第4話
「行くぞっ、ミルフィ!」
「ま、待ってくださいぅ!! 無策で突っ込むのはダメですぅ!!」
ミルフィの絶叫をバックに、俺はズンズンと炎を噴く巨人アベレーターに向かって歩み寄った。いや、歩み寄るっていうか、ほぼ小走りだったな。だって、燃え盛る相手とか、ロマンしかないだろ!!
巨人の背丈は三階建てくらいだろうか。肩から噴き出す炎がビルの壁に当たって、ガラスがビリビリ音を立ててる。
「うぉおお……デカいなー!」
「デカいじゃないですぅ!! バリア持ちですぅ!! 正面からの攻撃は無効化されますぅ!!」
ミルフィが必死に解説してくれるが、俺の頭の中はもっとシンプルだ。
「なら、バリアごとぶっ壊しゃいいんだろ!」
「カイ様ぁ!!! 発想が物理全振りですぅ!!」
だが、もう止まらねぇ。
俺は、両足をぐっと地面に踏み込んで――
「筋肉魂! スパイラルチャージ!!」
異世界でも使いまくった、突撃特化スキルだ!
脚に魔力を集中、螺旋状のエネルギーを巻き起こしながら加速!
ぐわぁぁぁっと地面を抉りながら、俺は巨人へ一直線に突っ込んだ!!
「いっけええええええええ!!!」
バチバチッとバリアに弾かれる寸前、俺はさらにもう一段ギアを上げる。
「気合いだああああああっ!!!」
ドゴォォォォンッッ!!!
とんでもない衝撃音と共に、バリアに亀裂が走った!
「うおっしゃあああ!! ヒビ入ったぞ!!」
「本当に割れたぁ!! 物理で割れるなんて聞いてませんでしたぁ!!」
ミルフィが顔面蒼白で飛び跳ねてるが、今は気にしねぇ。
バリアにできたヒビ目掛けて、拳を振り上げる!
「筋肉スピリット・ブレイク!! 連打モードぉぉぉ!!!」
ドカドカドカドカ!!
破壊的な連続パンチを叩き込みまくった。
バリアがバリバリ音を立て、みるみるひび割れていく。
「もうちょいだっ!! もうちょいで粉砕できるっ!!」
「カイ様ぁ! 後ろから来てますぅ!!」
ミルフィの叫び声で振り向くと――
セイラさんが鬼の形相で追いついてきてた。
「魔法少女だか何だか知らないけど!! 無茶苦茶しすぎよおおおお!!!」
しかも、手にはデカいスタンバトンみたいなの持ってる。
うお、やべぇ。
「ミルフィ! バリア粉砕優先だ!!」
「そ、そんなぁぁ!!」
バキィィィィン!!
バリアが割れる音が響き渡った。
やったぜっ!!
「いけるっ!! これで素のボディだっ!!」
巨人アベレーターは咆哮を上げ、全身から炎を吹き出した。
こいつ、マジで怒ってるな。だが、怒りで冷静さを欠いたやつほど、隙だらけってもんだ!
「いっくぞおおお!!」
跳躍一発。
目標、巨人のド真ん中、鳩尾(へそ)あたり!
「超必殺ッ!! 筋肉マグナム・インパクトォォォ!!!」
拳を突き出しながら、渾身の魔力を叩き込む。
ゴゴゴゴゴゴッ!!!
直撃した瞬間、巨人アベレーターの胴体が凹み、内部のコアがむき出しになった!
「今だっ!!」
拳に再び魔力を溜め、全力全開で――
「これが俺のッ!! 異世界帰り筋肉魂だああああああっ!!!」
ズガァァァァァァァァァァン!!!
一発、必殺。
コアが粉砕され、巨人は炎ごと一瞬で霧散した。
勝った……!!
「うぉおおおおっしゃあああああああああ!!!」
俺は拳を高く掲げた!
ミルフィは泣きながら飛び跳ねてる。
「カイ様ぁ! 超絶カッコよすぎですぅ!!」
最高だぜ!
……だが、喜びも束の間、背後から殺気が迫ってきた。
バッと振り返ると、セイラさんが本気の顔でバトンを振りかぶってた。
「待てっ! 待て待て待て!!」
「今度こそ逃がさないっ!! こっちも本気よっ!!」
バチバチ火花散らしてるそのスタンバトン、絶対にヤベェやつだろ!
「ミルフィ! 撤収ぅぅぅぅぅ!!!」
「ひぇぇぇぇ!!」
必死にまた逃走ルートを探して、俺たちは夜の街へと飛び出していった。
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