行き当たりばったり
「方針を変える?」
秋迫る村。
執務室に呼んだアンナにルーベンスは決断を伝える。
「秋が近づくにつれて気温が下がってくることを考えると、住居の改修を急ぐべきだと思うのじゃ。
...正直、寝床の隙間風が辛い」
私情を交えながらそう言うと、リラから渡された五千セレカを目の前に置く。
「宝玉が割れてゴブリンの討伐計画が狂ってしまった以上は、これで出来ることを優先するべきじゃ」
「確かにな、五千セレカで家を一から立て直すことは難しいが、隙間風を塞いだり雨漏りを直すことはできるな」
「それとこれじゃ」
そう言って森林地帯の資料を開く。
「この森林に植えられている杉は建築資材に使われているものでな、長年放置されておるから品質自体は保証できぬが、それでもないよりはマシじゃ」
「そうだな、それに伐採自体ならあたし達でもできる。問題はゴブリンだが、アンカラやリラに護衛させれば事足りるか。
待てよ?彼女たちを使えばゴブリン討伐の依頼料も減らせるかもしれないな」
前向きに計画を思案する。
「それともう一つ。終戦で復興が進んでおるが、それに伴って建材が値上がりしておる。
買う以外の方法で建材を安定的に入手する方法を探すべきじゃ」
「となると、林業に力を入れるべきか。木材だけでも家は建てられるからな」
「その辺はおいおい進めていこう。
それにしても、行き当たりばったりじゃな…」
ペンを置いて、これまでのことを振り返る。
クランから渡された宝玉で資金調達を目論んだことをはじめ、たまたま弱体化していた黒天の龍ことアンカラを冒険者にしたこと、そして極め付きは目の前の五千セレカ。
たまたま上手く行っているだけで、何一つ地に足が付いていないことに不安を募らせる。
「何とか、この状態を打開せねばな…」
筆を置き、頭を抱えるルーベンス。
割れた窓から吹く風が彼の髭を揺らす。
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