘技部……ですぅ? なんかぁ、汗くさそうですぅ~……」


ミルフィが制服のスカートを両手で押さえながら、ものすっごく不安そうな顔で後ろからついてきてた。


「ん?いいかミルフィ、汗は魂の結晶だぞ!汗をかかずに闘いはできねぇ、闘わずに守れるものなんて何もないッ!」


「か、カイちゃまぁ、目ぇが……キラキラしててちょっと怖いですぅ……」


フフ、そりゃそうだ。この俺の闘志はもはやサイヤ◯人を超えてるかもしれないからな!


「……私、別に反対しないけど」


ユキはいつもの無表情で、だが少しだけ眉を上げて言った。


「格闘技部なら放課後の活動時間ともかぶらないし、体力づくりには向いてる……かもしれない」


「おぉっ、さすがユキ!理解が早い!」


俺がサムズアップで応えると、ユキは一瞬だけ目線をそらした。なんだ照れてるのか?いや、まさかこの俺に惚れた――


「惚れてない」


「お、おう」


すげえな、心を読まれたみたいな絶妙なタイミングだったぞ。


でもまあ、俺の行き先は決まってる。格闘技部の部室に乗り込んだ俺は、挨拶代わりに拳で扉をノック――というかぶち破る勢いでドアを開けた!


「おいっす!新入部員、神楽カイです!今日からここで殴り合いさせていただきます!」


中にいた男たちは全員一瞬フリーズ。


見た目は華奢な女の子(俺)、叫んでる内容は筋肉全開の男塾。そりゃ戸惑うよな。でも問題ない。俺は結果で示す!


「おい新人、女の子がここに来て何する気だ?」


出てきたのは、腕が太ももレベルに太い男。名前は確か、角田先輩。県大会ベスト4の猛者らしい。


「殴る!」


「は?」


「殴るッ!!」


「……面白ぇ、ついてこい!」


角田先輩が笑って、リングの方へ手招きする。その背中、めっちゃ頼もしいじゃん。やっぱここ、正解だ!


「おいミルフィ、ユキ!ちょっと殴られてくる!」


「えぇぇぇ!? だ、だめですぅ~!可愛い顔が台無しですぅ~!」


「無事で帰ってきて。あと顧問には届け出しておいて」


ミルフィとユキのリアクションも様式美になってきたな。うん、俺の青春が始まったって感じだ!


リングに立つ俺。相手は角田先輩。体格差?問題ねえ。スキルがあるからな!


【スキル発動】

《超反応(ハイパーリフレックス)》

発動条件:肉体刺激(殴られる、または気配察知)

効果:一瞬の加速と反射神経向上、避ける、捌く、殴るのすべてが一瞬で完結する


「来い先輩!この小娘の拳が、男の夢をブチ壊してやるッ!」


「面白ぇ!」


バンッ!!


先輩の右フックが襲いかかる――が、その拳が俺の顔に届く前に、俺の肘が先輩の腕を跳ね上げ、逆の拳が先輩の腹にめり込んだ!


「ぐっ……な、なんだコレ……!」


「これが俺の異世界仕込みの拳だッ!!」


観客(=部員たち)は全員あっけに取られてる。そりゃそうだ。だって格闘技部に突如現れた美少女(俺)が、エース先輩を一撃で沈めたんだからな!


「こ、これは……革命ですぅ……!」


ミルフィが何故か感動して涙を浮かべてる。ユキはというと……


「勝てるとは思ったけど、こうもあっさりとは……」


いやいや、もうちょっと驚いてもいいんじゃねーの?


ともかく!これで俺の部活ライフも筋肉スタートを切った!やるぜ!毎日拳で語るぜ!


だがその時――


「緊急警報発令!大型アベレーター出現、エリア7にて確認!」


校内放送が鳴り響いた。場の空気が一瞬で張り詰める。


「よっしゃ、出番だな!」


俺はニヤリと笑って、リングを飛び降りた。これこそ俺の真の戦場!


放課後?部活?青春?――上等だ!


でも、それより優先するべきことがある。それは――


「この街を守ること!いくぜ、おまえら!!」


ミルフィはドタドタついてくるし、ユキは無言で変身準備を始めてる。完璧だ。


この拳と絆で、怪物をぶん殴る!

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