第40話 決戦の刻、対峙する運命
玉座の間の重々しい扉を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。
広間の中心には、巨大な紫色の魔法陣が禍々しい光を放ち、天井にまで達するほどの魔力の柱を形成している。禁術は、もはや発動寸前の段階にあるようだ。
そして、魔法陣の中心……玉座の前には、一人の男が立っていた。
豪華な装飾の施された服を身に纏い、年の頃は五十代だろうか。精悍な顔立ちだが、その瞳には狂気と野望の色が濃く浮かんでいる。
公爵ヴァルガス。この国の闇、今回の事件の元凶だ。
「……ようやく来たか、忌々しい虫けらどもめ」
ヴァルガス公は、ゆっくりとこちらを振り返り、歪んだ笑みを浮かべた。その全身からは、禁術の影響か、人間とは思えないほどの強大な魔力が溢れ出ている。
「貴様が、ヴァルガス公か!」
俺は神剣を構え、睨みつける。
「そうだ。そして貴様が、私の計画をことごとく邪魔してきた幸運の小僧……カイ・ジンロウだな」
ヴァルガス公は、まるで面白い玩具を見るかのように、俺を値踏みする。
「だが、それもここまでだ。我が禁術は間もなく完成する。この力をもって、私は兄に代わり、この国の、いや、世界の新たな支配者となるのだ!」
「そんなこと、させるか!」
俺たちは一斉にヴァルガス公に襲いかかる!
だが、ヴァルガス公は指一本動かさずに、俺たちの攻撃を魔力の障壁で弾き返した。
「無駄だ。今の私には、貴様らの攻撃など通用せん」
ヴァルガス公は、余裕の表情で語り始めた。
「知っているか? アルカナ朝が滅びた本当の理由を。彼らは、あまりにも強大な力を手にしすぎた。運命に干渉し、世界の理すら書き換えようとしたのだ。その結果、世界そのものの怒りを買い、滅びた」
「……何が言いたい?」
「貴様の持つ力……その異常な幸運も、アルカナ朝の遺産……あるいは、それ以上の危険な力だということをだ。そして、それを与えたあの女神……フォルトゥナも、貴様を利用して、再び世界を混乱に陥れようとしているのかもしれんぞ?」
フォルトゥナが……俺を利用して……?
ヴァルガス公の言葉が、俺の心に疑念の種を蒔こうとする。
「黙れ! 俺は誰にも利用されたりしない! 俺の運命は俺が決める!」
俺は動揺を振り払い、叫んだ。
「この力は、俺と仲間たちの未来を掴むために使うんだ!」
「愚かな……! ならば、その力の本当の恐ろしさを教えてやろう!」
ヴァルガス公が杖を振り上げると、周囲の空間がさらに歪み、禁術の魔力が彼自身に流れ込み始めた!
彼の体が、みるみるうちに異形へと変貌していく! 禍々しい翼が生え、全身が黒い鱗のようなものに覆われ、その瞳は赤く輝く。
「これが、禁術の真の力だ! ひれ伏すがいい!」
最終形態……! ラスボスのお約束かよ!
変貌したヴァルガス公から放たれる魔力は、先ほどとは比較にならないほど強大だ。
俺たちは、持てる力の全てをぶつける!
フェンの【神狼の爪牙】! リリアの聖なる光! ミャレーの高速の斬撃! そして俺の神剣と【絶対幸運】!
激しい攻防が繰り広げられる。玉座の間が、俺たちの放つ力とヴァルガス公の魔力によって揺れる。
俺は渾身の力を込めて、神剣をヴァルガス公に叩きつけた!
確かな手応え!
「ぐ……おおっ!?」
ヴァルガス公が、初めて苦悶の表情を見せる。
だが、致命傷には至らない。
「小癪な……!」
ヴァルガス公は、さらに強大な魔力を放ち、俺たちを吹き飛ばした。
「終わりだ、小僧!」
ヴァルガス公が、とどめの一撃を放とうと、その手に闇のエネルギーを集中させる。
俺たちはボロボロになりながらも、再び立ち上がる。
「……いや、まだだ」
俺は、不敵な笑みを浮かべた。
「俺の『幸運』は、こんなもんじゃねえ!」
俺たちの本当の戦いは、ここからだ! 俺は、仲間たちと共に、最終形態となった黒幕へと再び立ち向かう!
第5章、最終決戦の幕は、今、切って落とされた!
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