第11章『炎の祠への道』

第51話「新たな旅立ち」

アルカディア王都――。


壮麗な魔導塔、その頂にある七賢者の間に、静かな緊張感が満ちていた。


リュシア・フェルディナンドは、ガルド、エルナ、ザックと共に、

新たな任務「水の祠への旅」の最終確認に臨んでいた。


議長席に座るオーディンが、重々しく口を開く。


「今回の任務は、今まで以上に過酷になるだろう。

水の祠は、海に浮かぶ孤島――アクセスも困難だ。

嵐、魔族、そして未知の試練が待っているかもしれない」


リュシアは真剣な面持ちでうなずく。


「……必ず、封印を守り抜いてみせます」


力強い言葉に、オーディンは満足げに頷いた。


会議のテーブルには、今回のために支給された特別装備が並んでいる。


- リュシア専用の剣――《蒼銀の刃》(魔法金属製、微量の魔力でも斬撃を増幅する設計)

- ガルド用の特殊防具――《潮騎士の甲冑》(海の加護を受けた装甲、耐水性と防御力に優れる)

- エルナ用の精霊結晶――《潮音の珠》(海の精霊たちと高次元で交信可能)

- ザック用の魔法通信具――《潮声の耳飾り》(長距離でも仲間と連絡できる特殊通信装置)


それぞれの装備に、四人は目を輝かせた。


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リュシアは剣を手に取り、軽く振るった。

蒼い刃が、空気を裂くように鋭く光った。


「……すごい」


彼女の頬に、かすかな笑みが浮かんだ。


オーディンが、静かに言う。


「君たちに託す。――アルカディア、そして世界の未来を」


リュシアは、深く一礼した。


「必ず……必ず成功させます」


***


会議が終わった後、オーディンの私室に呼び出されたリュシアは、

師である彼と、二人きりの対話の時間を持った。


部屋には、古い書物と魔導具が並び、窓からは王都の街並みが見渡せた。


オーディンは静かに言った。


「……正直なところ、引っかかることがある」


「……引っかかる?」


リュシアが問い返すと、オーディンは頷いた。


「アルカード――やつはただ封印を壊そうとしているだけではない。

封印を『修復させること』に、何らかの意図を持っている気がする」


リュシアは息を呑んだ。


「修復させる……?」


「証拠はない。ただ、封印を巡る流れが、奇妙にスムーズすぎるのだ」


オーディンの眼差しは、深い思慮を湛えていた。


「水の祠の守護者も、これまでとは違う試練を課すかもしれない。

用心しろ。……何より、己を見失うな」


リュシアは深く頷いた。


「はい。必ず、気を引き締めます」


心に、新たな緊張感が宿った。


***


出発の朝。


リュシアは、魔導書院の隔離施設を訪れた。


静養中のレインが、窓際の椅子に座って外を眺めていた。


リュシアは微笑んで近づく。


「レイン、これから旅立つわ。海を越えて、水の祠へ」


レインは驚いたように振り向いた。


「……気をつけて」


その言葉に、リュシアは胸が温かくなるのを感じた。


「ありがとう。帰ってきたら、また話そう」


「……うん。アルカードのことも、少し考えてみる」


まだ完全な信頼には遠いが、

確かに二人の間には、以前にはなかった小さな絆が芽生えていた。


リュシアは、レインに背を向け、静かに扉を閉めた。


***


王都の城門。


リュシア、ガルド、エルナ、ザックの四人は、新しい旅装束に身を包んでいた。


腕には王国の紋章入りの腕章。

背中には旅装備と、特別な装備品。


夜明けの光が、彼らの影を長く伸ばしていた。


「三日後、港町ブルーヘイブンに到着する予定だ」


ザックが地図を確認しながら言った。


「そこから船で、さらに三日の航海」


エルナが軽く頷く。


「海の精霊たちが、きっと道を守ってくれる」


ガルドは剣を肩に担ぎ、にやりと笑った。


「何が来ても、叩き斬ってやるさ」


リュシアは空を見上げた。


――どこまでも澄んだ空。

この先に待つ、広大な海。


「……新しい旅が始まる」


そう、心の中でつぶやいた。


四人は、ゆっくりと歩き出した。


未来へ、希望へ――確かな一歩を。

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