女神「借金10億Gです♪返済用にスキルガチャどうぞ(1回100万G)」←ふざけんな!…って回したら世界最強になった件

天照ラシスギ大御神

第1章 奈落の底からのスタートダッシュ

第1話 転生特典は借金10億G!?(プロローグ)

 今月も……足りない。

 通帳の残高を見て、俺、金城 剛(かねしろ つよし)、二十八歳、フリーターは深いため息をついた。

 奨学金の返済。病気の親の入院費。そして、親が残した借金。

 トリプルワークで身を粉にして働いても、利子を返すのがやっとだ。真面目に生きてるだけなのに、なんでこんな目に遭わなきゃならないんだ……。

 疲れ切った体を引きずり、深夜の帰り道。朦朧とする意識の中、俺は――階段を踏み外した。


 チカチカと、やけに眩しい光を感じて目を開ける。

「目が覚めましたか? 金城 剛さん」

 キラキラと輝く光の中、まるで天使のような――いや、本物の神か?――とんでもない美少女が微笑んでいた。腰まで届くプラチナブロンドの縦ロールに、ルビーみたいな赤い瞳。現実離れした美貌だ。

「あなたは亡くなりましたが、幸運にも異世界転生する権利を得ました!」

 ……マジか!

 死んだのはショックだが、異世界転生!? ってことは、人生逆転のチャンス到来じゃねえか! チート能力でウハウハ生活だ!

「素晴らしい特典をご用意しました! なんと『借金10億ゴールド』です!」

「…………は?」

 今、なんて言った? 借金? 10億?

「大丈夫ですよ! その借金を返すための超便利スキル【天運ガチャ】も差し上げます! 1回たったの100万ゴールドで、強力なスキルやアイテム、仲間まで手に入る『かも』しれません!」

 女神(?)はニコニコと、とんでもないことを宣っている。

「かも、ってなんだよ! てか100万Gって高すぎだろ! 元手はどうすんだよ!」

 俺が叫ぶと、女神は心底楽しそうにクスクス笑った。

「それはもちろん、ご自身で稼いでいただく形になります♪ あ、ちなみにわたくし、借金管理担当の女神・フォルトゥナです。返済期限は10年、利子は年利10%の複利ですので、お忘れなく。遅延したらペナルティ(神罰)がありますので、頑張ってくださいね♪」

 ニコッと笑う女神が、悪魔にしか見えなかった。

 ふざけるな! 異世界に来てまで金に苦しむのかよ! しかも、前世より桁違いの借金背負ってんじゃねえか!

「ああ、もう! こうなったらヤケクソだ!」

 俺は叫んだ。

「何が何でも稼いで、ガチャ回してやる! 借金返済して、ついでに成り上がってやるから見てろよ!」

「ふふっ、威勢がいいのは結構ですわ。では、早速ですが行ってらっしゃいませ」

 フォルトゥナが指を鳴らすと、俺の足元に穴が開き、真っ逆さまに落ちていく。

「うわあああああああっ!?」


 ドスン、と地面に叩きつけられた。幸い、草むらの上だったらしく、痛みはそれほどでもない。

 見渡せば、埃っぽく煤けた、活気のない街並みが広がっている。ここが異世界か……。

「……さて、どうすっかな」

 所持品は今着ているボロボロの服だけ。金は当然ゼロ。いや、マイナス10億Gか。クソッ。

 首元には、フォルトゥナに付けられたチョーカー型の魔道具が嵌まっている。これが借金証書代わりらしい。邪魔くせえ。

 まずは情報収集と、当面の目標であるガチャ資金100万Gの捻出方法を探さねえと。

 俺は一番マシそうな建物――冒険者ギルド「フロンティア・ユニオン」ダストピット支部と書かれた看板が掛かっている――の扉を開けた。

 中は薄暗く、酒と汗の匂いが混じった空気が漂っている。カウンターには、やる気のなさそうな職員が座っていた。

「……冒険者登録、したいんだが」

「へいへい。身分証は? ……ねえ? じゃあ新規登録だな。登録料は銀貨10枚だ」

「……金、持ってない」

「はあ? なら出直しな」

 ニベもない対応。クソ、これが異世界の現実か。

 だが、ここで引き下がるわけにはいかない。

「依頼を受けて、報酬から払うってのはダメか?」

「前例がないわけじゃねえが……お前みたいなヒョロいの、どうせすぐ死ぬぞ? まあ、死体回収の手間賃が取れればいいか。ほら、これに名前と……って、読み書きできるのか?」

 なんとか登録を済ませ、ギルドカードを手に入れる。ついでにステータスも確認してもらった。


『【カイ・ジンロウ】 Lv.1

 HP: 85/85 | MP: 30/30

 STR: 12 | VIT: 11 | DEX: 15 | AGI: 14 | INT: 10 | MND: 9 | LCK: ??? (測定不能)

 スキル: 【天運ガチャ】

 称号: なし

 所属: フロンティア・ユニオン (アイアン) 』


 俺の新しい名前はカイ・ジンロウらしい。ステータスは……LCK以外、軒並み低いな。なんだこの測定不能って。まあ、幸運だけが取り柄みたいなもんだしな、俺。

「で、依頼だが……」

 職員が指さした掲示板を見る。

 薬草採取、ゴブリン討伐……どれも報酬は銅貨数十枚から銀貨数枚程度。こんなんじゃ100万Gなんて、いつになるか分からねえ。

 その中で、ひときわ高額な依頼が目に留まった。

『緊急依頼:ゴブリンキング討伐

 場所:西の廃坑

 内容:廃坑に巣食うゴブリンキング及びその配下の討伐

 推奨ランク:シルバー以上

 報酬:150万G 』

 150万G! これだ!

「おい、このゴブリンキング討伐依頼、俺が受ける!」

 俺が言うと、ギルド内がシン、と静まり返った。

 次の瞬間、ドッと笑い声が響く。

「おいおい、聞いたか? 登録したてのアイアン様が、ゴブリンキング討伐だってよ!」

「無謀にもほどがあるぜ! 死にに行くようなもんだ!」

 職員も呆れた顔で俺を見る。

「やめとけ。お前じゃ逆立ちしたって無理だ。死体が残ればマシな方だぞ」

 うるせえ。無謀? 上等だ!

 失うものなんて、最初からねえんだよ! ……いや、10億Gの借金があったわ。

 死ねねえ! 絶対に生きて帰って、ガチャ回してやる!

「受ける。絶対にだ」

 俺はなけなしの銅貨数枚で、一番安い粗末な剣と革鎧を買い、ギルドを後にした。

 背中に浴びせられる嘲笑を振り切り、ゴブリンが巣食うという西の廃坑へ、俺は一人、歩き出した。

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