第23話

クロスと肩を並べて、地下道を歩きながら周囲の気配を探った。


「反応は?」


「今のところ異常なし。ただし、気配が薄すぎる。周囲に動物もいねぇ」


「……それはそれで不気味だな」


クロスがぼそりと呟く。


「この先、構造が複雑だったはずだ。偵察済みか?」


「半年前までは拠点だった場所だ。だが、最近は手つかず。何がいてもおかしくない」


「そうか」


ミアは黙って俺たちの後ろをついてきてる。表情は引き締まってるが、集中を切らしてない。


「ミア、水は持ってるか?」


「うん、あと半分くらい」


「途中で補給できそうな場所があったら、知らせろ」


「わかった!」


クロスがちらりと俺を見た。


「随分、手間のかかる相棒だな」


「育てる気がねぇ奴は、信用できねぇ」


「……なるほどな」


また少しだけクロスの顔が和らいだ気がした。


「ここだ、要注意地点だ。崩落したホームの上層階に、かつて集落があった」


「封鎖は?」


「途中までだ。奴らの死骸は確認されたが、原因不明でな……」


「感染の可能性は?」


「ゼロじゃねぇ」


ミアが息を呑んだのがわかった。


「マスク装備」


即座に取り出し、装着する。


「ミア、鼻と口、絶対に覆え」


「う、うん!」


クロスが先行してホーム跡へと飛び降りる。


俺もミアの手を引いて着地。


「──……っ」


腐臭が濃い。瓦礫の隙間から、黒ずんだ死体が見える。


「これは……普通じゃねぇな」


「噛まれた痕はない。皮膚も崩壊してない」


「何に殺された?」


「さあな……」


ミアが震えながら口を開いた。


「でも、これ……変だよ、リクト。なんか……」


「気づいたか」


俺も既に気づいていた。死体が、微かに動いている。


「起きるぞ!」


「っ!?」


《気配探知》を最大出力。


死体に見えていたやつらが、一斉に跳ね起きた。


「リビング・デッド……!」


「生体反応なし。だが動く。脳も神経も、別の手段で操られてる!」


「そんなのあり!?」


「この世界ではなんでもありだ!」


クロスが銃を抜いて一体の頭を撃ち抜く。だが、倒れねぇ。


「頭を撃っても駄目か!」


「関節だ、動きの要を潰せ!」


俺はナイフを抜き、膝に一閃。


ガクンと倒れ込んだリビング・デッドが地面に這い始める。


「気色悪ぃ……!」


ミアも恐怖を振り払うように脚を狙い、切りつける。


「ううっ……!」


「ミア、無理すんな!背中下がれ!」


「でも、やれる……!」


ミアのナイフが正確に関節を断つ。俺の教えた通りに動いてる。


「数、十体以上!」


「囲まれる前に抜けるぞ!」


「こっちだ!」


クロスが崩れた通路へと走る。俺がミアの手を引いて飛び込む。


「後ろ、まだ追ってきてる!」


「爆破する!」


通路に設置されてた封鎖装置に導火線をつなぎ、手製の起爆装置をセット。


「ミア、伏せろ!」


導火線に火をつけ、全員で距離を取る。


数秒後──


ドォンッ!


爆発と共に、通路が瓦礫に埋まった。


「っは、っはぁ……」


ミアが肩で息をする。


「無事か?」


「うん、なんとか……」


「お前も、クロスもよくやった」


「……まさか、ここがこんな状況とはな。完全に終わってる」


クロスが唾を吐き捨てる。


「このままじゃ、地下全体が汚染されるぞ」


「地上の拠点化を急ぐ必要があるな。報告に戻る」


「異議なし」


ミアが一歩前に出る。


「わたしも、がんばったよね?」


「当然だ。お前がいなきゃ突破できなかった」


「えへへ……」


ミアの顔が少し赤くなった。


クロスが苦笑する。


「お前ら、いいコンビだな」


「冗談言うなよ」


「本気だぜ」


冗談を交わしながら、俺たちは地下を後にした。

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