第13話 諦めさせるってすげぇんだぜ?
次の日の朝、介麿がきっかり時間で起こしに来た。
介麿がトーストを焼いてくれて、俺は眠気眼で洗面所。
急かされながら学ランに着替えて……
兄さんは大学の勉強をしたまま台所の椅子で寝ていた。
誉「あ、今日兄さん丸一日休みか。兄さぁん」
曹「ん?……ん?あ、寝ちゃってたかぁ……ああああああ!!!朝?!朝飯!!今作る!!」
介「おはようございます。台所お借りしました……不用心ですよ。出掛けない際は玄関の鍵を閉めてください」
曹「介麿!あ、すまん!!気をつける。ありがとう……」
誉「兄さん、布団で寝れぇ。今日久しぶりの休みだろーハンカチさんきゅーな!いってきまー」
曹「あ、誉!まだ乾き切ってないだろ!」
誉「いいよーめんどいし、返すだけだし」
曹「返すって?……あ、いってらっしゃい!」
俺は揚々と歩く。
その少し後ろを介麿が歩く。
そういや、介麿は俺の前に出たことは無かったっけ……
いつも後ろに立っていて、
俺の影に隠れるように、
こんなデカ物隠れられねぇけどな、へいへい俺はチビですよー
介「勝田のこと、梵さんに聞いたんだ……今日の朝から遠出してしまうからな」
誉「だから昨日すぐさま帰ったのね、なぁんだ!お前も気になってんじゃん!」
介「まぁな。心配だからな」
誉「心配?」
介「ああ」
俺はピタリと足を止めた。
誉「なんで?」
介「何故だろうな。きっとお前と同じ匂いがするからじゃないか?」
誉「はぁ?俺と?」
介「ああ」
誉「朝から馬鹿は寄せよな。きっも!ははっ本気で言ってるの?」
介「そうだが?」
介麿は嘘をついたことがない。
良いことも、悪いことも。
兄さんの時だってそうだ。
事実でしか言葉を発しない。
誉「気分悪いんだけど」
介「?……体調悪いのか?」
誉「お前の所為だぜ……で、梵さんはなんて?」
介「寺に、来たことがあるそうだ。その時に俺のことを話して同い年なことを知ったらしい。それでいて、仲良くできるように入学前に連絡があったんだと……女人の格好はしていたらしいな。梵さんは少し悩ましい顔をしていたが」
誉「悩ましい……?……ふぅん、俺も色々考えてさ……変な点がたくさん浮かんだんだよねぇ……兄さんも悠蔵のこと知ってたし」
介「……曹さんが?」
誉「うん、このハンカチ見覚えがあるって言ってさ、昔バイト先で女の子と会ったことがあるって……んでこの刺繍を見つけたんだ。yuだって書いてあるだろ?同一人物だと思うんだけどねぇ」
介「そうか……」
誉「でもなんでさ?なんでアイツ……わざわざ男の格好してんだ?ああやって突っかかるのも、もしかして女ってことバレたって……勘違いしてるんじゃねぇか?」
介「分からん」
誉「だよなぁ……ま、でもこのハンカチ返したら俺はもう手を引くぜ?」
介「珍しいな」
介麿が少し口角を上げる。
普段笑わないやつが笑うと超怖いのな。
誉「お前に殺されんのだけは御免なんだよ!」
俺達が着く頃には変わらない取り巻きが出来ていて、その真ん中には何事も無かったかのように勝田悠蔵が座っている。
ハンカチ……放課後でいっか……
なんなく授業が終わって、帰り道。
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