第21話

物資を手に入れた俺たちは、再びビルを後にした。


「次、どこ行くの?」


ミアが肩に担いだバックパックを揺らしながら訊いてきた。


「西だ。地下鉄の残骸がある。かつて拠点にしてた連中がいた場所だ」


「拠点……残ってるかな?」


「期待はすんな。ただ、探索はする価値がある」


「うん!」


移動中も気は抜けねぇ。《気配探知》を断続的に使いながら進む。


「リクト、スキルって、すごいよね」


「便利だが、万能じゃねぇ。過信するな」


「……はい!」


ミアの顔が引き締まる。少しずつ、こいつの目に芯ができてきた。


「到着だ」


見えてきたのは、崩落した地下鉄の入り口だった。


「入るぞ」


「うん!」


足場が悪い。瓦礫を踏まないよう注意しながら進む。


地下に降りるにつれて、空気が変わった。


湿気と腐臭、そして──何かの気配。


「……いるな」


「モンスター?」


「いや──人だ」


《気配探知》が捉えたのは三つの人型反応。


「近い。距離、十五メートル。油断すんな」


「わかった」


ミアがナイフを構えた瞬間、前方の影が動いた。


「──止まれ!」


俺が叫ぶと同時に、瓦礫の陰から銃口が突き出された。


「動くな! ここは俺たちの縄張りだ!」


男の怒声。銃を構えたまま、姿を現したのは装甲ジャケットを着た荒くれ者だった。


「敵意はねぇ。通させろ」


「は? 冗談じゃねぇ、ここは──」


「話す気があるなら、下げろ。その銃」


男の目が細まる。


「……なかなか度胸あるな。名前は?」


「リクト・アークス。こっちはミア」


「ふん……見た目の割に、やる顔してるな。俺はハウス。ここの代表だ」


「だったら交渉は早い。拠点を探してる。寝床と最低限のシェルターを貸せ」


「は?」


「対価は払う」


「はっ、どうせ、腐った缶詰か?」


「それと弾薬、ミュータントの素材、偵察情報」


ハウスの目がわずかに動いた。


「──交渉の席ぐらいは用意してやる。ついてこい」


「ミア、行くぞ」


「うん!」


案内されたのは、かつて駅長室だった場所だ。


薄汚れてるが、扉も鍵も残っていて、最低限の防御力はある。


「へぇ……思ったよりちゃんとしてるじゃん」


ミアが驚いた顔で周囲を見渡す。


「人数は?」


「今は俺含めて五人。物資はギリギリ。だから……」


「強奪を考えたか」


ハウスが鼻を鳴らす。


「少しは警戒しろ。だが……あんた、強いな。目が違う」


「必要なら、力は貸す」


「……試しに、明日の外周警備をやってみろ。それで信用する」


「了承だ」


ハウスがにやりと笑い、部屋から出て行った。


「リクト、本当にここ、使っていいの?」


「完全には信用してねぇ。でも、今は選択肢が少なすぎる」


「……うん」


ミアが壁にもたれかかり、深いため息をついた。


「少し休め。交代で見張る」


「ありがと……!」


ミアはバックパックを枕にして丸くなった。


「──さて」


俺は扉の隅に座り、ライフルを構えたまま、眠りにつく気配を監視する。


仲間面して近づいてきた奴らを、何度も見てきた。


今夜も気を抜く気はねぇ。

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