第16話

黒煙の刃が、俺を包むように襲いかかる。


一撃一撃がビルを倒せるレベルだが、そんなもん、知ったこっちゃない。


「うおおおおっ!」


俺は拳を前に突き出し、全身の筋肉を爆発させた。


「筋肉シールド《マッスル・フォースバリア》!」


ゴゴゴゴゴッ!!


肉体そのものを防壁に変えて、黒煙の刃を弾き飛ばす。


「カイ様、どこまで無茶するんですぅぅぅ!」


ミルフィが頭を抱えながら叫んだ。


「無茶してねぇ、これが常識だ!」


「異世界の常識、信用できないですぅ!」


ミルフィがぐるぐる飛び回ってる横で、ユキがキリッと叫ぶ。


「カイさん、そろそろ限界がきます!」


「限界なんざ、超えてからが勝負だろ!」


俺は顔を上げた。ギガ=バロウスのコアが、光を増して脈動している。


目指すべきゴールは、すぐそこだ。


「ユキ、サポート頼む!」


「了解!」


ユキが両手を構え、冷気をギガ=バロウスの足元に叩き込んだ。


ズバババッ!!


足元が一瞬で凍りつき、動きが鈍る。


「ナイスだ!」


「でも長くは持たない!」


ユキが即座に警告を飛ばす。


「その間に決める!」


ギガ=バロウスが雄叫びを上げ、足元の氷を割ろうと力を込める。


その隙を逃さず、俺は跳び上がった。


「筋肉最終奥義ッ!」


全身の筋肉を一斉に震わせ、衝撃波を発生させる。


「マッスル・ブレイジング・ストライク!!」


ドォォォォン!!!


拳がギガ=バロウスの胸に直撃。


亀裂が走る。


コアが露出し、脈動が激しさを増した。


「いける!」


「カイ様ぁぁっ、もうひと押しですぅぅ!」


ミルフィの声が飛ぶ。


「とどめだあああああ!」


俺は拳に最大限の力を込め、再び跳躍。


ギガ=バロウスが咆哮し、黒煙を噴き上げたが、そんなもん構わず突っ込む。


筋肉爆裂拳フィニッシュ・インパクトッ!!」


バゴォォォン!!


コアに直撃する感触。


紫色の光が一瞬で拡散し、ギガ=バロウスの巨体にひびが広がった。


「カイさん、離れて!」


ユキが叫ぶ。


「了解!」


即座に跳び退く。


次の瞬間――


ズドォォォォォォン!!!


ギガ=バロウスの巨体が、轟音と共に崩れ落ちた。


砂煙が街中を覆い、俺たちの視界を一瞬で奪う。


ミルフィが小さく咳き込みながら飛んできた。


「終わった……ですぅ……?」


「ああ」


俺は拳を握ったまま、堂々と立った。


「勝ったぜ!」


「ほんとに、よく勝てましたね……!」


ユキが呆れた顔で言う。


「当然だろ、俺たちの勝利だ!」


俺はミルフィとユキに向かってサムズアップした。


「異世界仕込みの筋肉と根性、なめんなよ!」


「いや、やっぱ普通じゃない……」


ユキが小声でつぶやいた。


「むしろ異常ですぅ……」


ミルフィもぼそっと言った。


だがいい。異常でも、なんでもいい。


俺たちが勝った。それがすべてだ!


「さーて、次はステーキ祭りだな!」


「いや、まずは報告に戻りましょう!」


ユキが即座に突っ込んできた。


「筋肉で済ませようとしないでください!」


「細かいことはあとだ!」


俺は大笑いしながら、砂煙の中を歩き出した。

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