第14話 迷宮攻略始めました(浅層)

 3回目のガチャで、俺はSSRの神官見習い、リリアを召喚した。

 回復魔法が使えるのはありがたいが、見た目はどう見ても戦闘向きじゃないし、性格も気弱そうだ。正直、大当たりとは言い難い。

 だが、引いちまったもんは仕方ない。それに、SSRだ。きっと何か役に立つはずだ……多分。

「よし、リリア! 早速だが、実戦訓練だ!」

「え、ええっ!? い、いきなりですか!?」

「当たり前だろ。冒険者ってのは、常に危険と隣り合わせなんだ。早く慣れてもらわねえと」

 俺は、新たな仲間(?)の実力と連携を試すため、そしてシルバーランク昇格のための実績稼ぎのため、再び「クロノスの迷宮」へ向かうことにした。目指すは浅層の踏破、そして可能なら中層への足掛かりを作ることだ。


 迷宮の入口周辺は、相変わらず多くの冒険者で賑わっていた。俺とフェン、そしておどおどと後ろをついてくるリリアの組み合わせは、やはり注目を集めた。

「おい、あれって銀狼連れのカイじゃねえか?」

「隣の神官服の嬢ちゃんは新しい仲間か? ずいぶん頼りなさそうだが……」

 ヒソヒソと交わされる噂話が耳に入るが、気にしていられない。俺たちはさっさと迷宮内部へと足を踏み入れた。


 ひんやりとした空気の中、松明の明かりを頼りに浅層を進む。

「リリア、警戒を怠るなよ。いつ魔物が出てきてもおかしくない」

「は、はいっ!」

 リリアは杖をぎゅっと握りしめ、緊張した面持ちで頷く。

 早速、前方に数体のゴブリンが現れた。

「フェン、行け!」

「ワォン!」

 フェンが飛び出し、ゴブリンを蹴散らしていく。俺も剣で応戦する。

「リリア、俺たちの後ろから援護を頼む! 危なくなったら回復魔法だ!」

「は、はい! えっと……《光よ、彼の者を癒したまえ》!」

 リリアが杖を掲げて詠唱すると、俺の体に温かい光が降り注ぎ、戦闘で負った軽い傷が癒えていく。

「おお、効くな! いいぞ、リリア!」

「あ、ありがとうございます!」

 褒められて、リリアの顔が少しだけ綻んだ。よしよし、この調子だ。


 その後も、フェンを前衛、俺を中衛兼アタッカー、リリアを後衛ヒーラー兼サポーターという布陣で、浅層の魔物を順調に倒していった。リリアはまだ戦闘に慣れていない様子だったが、回復魔法の腕は確かで、俺とフェンが多少無茶をしても、すぐに立て直すことができた。これは思った以上に使えるかもしれない。

 途中、落とし穴のトラップに俺がハマりそうになったが、リリアが咄嗟に補助魔法(軽い浮遊効果?)を使ってくれて助かった。これも幸運……いや、リリアのおかげだな。

「助かったぞ、リリア」

「い、いえ! お役に立てて嬉しいです!」

 リリアははにかみながら微笑んだ。うん、なかなか可愛いじゃないか。……いやいや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。

 さらに、【絶対幸運】のおかげか、壁の隠しスイッチを発見し、隠し通路の先の宝箱からそこそこの金貨と、古い魔道具(鑑定してみないと分からないが)を手に入れることもできた。


 そして、俺たちは浅層の最奥部、以前ゴブリンキング(とは違うが同程度の強さの)ミノタウロスを倒した広間に辿り着いた。今回は、巨大な石造りのゴーレムがボスとして待ち構えていた。

「デカいな……。リリア、回復頼むぞ! フェン、足止めだ!」

「ワォン!」

「は、はい!」

 フェンがゴーレムに飛びかかり、その硬い装甲に爪を立てるが、あまりダメージを与えられていないようだ。ゴーレムの重い一撃がフェンを襲う!

「フェン!」

「《光よ、彼の者を守りたまえ》!」

 リリアの補助魔法(防御力アップ?)がフェンを包み、ゴーレムの一撃をなんとか耐えきる。

「よし! 俺が注意を引き付ける!」

 俺はゴーレムの側面から斬りかかる。だが、やはり剣も通じにくい。

 どうする? 弱点はどこだ……?

 その時、ゴーレムが腕を振り上げた拍子に、胸部の装甲の一部がズレて、内部の魔石コアが一瞬見えた!

 あれだ! 【絶対幸運】か!?

「リリア、フェン! 胸のコアを狙え!」

「はいっ!」「ワォン!」

 フェンが再び飛びかかり、ゴーレムの注意を引きつける。その隙に、俺はありったけの力を込めて、剣をコアめがけて突き出した!

 ガキンッ! と硬い手応え! 剣は折れてしまったが、コアにヒビが入った!

 ゴーレムの動きが鈍る。

「とどめだ、フェン!」

「グルオオオッ!」

 フェンの渾身の【神狼の爪牙】が、ヒビの入ったコアを砕き割った!

 ゴゴゴ……と音を立てて、巨大なゴーレムが崩れ落ち、動かなくなった。


「はぁ……はぁ……やった、のか?」

「か、勝ちましたね……カイさん!」

 俺とリリアは、顔を見合わせて安堵の息をついた。フェンも、誇らしげに胸を張っている。

 ゴーレムからは、大きな魔石と、古代の金属片らしきものがドロップした。奥の宝箱からは、金貨と、何かのスキルブックの断片が出てきた。今回もなかなかの収穫だ。

「よし、これで浅層は完全にクリアだな」

 俺は満足気に頷いた。リリアも、初めてのダンジョン攻略(しかもボス討伐)を達成し、自信をつけたようだ。

 だが、ゴーレムが守っていた部屋の奥には、やはり下層へと続く階段が見えた。そして、以前よりもさらに強く、不気味な魔力の揺らぎを感じる。

「……このダンジョン、まだまだ奥がありそうだな」

 中層への挑戦意欲と、そこに潜むであろう危険への予感が、俺の胸をざわつかせた。

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