第18話
血と硝煙の匂いが鼻を刺す。
ミアはまだ肩で息をしていたが、目はしっかりと敵を睨んでいた。
「次、どうする……?」
「全速力で撤退する」
「わかった!」
即答だ。ミアはすでにこの世界のスピードに馴染み始めている。
「走れ!」
短く命じ、俺たちは建物を飛び出した。
瓦礫を飛び越え、穴だらけの道路を滑るように進む。
「リクト、後ろ!」
振り向くと、増援の部隊が建物から溢れ出してきた。
「チッ……!」
奴らの動きが、さっきの偵察隊より遥かに洗練されている。
「さすがに数が多すぎるな……!」
「リクト、どうするの!?」
「撒く!」
即座に答える。
「このまま地下道に突っ込む!」
「うん!」
予定していた地下道の入口はすぐそこだった。
だが、その前には金網のフェンスが立ちはだかっている。
「ぶち破る!」
叫びながら、全力で地を蹴った。
金網に肩を叩きつける。ギギギと嫌な音が響いたが、金属は錆びていた。
「もう一発!」
二撃目で金網が吹き飛ぶ。
「ミア、行け!」
「うん!」
ミアが先に滑り込む。俺もすぐ後を追った。
「こっちだ!」
地下道の入り組んだ通路を一気に駆け抜ける。
敵の足音が遠ざかっていく。奴ら、地下道の構造を把握してないな。
「助かった……」
ミアが小さく呟く。
「まだだ」
「え?」
「地下道も安全とは限らねぇ」
すぐに警戒態勢を取る。
暗闇の中、スキル《気配探知》を最大限に研ぎ澄ませた。
「……感じる」
「敵?」
「わからん。だが、近い」
気配は一つ、だが異様に大きい。
「モンスターか?」
ミアが小声で訊く。
「可能性高い」
俺はライフルを構え、音を殺して進む。
すると──
「っ!」
腐食したコンクリの壁を破って、何かが現れた。
「──うわっ!」
ミアが悲鳴を上げる。
現れたのは、人型をしてはいたが、体長三メートルはある異形の怪物だった。
皮膚は赤黒く、骨が露出している。眼窩に光る双眸。
「──大型ミュータントかよ!」
「リクト、これ……勝てるの!?」
「やるしかねぇ!」
即座にスキル《気配殺し》を発動し、死角へ回り込む。
ミュータントは唸り声を上げ、俺たちを見失ったように周囲を引き裂きながら暴れた。
「今だ!」
ミアに合図を送る。
「うん!」
ミアが小さな影となって、奴の脚に飛び込む。
狙いは膝裏。
「やっ!」
ナイフが突き立ち、ミュータントの動きが一瞬鈍った。
「ナイス!」
すかさず俺が距離を詰める。
ライフルを最大火力に切り替え、至近距離から連射した。
バババババッ!
弾丸がミュータントの露出した骨を砕き、肉をえぐる。
「ギャアアアアアア!!」
ミュータントが悲鳴を上げ、暴れ出した。
「離れろ、ミア!」
「わかった!」
ミアが素早く跳び退く。
だが、ミュータントの腕が薙ぎ払われた。
「くそっ!」
間一髪で回避する。
「……硬ぇな!」
ライフルでも決定打にはならねぇ。
「なら──!」
拾った鉄パイプを握りしめる。
ミュータントの足元に飛び込み、パイプを振り抜いた。
ゴギャッ!
膝関節に直撃。鈍い音が響く。
「ぐおおおおおっ!」
体勢を崩したミュータントがよろめく。
「今だ!」
ミアが叫び、もう一度ナイフで膝を裂いた。
「うおおおおおっ!」
ミュータントが悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる。
「──終わりだ!」
全力でパイプを振り下ろす。
頭蓋に直撃。
ぐしゃりと嫌な音がして、ミュータントの体がビクンと跳ねたあと、動かなくなった。
「っは、っは……!」
肩で息をしながら、周囲を確認する。
「──クリア」
「リクト……すごい……」
ミアが呆然と呟いた。
「お前もな。よくやった」
「えへへ……」
力ない笑みを浮かべながら、ミアが俺に寄り添う。
「これで……抜けられる?」
「ああ。あと少しだ」
「よかった……」
ミアがほっと胸を撫で下ろした。
「気を抜くな。まだ何が出るかわかんねぇ」
「うん!」
俺たちは再び走り出した。
この絶望の世界を、生き抜くために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます