第37話


「すみませんヴィルト・シュヴァインさん!今ちょっと取材の方よろしいですか!」


控室に戻ったヴィルトにそう話しかける女が居た。

魔族の女だ。背中からカラスの翼が生えたパンツが見えそうな程なミニスカートを履いている。


「取材?」

「はい。明日の本戦で使う宣伝での歌う文句の為の取材です」

「ふむ……構わんぞ」


ヴィルトはよくわからないまま受け入れてしまう。


「ありがとうございます!では早速ですが今大会に参加した理由をお聞かせください!」

「なんか面白そうだったから」

「……賞金の五百万ルエが目的とかではなく?」

「いや。大会やってて面白そうだなーと。それでしかないが」

「えぇ……まぁ続いて。シュヴァインさんの武器は戦斧のようですが、その戦斧に何かしらの逸話だったりはありますか?」

「ん-。特には無いかな。一応愛用の武器ではあるが、それだけだしな」

「なるほどなるほど。ではーー」


ヴィルトは女と数十分話を続ける。


「ありがとうございました、では私はこれで、明日の本戦では今回のインタビュー内容を使わせて頂きますね!」

「ああ、それではな」


ヴィルトと女は別れ、ヴィルトは控室を出ていく。


「観客席は……こっちか」


ヴィルトは通路の案内に従い観客席へと向かう。


『リア、何処にいる?』


ヴィルトはリアとアンタレス達に合流するために概念共有コネクトを発動する。


『ヴィルト?えーと、Cブロックに居るわ』

『わかった。そこまで向かおう』


ヴィルトはそこで概念共有コネクトを切り、観客席に出る。

そこには人の歓声が響き渡っていた。余りの煩さにヴィルトは眉を潜めてしまう。

気を取り直してヴィルトはCブロックを探して歩く。ついでに探知能力も使ってアンタレスの位置を把握する。


そうして五分も歩けばリアとアンタレスを見つける。


「今はどんな感じだ?」

「丁度ローニャが戦っているところよ。ほら」


ヴィルトは空いていた席に座る。順番はアンタレス、リア、ヴィルトの順だ。

ヴィルトが自身が先ほどまで居た戦場に視線を向ければ懸命に戦っているローニャの姿があった。


「強いな」


ローニャはその剣と盾を持って他の参加者達を圧倒していた。


「一度は私を倒した相手なので、あの程度の連中に負けるはずがありませんからね」


そう言うのはアンタレスだ。曲がりなりにも四天王である己に勝ったのだから有象無象に負ける訳が無いと断定する。


ローニャは順調に戦いに勝っていく。一対多であっても苦戦する事無く敵を倒し、不利な盤面となれば跳んで逃げる。



そうして十分も経てばついには数人しか残らなくなる。


「がんばれー!」


リアがそう応援の声を上げる。


声が聞こえたのか聞こえてないのか。ローニャは自身から敵に突っ込んでいく。

そうして一閃。敵の腹を裂いて打ち勝つ。残る者達もローニャにおびえながらどうにか戦おうとするが、腰が低くては勝てる戦いも勝てる訳が無く。


ついにはローニャは敵を全て打ち倒し、予選突破を果たした。






円形闘技場の中で。一人の猫獣人がマイクを手に叫んだ。

身ぎれいな女だ。腰と胸を隠しただけの露出が多い恰好をしており、都市によっては痴女判定を受けて捕まりかねない恰好だ。


「これより!予選を突破し栄えある本戦に出場する事になった選手八人をご紹介します!」


そうして闘技場の中に立つのは八人の男女だ。


「かの魔竜殺し!ジャガーノートを打ち倒した戦斧使い!幼気な外見とは裏腹に圧倒的な膂力をもって敵を薙ぎ払う!冒険者にして特別外遊団の初号を持つヴィルト・シュヴァイン!」


ヴィルトは歓声を受ける。


「あの魔人が帰って来た!諸外国漫遊の旅を終え、かの邪竜殺しドラゴンスレイヤーの参戦だ!魔人エコル!」


そう呼ばれるのは女だ。

身長は百六十五センチ程と普通の女程度。茶髪に黒目をしている。

活発そうな女であり、元気はつらつという雰囲気を出している。特にこれといった武装をしていない女だ。


「黒衣に包まれた謎の剣士!その仮面の下は何者だ?!素性不明の戦士エックス!」


次は男か女かわからない者だ。ローブに身を包み体格を隠している。

身長は百七十程だが、顔を白い仮面で隠しており性別が伺えない。腰には白く輝く剣を差している。


「村の力自慢がここまで来た!村一番というだけで大会に参加したら対戦相手全員ぶっ飛ばしたパワーマン!ガンツ!」


今度は禿げた男だ。年齢は二十かそこらだろう。身長は二百センチ程と大男だ。

上半身裸の姿であり、鍛え上げたのだろう筋肉をこれでもかと見せつけている。背中にはハンマーを背負っている。


「アルテリシア家の三女!鍛え上げた剣術を以て勝ち上がった可憐なる女戦士!ローニャ・アルテリシア!」


ローニャは少々恥ずかしそうに頬をかく。


「この幼さで出場!親御さんは気にしないのでしょうか?!本大会最年少にしてダークホースとなるか?!少年リオン!」


まだ若い少年だ。歳は十四かそこらの幼い少年だ。

軽装鎧に身を包んだ姿は背伸びしている感じがする。赤い髪に赤い瞳の少年だ。腰には何の変哲もない鋼鉄の剣を差している。


「本大会は剣闘技大会と銘打っているがまさかの聖術師の参戦だ!武器を持たずに戦ってるがいいのか?!聖術師オルガ!」


出てきたのは壮年と言える年齢の者だ。歳は五十かそこらだろう。

白髪に黒目の男である。腰が少々曲がっており、杖を突いている。


「魔族の華麗なる戦士の参戦だ!そのレイピアを持って何を貫くのか!剣士カイ!」


紳士服を纏った青年だ。黒髪赤目の男である。こめかみからは黄金の山羊の角が生えており、背中からは蝙蝠の翼が生えている。

腰にはレイピアを差している。実用性よりも鑑賞性の方が強いレイピアだ。

顔は優れているといって良いだろう。顔を見た女の観客が黄色い歓声を上げている。


「以上この八名が本戦に出場!対戦カードはこちら!」


https://img.syosetu.org/img/user/v2/6583/552/220578.png


魔法を使って表示されるのはトーナメント表だ。


(ふむ。ローニャは別ブロックか。他の相手は……まぁどうとでもなるか)


ヴィルトはそう評価を下す。


「さぁ、本戦は明日朝九時からになります!どうか期待をもってお待ちください!」


かくして、トーナメントが始まる。


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