第19話「意思の解放──共鳴の代償」

他人の痛みを知ることは、

優しさなんかじゃない。


それは、覚悟だ。

触れて、受け止めて、なお──選ぶ勇気。


──天鏡学館・地下制御塔前。


空は赤く染まり、校舎は黒い蔦に包まれていた。

蔦はコードの形を模し、建物の輪郭を“異界のもの”へと書き換えていた。


蓮司が低く呟いた。


「……ここ、本当に“学校”だったよな」


霞が頷く。「コード拡散装置の中心が、この中にある。時間がない」


ミチルの指先が震える。


「共鳴が……誰かの強い感情を……感じる……」


リカが端末を構えた。


「戦闘準備。二手に分かれましょう」


チームはふたつに分かれ、崩壊した学園内部へと突入した。


──異界領域・旧校舎エリア。


瓦礫が浮遊し、空間が反転していた。

廊下の向こうに立ちはだかる、黒いオーラを纏った男──元・コード適応者。


「選ばれなかった……俺たちの怒りを、あんたらにわかってたまるか!!」


言葉と同時に、空間が歪む。

蓮司とミチルが前に出る。


「言い訳も理由も聞かない。でも──止める」


──異界領域・研究区画。


霞とリカが、コード波動に反応する無人の研究施設を進んでいた。


「ここの適応者、まだ完全には暴走してない。制御できる可能性がある」

「なら、沈静化を試す価値があるわね」


霞が重力波を展開し、リカがパルス分析で干渉。


戦いながら、彼女たちのコードが美しく共鳴していた。


──旧校舎側。


ミチルが暴走者の感情に“共鳴しすぎて”いた。


怒り、孤独、拒絶──

まるで、自分の感情のように胸に流れ込んでくる。


「私……この人の全部が……見えちゃって……

 怖い……」


感応の許容量が限界を超え、視界がにじむ。


(こんなの、私には……耐えきれない……!)


そのとき。


「ミチルッ!」


蓮司が手を伸ばし、彼女の手を強く握った。


「……全部、一人で背負うな!

 感情ってのは、“誰かと”感じるもんだろ!!」


その瞬間、蓮司とミチルのコードが重なり合い、光の波が走った。


霞が遠方で振り返る。


「今の……双子共鳴の、第二段階……?」


──教団本部・分岐路。


紫苑は単独で仮面の元へ向かっていたが、過激派の幹部たちが立ち塞がる。


「もう、あなたに“未来”を託す者などいない」


紫苑は押し黙り、拳を震わせた。


「……俺の理想は……何を生んだんだ……」


──学園・異界中枢。


仮面の声が、空間全体に響き渡る。


「痛みを知る者よ。共鳴は力だ。

 だが、共鳴には“代償”がある。

 自分が壊れても、なお誰かに触れる覚悟があるか──?」


ミチルは、揺れる瞳で言葉もなくその声を見つめていた。


隣には、手を握る蓮司の存在があった。


(第19話・完)


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