今更始めるスキル『パイルバンカー』で異世界ダンジョン攻略ッ!!

黒犬狼藉

プロローグ『墜落』

第1話

 パイルバンカーを愛するのはダメなのか、その問いかけに友人は答えた。


『ダメじゃないけど、使えないじゃん』


 俺は激高した、脳がプッツンだった。

 だからそいつに言い返した、俺もキレちゃったから。


『蛇腹剣も実用的じゃ、無いけどな』


 両方プッツンだった、同時にこぶしが出ていたね。

 そして殴り合いの喧嘩をして、テラスに転がり込み。

 落下して死んだ、それが俺だ。


『……間抜けな死に方ですね、マスター』


 うるさい、別に二人とも転生できたしノーカンだろ!!


 ……はぁ、まぁいい。

 どうせ事実だし、神様のおっさんからスキル『パイルバンカー』をもらったし。

 素材さえあればパイルバンカーを生み出せるスキル、なんて最高なんだ……!!


『その影響で、それ以外の武器を使えなくなりましたケド。ある意味呪いじゃないんですか、マスター』


 うるさい!! 別に最強なんだから問題ないだろ!!

 当てれば必殺、ワンパン最強なんだぞ!!

 これに何の問題があるっていうんだよ、言ってみろ!!


『当たりませんよね? ソレ』


 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。


 えっとぉ……。

 そのぉ……。

 なんていうかぁ……。

 あのぉ……。


『まぁ否定は致しません、私はオーバーライド。ダンジョン攻略を行うサポートシステム、貴方の旅を援助する存在です。すでに起こった問題に口を挟む権限はありません、それよりもこれからを考えましょう。コード816、登録名称【クレア】』


 まぁ、たしかにパイルは単体じゃ弱い部分があるのは間違いない。

 それを否定するってことはパイルを否定するってことだからな、だからこそ俺はその弱さすらも使いこなして見せてやろう。


 意気込みそのまま、俺は駆動軽機体リーンフォースト・エクソスケルトンを起動する。

 ありきたりな言い方であれば宇宙ステーション、この世界風に言えば航宙母艦のカタパルトに両足を固定し発射シークエンスが完了するのを待つ。

 数を数える、心の中で。

 振動が足に伝わってきた、体が震える。

 恐怖と興奮を飲み込み、データエラーがないことを確認し。



 その瞬間は、存外すぐに訪れた。



 うっすらと聞こえる炸裂音、振動が全身に走り遥か高空から地面に向けて射出される。

 第八未開発惑星、惑星『バルガン』へ。

 期待と興奮、全身の毛が逆立ちSF世界へ俺を誘う。

 かつての喧嘩に感謝すらしよう、最高の世界へ俺を誘ったのだから。


『マスターッ!! 予定進路を逸脱しています、マニュアル制御に切り替えてくださいッ!!』


 チッ、ダメだッ!!

 速度が早すぎて粗悪ブースター程度じゃ動きやしないッ!!


『エンジン稼働を最大にッ、マスター!! 射出用保護装置エッグに搭載されている衝撃緩和機能でも半壊は免れませんッ!! 対ショック耐性を!!』


 えーい、ままよ!!

 冒険が始まる前から死ぬとか、絶対ねぇーから!!

 絶対に生き残ってやるぞっ、マジでッ!!


 ドガンッ、と。

 全身を砕く様な衝撃と同時に、無数のエラーが発生する。

 機体は無様に地面を転がり、俺は死に体。

 けれども、確かに。


『マスター、見てください』


 オーバーライドの言うままに、俺は無数のエラーを押し除ける。

 そこには流星の様に降り注ぐエクソスケルトンの群れが、俺と同じ様にこの星を探索せんとする冒険者達がいた。


 綺麗だ、とても。

 ああ、とても綺麗だ。


『私には感情がありません、ですが……。ですが確かに、これは綺麗です』


 その言葉に、少しだけニヤけながら。

 俺はゆっくりと、機体の姿勢を起こす。

 これから迫る忙しい日々を想いながら、俺の活躍を思いながら。


『今更ですが始めましょう、マスター。貴方のスキルで、異世界ダンジョン攻略を』


 もちろん、当たり前だ。

 俺のパイルで、全てを蹂躙してやるよ。

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