第30話

「大型アベレーターだとォ!? しかも中枢区域だとォォォォ!?」


ビルの屋上から飛び降りながら、俺のテンションは最高潮だ!


「うぅ~、カイ様、テンション上げすぎですぅぅ! 計測クリスタルが酔いそうですぅぅ!」


「酔うな! これは戦場の鼓動だ! 魂が叫んでるだけだ!」


「お前の鼓動だけで震度出るのやめてくれ。地図のブレ補正が大変なんだ」


ユキが風の足場で並走してくる。相変わらずブレないサポート。だが表情はわずかに引き締まっていた。


中枢区域――学園の心臓部。生徒会本部がある場所で、重要設備や魔力炉も集中してる。


そこにアベレーターが現れたってのか……!


「いいぜ……やってやろうじゃねぇか!」


そして俺たちは、その現場に到着した。


「こいつは……!」


霧が濃い。いや、違う。これは“霧”じゃねぇ。


「異能濃度が高すぎますぅ……アベレーター自身が、周囲の魔力を飲み込んで濃霧を作ってますぅぅ!!」


「それってつまり……」


「大型アベレーターの自己領域展開だな!」


どんと正面から現れたのは、今までの比じゃねぇサイズの個体。


ビルの三階くらいまであるその体躯、昆虫型のようで、羽音と共に空を振るわせていた。だが一番ヤバいのは――


「……目が、こっちを見てるな」


ユキが低く言った。


霧の向こう、その巨大な目が、俺たちを正確に捉えていた。


「迎撃モード、オンだな」


「うん。来るよ」


「来るですぅぅぅぅぅ!!」


グガァァァアアアアアア!!


音波とも咆哮ともつかない唸りと共に、大型アベレーターが突っ込んできた!


「さぁぁぁぁ来いッッ!!」


《変身:筋肉魔装・解放!!》


ゴゴゴゴゴ――ッ!!


お馴染みピンクの魔法少女衣装が展開し、華奢なボディにふわっと包み込む……が、魂は熱血だ!


「《絶拳》ッ!!」


バギィン!!


大型アベレーターの突進を、真っ正面から拳で止めた!


「ちょっとォ!? ぶつかる前提で動いてるじゃないですかぁぁぁぁ!!」


「それが魂の拳ってやつだ!!」


「脳筋戦術の極み」


「うるせぇ!! 今こそ“異世界筋肉魂”の真価を見せるときだッッ!!」


アベレーターの翼が回転する。空気を裂き、圧縮された風刃が周囲に飛び散る!


「くるぞ、全周攻撃!」


ユキがすぐに防壁を展開! 魔力の風の壁が風刃を打ち消す!


「ありがとなユキ!」


「まだ終わってない。上だ!」


ミルフィが上空を指差す!


「霧の上から降下体勢ですぅ! 二段構えの攻撃ですぅぅぅ!!」


「面白ぇ!!」


俺は地面を蹴って飛ぶ!


「空中迎撃だッ!!」


《スキル:爆砕剛撃掌・空中応用型!!》


ズガァァァン!!


飛び上がった俺の掌打が、降下してきたアベレーターの顔面をぶん殴る!!


「ガギャギャギャアアアア!!」


「まだまだだァ!!」


《連続スキル:瞬閃連拳・改》


「いち! に! さん!」


ズドドドドドッ!!


連撃が決まる! 装甲を砕く音が快感すぎる!!


だが――


アベレーターの体が一瞬、紫に光った!


「カイ様ぁぁぁぁ! 魔力収束パターンですぅぅぅ!!」


「放射系異能! 全方位攻撃が来る!」


「防御してるヒマなんかねぇッ!! 押し切る!!」


拳を握り直す。


「こっちも出力最大だァァァ!!」


《必殺スキル:爆砕絶頂拳・極式ッ!!》


全身の魔力を拳に集中! 華奢な腕から繰り出された一撃が、巨大なコアを直撃!!


ドガァァァァァアアアアアン!!!


爆発の衝撃で、霧が一気に吹き飛ぶ――!


大型アベレーターが、バランスを崩して地面に倒れ込む!


「今だ……ユキ、ミルフィ! 連携砲火!」


「風刃、最大出力」


「ミルフィビーム発射準備完了ですぅ!」


「撃てェェェ!!」


ズバァァァアアアアン!!!


風と光の一斉射撃が、倒れたアベレーターを直撃!!


光が収まり、地面に残ったのは黒く崩れた残骸だけ。


「……やったな」


「ええ」


「勝利確定ですぅ! 討伐完了報告、送信しますぅぅぅ!!」


息をつく間もなく、俺は笑っていた。


「これが俺たちの戦いだ!!」

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