第7話

「いっけえええええっ!!」


俺は倉庫内に突撃しながら、右拳を振りかぶった。


ゴブリン配送隊(仮称)のひとりがびっくりした顔でこっちを見たが、知ったこっちゃねえ!


「筋肉スパイラル・ドライヴッ!!」


ドゴォンッ!!!


拳が一閃、ゴブリンが吹っ飛んだ!


後方の段ボール山に突っ込んで、ゴブリンと一緒に荷物がどさどさと崩れる。


「カイ様ぁ!! 華麗な開幕ダッシュですぅ!!」


ミルフィが上空から応援してくる。


「この程度の雑魚、異世界で何百体潰してきたと思ってんだぁぁ!!」


倉庫内にいたゴブリンたちが、ギギギと牙を剥き、いっせいに襲いかかってくる。


だがな――!


「群れたら一網打尽だろがぁぁぁっ!!」


俺は地面に手をつき、膝を溜める。


次の瞬間、筋肉を弾けさせて、跳躍ッ!!


筋肉旋風脚マッスル・トルネードッ!!」


ズバァァァァン!!!


俺の回し蹴りが、倉庫内の空気を唸らせ、ゴブリンどもを一気に薙ぎ払った。


「ひょええええぇぇぇぇ!!?」


「うぎゃああああっ!!」


悲鳴とともにゴブリンたちが壁や天井に激突していく。


「うおぉぉぉっしゃああ!! 一撃必殺!!!」


派手にぶっ飛ばして気分は最高だ!!


「さっすがカイ様っ!! これなら五分以内に完封勝利ですぅ!!」


「へへっ、任せろ!!」


ぐるっと倉庫を見渡す。


まだ何匹かしぶとく残っているけど、そいつらも段ボール箱を盾にしたり、物陰に隠れたりしている。


よーし、追い込みかけるぜ!!


「おらおらぁっ! 隠れても無駄だぞぉっ!!」


倉庫の支柱に飛び上がって、壁を蹴り、天井の梁(はり)をつたって、ゴブリンたちの頭上から強襲!


天井直下筋肉落下ヘヴンリィ・マッスル・クラッシュ!!!」


ドゴォォォォンッ!!!


着地と同時に生じた衝撃波で、ゴブリンたちがバウンドし、あちこちに吹っ飛ぶ。


「ナイス着地ですぅ!!」


「任せろっ!」


ふらふらと立ち上がった最後のゴブリンに、俺は片手でピースサインを向けた。


「ラスト、フィニッシュだッ!」


両拳を合わせ、渾身の力を込める。


超筋肉炸裂マッスル・インパクト・グランバーストッッ!!」


バッキャァァァァァン!!!


地面に拳を叩き込んだ衝撃で、倉庫全体が震えた。


床が割れるギリギリ手前で止めた俺の力加減、さすが異世界仕込み!


爆風に巻き込まれたゴブリンたちは、全員キューンと目を回して地面に転がった。


「よぉぉぉっしゃあああ!!!」


勝利の雄叫び!!


俺は全身で勝利を噛み締めた!


「すごいですぅ!! カイ様、完璧すぎますぅ!!」


ぽよぽよ飛びながらミルフィが絶叫してる。


そこへ、どこからかパチパチと拍手が聞こえた。


「いやー、噂以上だな」


ゆるゆる拍手してたのは、レンだった。


入り口の壁にもたれて、コンビニコーヒー片手に見物してやがった。


「最初から手伝えよぉぉぉ!!!」


「オレ、雑用係じゃねーし」


レンはさらっと流してきやがる。


「ま、これで新人試験合格だな」


「え、試験だったのこれ!?」


「まあ、そういうことにしとけ」


レンは笑いながら、俺に一枚のパスカードを投げて寄こした。


「これ、正式ID。これでアンタも都市管理局・異能災害課・特別対応隊の一員だ」


「特別対応隊!! すげえ響きだ!!!」


俺は両手でパスカードを受け取り、胸に叩きつけた。


「ようし、これで正式に……!」


「殴って、ぶっ壊して、守る!! 異世界帰りの筋肉魔法少女、正式デビューだああああああ!!!」


「最高ですぅ!!!」


ミルフィがぽよんぽよん跳ねまくる。


レンは相変わらずやる気ゼロの顔で肩をすくめながら言った。


「まあ、頑張れよ。すぐ次の仕事来るからな」


「おうっ!!!」


次なるバトルに向けて、俺の拳はすでにうずうずしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る