第3話 シマロンの願いとシロップの危機
モコモコシティの街の中心。巨大な時計型の《メモリアルクロック》が、ちょうど昼の12時を指していた。時計台へと続く道には草花がそよぎ、あたたかい風がそっと体を撫でていく。空には、澄んだ青がどこまでも広がっていた。
クルミはシロップを抱きしめ、「シロップ…もこもこ…なの!」と目を輝かせる。シマロンはピヨを撫でながら、「ピヨ…ワタシの宝…なのだ」とつぶやいた。
「なんか、歩いてるだけで幸せだなぁ」
まーみんがにっこり笑えば、タクヤは「イベントで街がにぎやかだな」とあたりを見回した。
やがて時計台に到着。シマロンはピヨを胸に抱きながら、小さな紙に願いごとを書く。
「大きな家…欲しい…なのだ」
その紙をふわふわのおねがいボックスにそっと入れると、「ピヨと…みんなと幸せに暮らす…なのだ」とつぶやいた。ピヨが「ピヨッ!」と元気に鳴き、まーみんが「願い、叶うといいね!」と手を叩いた。
その後、一行は《休息の庭》へと向かう。雲でできたベッドや花びらのハンモックが並び、綿菓子のような花がやさしく風に揺れている。
クルミはシロップを抱いたまま雲ベッドにゴロンと寝転がり、「ふわ…気持ちいい…なの…」と幸せそう。シロップも小さく丸くなって、すやすやと寝息を立てた。
タクヤは芝生にごろりと寝転がり、土や草の香りに目を閉じる。あたたかさの中に、少しずつ冷たさが混じる感覚が心地よい。
「ここ、現実と本当変わらないよな」
ぽつりとつぶやくと、まーみんが笑いながら返す。
「本当そうだよね! 見て、クルミの寝顔、めっちゃ癒し~!」
シマロンも雲ベッドにピヨと一緒に寝そべり、「ピヨ…あったかい…みんなと一緒なのだ」と幸せそうに目を細めた。
しばらくして、クルミがパチパチと目を開けた。
「クルミ…元気…復活なの! シロップ…遊ぶ…なの!」
そのとき、空にふわりとホログラムが浮かび、ルミナが現れる。
「みなさん、フラワーエリアで『まるばつクイズ』とホバー迷路のシードアップイベントを開催中よ。楽しんでね♪」
「まるばつ…やってみる…なの!」
目を輝かせたクルミに続き、一行はフラワーエリアへと向かった。
そこは、ふわふわの花が咲き乱れる夢のような場所。クイズ会場は雲の家のような建物で、床にはまる・ばつの大きなマークがふわりと光っている。ルールは簡単。出題に対して、制限時間内に正解のマークに移動する。間違えると、「ポンッ!」と部屋の外にワープさせられてしまう。
最初に挑戦したのはミラーノ。ポーズを決めて勢いよく叫ぶ。
「俺って完璧だろ〜! これはまるだろ!」
「ほうら、俺って完璧!」
ところが、「ブー!」という音が響き、不正解。
「な、なんだって!?」
ミラーノはポンッと部屋の外へ飛ばされ、まーみんが笑う。
「ミラーノ、派手に間違えたね~」
タクヤもひとこと。
「さすがドリア、目立つな」
クルミとシロップも挑戦。モニターに問題が映し出される。
「モコモコシティにサンドビーチはある?」
「まる…なの? ばつ…なの?」
首をかしげるクルミの前で、シロップがぴょんと“まる”の床に跳ね、「クー!」と鳴く。
「シロップ…まる…なの!」
正解の音が鳴り響いた。
次の問題は「モコモコシティで一番人気の食べ物はイカパン?」
ピヨがぴょこんと立ち上がり、「ピヨ…ばつ…かんぺき!」
「ピヨ…喋った…なのだ!?」
驚くシマロンに、まーみんが「え、かんぺき!? ミラーノのマネ!?」と吹き出す。
「ばつ…なの!」
クルミが移動し、またしても正解。順調にクイズを進めると、クルミの頭上にふわふわの花火がパーンと咲いた。
「クルミ…レベルアップ…なの!」とぴょんぴょん跳ねる。
ピヨも続けて「ピヨ…かんぺき!」と得意顔。
「また完璧って! ミラーノの影響強すぎ!」
まーみんが笑い、タクヤも「ピヨ、キャラ濃いな」と肩をすくめる。全員がクイズをクリアし、頭上にはそれぞれ花火が咲いた。仲間たちはハイタッチで喜びを分かち合った。
次に訪れたのは《ハニーポットカフェ》の屋台。
「ツナマヨ…大好き…なの!」
クルミが注文し、ミラーノが「ツナマヨこそ完璧! 俺の愛だ、ドゥーン!」とポーズを決める。
「俺、梅おにぎりとイカパン」
タクヤが選び、まーみんが「今度はおにぎりにしよっかな」、シマロンも「イカパン…食べる…なのだ」とつぶやいた。
ベンチでおにぎりを食べながら、クルミがシロップを抱いてにっこり。
「クルミ…幸せ…なの」
「クルミ、よかったな」
タクヤがやさしく微笑む。
やがて、タクヤが立ち上がった。
「俺、ラリーにチャレンジしてみるかな。地下鉄あるみたいだし、それで移動してみるよ」
「ラリー!? かっこいい! 応援してるよ!」
まーみんが元気に手を振った。
タクヤは、ハニーポットカフェの近くにある《ふわふわ地下鉄》へ。雲のような装飾が光り、綿菓子のような光が車内にふわりと舞う。あっという間にラリー会場近くに到着し、タクヤはパンを手に歩き出す。
そのころ、残ったクルミたちはベンチで休憩中。ミラーノがツナマヨをかじりながら、またもやポーズ。
「俺のツナマヨ、完璧だろ〜!」
そこへ、陽気な声が響く。
「お、ミラーノさん! ハイパーエナジードリンク、どうだ!」
現れたのは、魚がプリントされたパーカーを着た《魚屋の大将》ウオゾウだった。
「おお、ハイパーって響き完璧!」
ミラーノはゴクゴクと飲み干す。しかし、まーみんはそのドリンクの中に一瞬だけチラリと“もやもや”が見えた気がして、慌てて叫んだ。
「あ、ミラーノ!」
だが時すでに遅し。ミラーノは飲みきってしまい、
「あれ、なんか声が…」
そうつぶやいた直後、
「お、おれおれおれってかかか、かんぺきー!」
スクラッチ風に声が乱れる。
「なんかDJミラーノみたいになってるね!」
まーみんが苦笑し、クルミも「ミラーノ…バグってる…なの!」と笑う。
「ドリア…騒がしい…なのだ…」
シマロンが少しだけうるさそうにぼそっとつぶやいた。
と、そのとき。ミラーノの体から黒い霧が飛び出し、ギザギザの牙と赤い目をしたバグモンスターが現れる。狙われたのはシロップ。
「シロップ…ダメ…なの!」
クルミが叫ぶと、ミラーノが立ち上がる。
「俺が守る、ドゥーン! リミックス!」
パンチ一閃、バグモンスターをふき飛ばす。
ルミナが姿を現し、「バグモンスターね。すぐ修正するわ」と杖を振る。魔法の光でミラーノの異常も収まり、声が元に戻る。
「ふぅ、完璧だろ〜、ドゥーン?」
ポーズを決め直すミラーノに、クルミが笑顔で言った。
「ミラーノ…シロップ…ありがとう…なの!」
「ルミナ、なんかバグ多くなってるかもね?」
まーみんの心配に、ルミナは小さくうなずいた。
「そうね…システム異常、調査するわ」
そして、再びルミナのホログラムアナウンスが響く。
「ホバーボード迷路ゲームは、夜までスターシードアップよ! 楽しんでね!」
アナウンスが響くと、一行はさっそくモコモコゲームパークへ向かった。
会場に足を踏み入れると、ふわふわの雲オブジェが浮かぶ巨大迷路が広がっていた。地面は綿菓子のように弾力があり、ホバーボードがやさしく弾む。迷路の分岐点には、まるでお菓子の木のような巨大綿菓子ツリーがそびえ立ち、キラキラと光る枝が、正しい道をほのかに示している。行き止まりにはシャボン玉トラップがひそんでいて、「プシュッ!」と泡を噴き、通る者を一瞬ツルリとすべらせた。
ウオゾウが、魚のように得意げに説明を始める。
「ここはサバの群れみたいに分岐してるんだ。右はマグロの直進、左はイワシの曲がり角!」
クルミは小首をかしげて、「クルミ…サバ…なの?」とつぶやく。
まーみんが吹き出して、「ウオゾウ、それ例えが謎すぎ!」とツッコミ。
シマロンは「ピヨ…道しるべ…なのだ」と言って、ピヨをふわっと空へ放った。
「みち…ピヨッ! かんぺき!」とピヨが鳴き、迷路の道を軽やかに先導する。
「右? 左!? どっちーっ!?」
まーみんが迷路を駆けながら叫び、綿菓子ツリーの枝をかいくぐって走る。
「うわ、滑る!」とシャボン玉トラップに足を取られながらも笑っている。
「ピヨ…右…なのだ!」
シマロンが指示を出し、ピヨが元気に「ピヨッ!」と鳴いて再び空を舞った。
ゴールにたどり着いたまーみんが、ガッツポーズで「クリアーッ!」と叫ぶ。
クルミも「たのしい…なの!」と頬を染めて笑い、シマロンはそっと「仲間…最高…なのだ」とつぶやいた。
その瞬間、空にふわふわの花火がパーンと弾け、虹色の光が舞う。全員のレベルがアップし、仲間たちは見つめ合いながら、微笑みを交わした。
ホバーボード迷路をクリアしたあと、クルミとまーみん、シマロンはアメジスト商店街へと足を運んだ。通りには、ふわふわの花をかたどったランタンがやさしく揺れ、看板は光るモコモコ生地でできていて、キラキラと輝いている。
UFO型の乗り物を扱う店は、綿菓子カラーのネオンが点滅していた。
隣のブティックには紫水晶のような装飾が施され、ゴスロリ服がずらりと並ぶ。
露店では、手ざわりふわふわのぬいぐるみや光るアクセサリーが目を引いた。
クルミが光るUFOのミニ乗り物を見つけ、「クルミ…うふぉー…欲しいなの!」と目をきらきらさせる。
「ゆーふぉーね、クルミ! 私、ずっとこれ欲しかったんだ〜!」
まーみんも笑顔で飛びつき、モコモコスクーターとゴスロリ服を手に入れて、「念願のアイテム! モコモコシティでゲット〜っ☆」と決めポーズ。
そこへ、ルミナが現れた。
「そうそう、シマロンちゃんの願い叶って、ついに家が販売されたの。おすすめは雲のテラスハウスよ。ふわふわの花が咲く庭園に、ハンモック、読書スペース付き。庭の外にはね、古い飛行船を改装した本屋さんもあるのよ」
「やった…手続きする…ピヨと暮らす…なのだ!」
シマロンの目が、星のように輝いた。
そのとき、地面が「モッコリッ」と不自然に盛り上がる。
ルミナが「あー、またおかしくなってる…」と額に手を当てる。
「ちょっと、シマロンちゃん家のエリア確認しながら、他のモッコリの修正につきあってくれる?」
ルミナが魔法の杖で地面を修復しながら苦笑する。
シマロンが「モッコリ…よくない…なのだ」とつぶやくと、ピヨが「もっこり…ピヨッ!」と真似して鳴いた。
その声に、みんながくすっと笑った。
夜のモコモコシティ。空には藍色のグラデーションが広がり、ふわふわの花と街の灯りが静かにきらめいていた。
頭上にまたたく星々の下、仲間たちの笑顔が、なによりも輝いていた。
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