なんであのゴミクズ野郎しか世界を救えないんだよ。

こーろ

第1話「なんで彼氏がこんなゴミクズになってしまったんだよ。」

〜都立新谷高校付属寮〜


 6時30分、朝から寮内でこんな会話が繰り広げられた。

 

「今までに貸した金とゲーム機と教科書全部返せ」


 そう言ったのは新谷高校3学年の野上真紀、とあるクズ野郎に振り回されている彼女自身は至って普通の高校生だ。


「なんで朝起きて一発目の発言がこれなんだよ、あと無理だよ、全部売ったもん」


 何も悪びれる様子もない顔でそう言ったのはそのクズ、野上と同じく新谷高校3学年の優乃正義。

 もうこの会話で明らかに分かるがクソがいくらついていても足りないくらいのクズだ。


「……殺すぞ?」


「急におっかないなーそれくらいで殺すなんてクズすぎるだろ」


「クズなのはお前だろ、あと殺すだけで済む方が奇跡だろ、もうこの会話3回目だぞ」


 こうなるともはや貸す方が悪いとも言いたいが、それにしてもクズだ。


「そういえば、このメッセージ何」


「えっと……バイト先の上司」


「そうなんだー、じゃあこの下にあるこの人たちは誰かなー???」


「えっ……と、バイt」


「似たような連絡をしている人が合計32人もいますけど、全員バイト先の上司なんですかー???」


「そんなことよりなんで勝手に俺のスマホみてるんだよ!それはさすがにクズすぎるって」


 そう、多分こいつはえげつないくらい浮気してる。

 ざっと50股はくだらないだろう。


「てかもうこいつらとは別れたって、連絡先間違えまくって全てバレたからな」


 ヘラヘラとした顔でそう言った。

 ムカつく、顔面を思いっきり殴ってやりたい。

 そう思っていたらいつの間にか登校の時間近づいてきた。


「とりあえず学校の準備済ませないと……」


「俺のやつもやっといてー」


「そう言うと思って寝る前にやっておきました」


「助かるぅ」


「このゴミクズが……」


「それはご褒美?」


「キモッ、二度と話しかけるなカス」


 普段はそんな口が悪い訳では無い。

 全てあのクズのせいである。


「にしても、なんであんなにクズって言ってるくせに色んなこと手伝ったりやったりしてくれるんだ?」


「お前がやってくれって毎回うるさいからだわ!!!」


「だってこのやらなきゃ行けないことぜーんぶめんどくさいんだもん」


「はぁ……」


 真紀は呆れて言葉が出なくなった。


「あとさ、他にも理由あるだろ???」


「う、うるさい!!!別にあの時こ事はもうなんとも思ってないから!!!」


「ふーん」


「とりあえずそろそろ学校いくよー」


「へーい」


「……なんで彼氏がこんなにゴミクズになってしまったんだよ」


 野上がボソッと呟いた。

 

〜新谷高校3年C組〜


「中江さん、鉛筆落としましたよ」


「あ、ありがとう!やっぱり優乃くんは優しいなぁ」


「いえいえ、当たり前のことですから」


 こいつ、いっつもクズだとバレてないやつにはめちゃくちゃ性格いいふりするんだよなあ。

 そう思いながら野上はいつも通り過ごした。

 その時……


 ザーッと、教室のテレビが砂嵐を映した。

 それと同時に教室もざわつき出す。


「なんだこれ」

 

「緊急放送的な?」

 

「誰もリモコン触ってないけど……」


 すると、砂嵐から画面が切り替わり、大きな「Gerechtigkeiter」というロゴと共に、音声が聞こえてきた。

 

「我はゲレヒティヒカイター、このまま皆を『正しさ』へと導く存在。あなた達は本当の『正しさ』を知らない、全てはこの世界の先にあるのです、抵抗は許しません。2週間後、正義の閃光があなた達を包み込むでしょう、その間はこの穢れし世界に別れでも告げとくといいでしょう」


 その話を聞き、何故か野上の脳裏に違和感がよぎった。

 すると。


「なんだよ、宗教の話なら宗教施設でやってくれ」


 優乃が呟く。

 

「珍しい、お前もたまにはまともなこと言うんだ」


 少し不安を感じながらも野上がそう返す。

 放送が途切れた、すると、キーンコーンカーンコーン、と校内放送が流れた。


「皆さん、落ち着いてください、ただいま日本全体に謎の放送が流れたのと、それに関する政府の調査が入ったとの情報が入りました」


「え、悪ふざけとかの放送じゃなかったの?」


「これどゆこと???」


「まあ大丈夫じゃね」


 再び教室がざわつき出した。


「よーし、なんかざわついているうちにこっそり学校抜け出すか」


 優乃が冗談っぽく言った。


「お前どんな言い方でもそういうことやりかねないから怖いんだよな」


「いやいや、今日はさすがにそんな事しないよ、なんか今回の件気になるしさ」


「確かにお前こういうの好きだったもんなあ、今みたいに急に放送が入って的な」


「よく分かってるじゃん」


「クズの思考なんてわかりたくないんだがな」


 するとまた新たに放送が入った。


「政府から緊急会見があるので、各自テレビから放送を視聴してください」


 すると、リモコンの近くにいた生徒がテレビの緊急会見をつけた。


「えー、日本国民の皆さん、先程の放送に関する調査をしたところ、とある組織もしくは個人による実質的な広範囲のテロ行為を行う可能性があると判断したため政府による緊急事態を宣言します」


「……え?テロ???」


 一気に教室内が異質な空気になった。


「放送時に出てきたロゴらしき物などから調査したところ、特定のSNSアカウント、つまりあの放送をした人により運営されたと見られるアカウントに『死は救済』や『私の力で穢れた世界を消し去る』などの投稿が見られた上、通常先程のような放送は普通の組織などでは出来ないものと判断したため、特定の大きな力を持った者による危険性のある行為と考えたものとなります」


「これガチでヤバいやつじゃない?」


「え、私たちどうなるの???」


「怖いんだけど……」


 そんな不安を感じる会話があちらこちらで聞こえてきた。


「尚、国民の皆さんには、情報提供をお願いしたいと思っています。危険なことが発生する可能性が高いですが謎が多い為、もし何か情報があればこちらの専用ダイヤルにご連絡ください、以上で緊急会見を終わりたいと思います」


 と言って会見が終了した。

 すると再び校内放送が流れた。


「本日は緊急会見もありましたので念の為に授業を切り上げて下校とします」


「普段だったらすこし嬉しいけど……なんか素直に喜べないなぁ、何より怖いし」


 野上が言った。


「とりあえずとっとと寮に戻ろーぜ」


「わかった、ちょっとまってて」


 そう言って、今日のところは寮で過ごした。

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