第15話

※注意 今回の話には性的な描写があります。

R15で収まる範囲だとは思われますが、怒られたら消します

ご了承ください

以下本編


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 青空の下を一匹のワイバーンが空を飛んでいる。


 黒い角が生えたワイバーンだ。翼の腕を動かし地上からほんの少し浮いて飛んでいる。

 このワイバーンは何かをけん引しており、飛ぶ事で運んでいる物──馬車さえも浮いてしまっている。

 ワイバーンの頭部には角が生えており、何処か高貴さを醸し出している。

 名をアンタレスという魔族だ。


 豪華なドア付きの馬車だ。黒で塗装された馬車であり高級感が出ている。

 その中には二人の女がカードゲームに興じていた。


 一人はつり目の黒髪赤目の女だ。身長は百六十五センチ程。

 女としての体は成熟しておらず、胸も小さければ尻も小さい。まだ少女と言える年齢だろう。

 美少女と呼ばれる部類であり、できもの一つ無い綺麗な肌をしている。


 もう一人も美女だ。

 紅い髪と赤い瞳を持つ活発そうな女だ。身長は百七十センチと女性としては少し高めだろう。

 黒髪の女とは対照的に胸も大きければ尻もデカい。女性的な体をしていると言えるだろう。


「ぐぬぬ……こっちだ!」


 黒髪の女──ヴィルトが紅い髪の女、リアが持つカードのうちの一つを手に取る。


「あ!」

「残念、外れ」


 ヴィルトがとったカードはジョーカーのカード。

 二人はババ抜きをしていた。二人でするゲームではないが何故か二人でやっている。


 ヴィルトは手札をシャッフルし、勝ち誇るかのようにリアに見せつける。


「どうだ! これでどちらかわかるまい!」


 ふふん、とヴィルトは胸を張る。

 そしてリアは無造作に一枚選び取ってしまう。


「あ」

「はい。私の勝ちね」


 リアがとったのはジョーカーではないカード。

 これにてリアの手札は無くなり、リアの勝ちが確定した。


「ぐぬぬぬぬ……」

「次は何する? スピードでもする?」

「する!」



 二人は暇つぶしをしながら旅を進める。


 塩の街パーグソルトを出た三人は次の街アルテリシアに向かって魔車を向かわせている。

 パーグソルトで一週間過ごし、王都に向かおうという事になったので三人はパーグソルトを出てアルテリシアに向かっているのだ。

 アルテリシアは王都に近い街だ。

 その為アルテリシアで依頼を程々に受けながら王都へ出発しよう、という話が決まっており三人は新しい街を楽しみに待っている。


 整備された街道の上を一同は通っていく。

 その道程は実に穏やかなものだった。



 ■


 時刻も夕方になったころにようやく一同はアルテリシアの城壁を目にした。

 アルテリシアに近づいた一同はワイバーン状態のアンタレスだと不要な混乱を招くという事で馬車を降り、徒歩で向かう事にする。

 三人横並びで歩き、雑談を交わしながら歩いて行く。


 そうしていると街に辿り着く。


 堅牢な城塞だ。城壁は五十メートルはあるだろう。巨大と言っていい。

 街道を真っすぐ進めばそこには城門があり、やはりというか空いている。


 城門まで辿り着いた三人は門番の兵士に呼び止められる。

 兵士は鉄の鎧に身を包んだ男だ。フルフェイスの兜を被っており顔はわからない。だが体格から男だとわかる。


「あんたら、冒険者か? この街に何の用だ?」

「えぇ。貴方の言う通り冒険者です。この街には王都までの途中だったので寄ってきました」

「てことは、あんたらも王都の大会に参加するのか? いいな。若いってのは。気力に溢れている」


 三人の外見年齢はヴィルトを除けば二十代程度だ。若いと思われても仕方がない。

 ヴィルトは十代後半程度に見える外見だ。実年齢は二百と少し程度だが。


「ようこそ、アルテリシアへ。歓迎するよ」


 一同はアルテリシアの街の中に入り進んでいく。


「活気のある町だな」


 アルテリシア内は人が多い。そして人々の顔は明るい。

 未来への希望がある人間の顔である。


「まずは宿を取りましょ」


 とリアの言葉に従い一同は宿を探す。


 大通りから少し離れた場所に宿を見つけた三人は宿の中に入り、受付で一週間の宿泊をすると店主に言う。

 一階の併設された食堂で一同は軽く夕食を取るとそれぞれ部屋に戻り、眠りに着くのだった。



 ■


 翌朝。一同は一階でまた朝食を取り、宿を出る。


「冒険者組合を探すぞ!」


 一人テンションの高いヴィルトに着いて行き、一同は冒険者組合を探す。


 冒険者組合は基本大通りなどから少し外れた位置に存在する。

 冒険者事態がある種のけもの、鼻つまみ者として扱われるからだ。実際冒険者の中にはならず者も多い。

 だからこそ、人目に余りつきたくは無いけどある程度分かりやすい場所に居を構える。


 ヴィルトが変な方向に行きそうになったので慌ててリアが抑え、リアの案内で三人は冒険者組合に辿り着く。


 冒険者組合の作りは何も変わらない。もはや意識してこう作ってるのかと問いかけたくなるぐらいに変わらない。

 何も変わらないウェスタンドア。酒場と併設された依頼受付所。ガラの悪い男の受付である。


 三人はクエストボードの前に来ていい依頼が無いか吟味する。


「これとか面白そうだな」


 ヴィルトは一つの木札を手に取る。



 ──

 酒場での踊りの披露

 女性冒険者限定。報酬五万ルエ

 ──


「なんか怪しくない?」

「だが報酬が高いぞ。今回の宿代も一気に稼げる」


 ヴィルトは怪しさ等気にせずこれが良いと主張する。


 リアもこいつ魔王だし何かあってもどうにか出来るからいいか、と思ってしまう。思ってしまった。

 リアはこの判断を後悔する事になる。



 ■



 依頼を受けたヴィルトはアンタレスとリアから離れ一人依頼の場所まで歩いていた。

 其処は大通りから遠く離れた寂れた路地の先にあった。

 地下への階段があり、説明された通りならそこだとヴィルトは判断する。

 階段を少し降り、木製のドアに手をかけ中に入る。


(暗いな)


 其処は少し薄暗い場所だ。別に暗視能力を持っていなくとも視界には困らないだろうが、それでも薄暗いと言わざる負えない場所だ。


 中の作りは妙だ。大きな扉が一つと小さな扉が一つづつある。

 受付の横に大きな扉があり、扉は解放されている。

 小さな扉は大扉から離れた位置にある。

 入って来たヴィルトを怪訝な眼で受付の男が見つめている。

 男は清潔感のある男だ。髭も沿ってあるのか無いし、瞳も優し気である。


 受付にヴィルトが赴くとヴィルトは木札を見せる。


「依頼を受けた冒険者だ。踊りを披露するのは何処だ?」


 ワクワクとしながらヴィルトは受付に問いかける。

 ヴィルトは踊りなどしたことが無い。無いくせに自分なら出来るだろうの馬鹿な精神で来ていた。


 受付はヴィルトの全身を嘗め回すように見つめる。

 余りの視線のねちっこさにヴィルトが「どうした?」と問いかける程に。


「いえ。何でもありません。此方に付いてきてください」


 受付はそう言うとヴィルトを連れて行く。

 連れて行くのは小さな扉の方だ。

 受付は扉を開け奥へとヴィルトを連れて歩いて行く。


 其処は舞台裏。ステージの裏側である。


「さて、貴女にはこれを着て踊って貰います」


 受付はクローゼットを開け、一つの服を取り出す。


「……それは服なのか?」


 その服──いや服と言っていいのかわからない──を見たヴィルトは問いかける。


 それは、紐だった。

 いや限りなく紐に見える物、だろう。

 ごく細い紐に陰部だけ隠せればいいだろうと付けられた小さな布。人のサイズによっては丸見えだろう。

 一言で言うのなら、それはビキニであった。しかも極小サイズの。俗にいうマイクロビキニであった。


 普通の者ならこの時点で何かが可笑しいと気づくだろう。こんな格好で躍らせる意味が分からないと。

 だがヴィルトはそういった事に疎いというか無知だ。無知ゆえにこんなものかと考えてしまう。


「では早速着替えてください」

「ここで着替えるのか?」


 ヴィルトは一様リアからある程度女性らしさというものを学んでいる。その知識からすると人前で着替えるのははしたない事だと知っている。


「えぇ。嫌ならこの依頼は無かったことに……」

「いや別にいやではないが。わかった」


 ヴィルトはそう言うといそいそと服を脱いでしまう。

 上の服を脱ぎ、ブラジャーを外し、靴を脱いで靴下を外してズボンを脱いでパンツを脱ぐ。


「これはどうつけるんだ?」


 着け方の分からないヴィルトは受付にそう尋ねる。

 何の羞恥心も見せずに着替えたヴィルトに驚愕の目を向けながら、受付は答える。


「……私が付けましょうか」

「む、なら頼んだ」


 受付の厭らしい視線に気づくことなくヴィルトは頼んでしまう。


 そして受付の男はヴィルトの体を堪能する。必要な事だからとヴィルトの胸を揉みしだく。


 そのことにヴィルトは疑問を抱かない、抱けない。必要な事だと言われたから必要な事なんだと純粋に信じてしまう。


 そしてマイクロビキニを着せられたヴィルトはさっそくと踊りをさせられることになる。


「人生で一度も踊った事が無いが大丈夫か?」

「大丈夫です。そういった需要もありますから」

「そうか」


 妙な事を言う受付の男に疑問を抱くことも無く。ヴィルトは壇上に上がる。


 其処には一本の棒が立っていた。

 俗にいうポールダンスの会場、である。


 其処には既に多数の男たちが居た。

 それぞれ席に座り、やって来た新人であるヴィルトを厭らしい目つきで見る。

 その視線にヴィルトは気づかない。

 部屋はそこそこ広いが、客はまばらといったところだ。席数で言えば百はあるがその二割も埋まっていない。




(……どうすればいいんだ?)


 そして踊った事など生涯無いヴィルトはどうすればいいかわからないといった顔をする。


(と、取り合えずこの棒を使うか)


 ヴィルトは徐に棒に手をかける。

 そのまま力を籠め、己の身体を持ち上げる。

 棒の真横に体が着くようにし、パフォーマンスをする。


 手を放して一回転。ヴィルトはその体を観客に見せつける。


 次は浮遊し、棒に足を着けることでまるで棒を登っているかのように演出する。


「いいぞー嬢ちゃん!」

「脱げー! そのビキニ脱いじまえ!」

「そうだ! 脱げ脱げ!」


 観客の男たちのヤジが飛び交い、ヴィルトに脱ぐよう言い始める。


 えぇ、という目でヴィルトは思わず裏側の方を見る。

 其処にはサムズアップして目線で脱ぐように訴える受付の姿があった。


(まぁ脱げというなら脱ぐか)


 と、何も考えていないヴィルトは紐に手をかけ、ビキニを外してしまう。

 大胆に上と下両方を脱ぎ去り、その裸体を晒す。女性器も晒してしまう。


「いいぞー!」

「綺麗なまんこしてんなぁ!」


 男たちは財布から硬貨を取り出し、ヴィルトに向かって投げつける。


(こ、これが踊りというものなのか)


 そしてヴィルトは間違った学習をしてしまったのだった。

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