第3話魔物叩いたら地固まりましたわ〜

火の精霊フェニックスとの契約から半年。アリス=ガーランド――有栖川蘭子は、村の領主として目まぐるしい日々を送っていた。かつては火山のふもと、フェニックスの不毛の土地と恐れられ、どの国も領有を避けたこの村。統治者不在の荒れ地だったが、アリスの手腕と慈愛の炎の力で、まるで奇跡のような変貌を遂げていた。


畑は黄金色の麦で埋まり、灌漑設備が水を絶やさず、市場には遠くの商人まで訪れる。村人たちは慈愛の炎の恩恵で不老の若々しさを取り戻し、笑顔が絶えない。アリス自身も、20歳の頃の黒髪ロングの美貌に戻り、炎をまとった白いドレスはまるで女王の風格。村の中心に建つ領主館――質素な木造だが、彼女の気品で輝いて見える――で、アリスは今日も書類に目を通していた。


「ふふ、作物は順調、市場も繁盛! この村、マダムの力で社交界にも負けない楽園になりますわ! おーっほっほ!」


だが、楽園にも影はあった。フェニックスが火山から去り、アリスの体に宿ったことで、周辺の魔物が活発化していた。かつてフェニックスの威光に怯えていた魔物たちが、火山の抑止力を失い、村の周辺に出没するようになったのだ。普段はアリスや、慈愛の炎で強化された村人たちが軽く撃退していたが、最近は魔物の数が増え、村人たちの不安も高まっていた。


「やれやれ、アリス、魔物のせいで忙しいな。マダムらしく優雅に統治するんじゃなかったのか?」


心の中で、フェニックスがすれた口調でぼやく。アリスは領主館の窓から村を見下ろし、優雅に微笑んだ。


「ふふ、フェニックス、魔物ごとき、マダムの拳で一掃しますわ! それに、村を守るのも高貴な務めですのよ! ごめんあそばせ!」


そんなある夜、村の外れで不穏な咆哮が響いた。ランタンの明かりが揺れ、子供たちが怯えた声を上げる。村の猟師、トムが領主館に駆け込んできた。額に汗、目には恐怖が宿っている。


「アリス様、大変です! 魔物の群れが……今まで見たことのない規模です! オオカミ型、ゴーレム型、ドラゴン型まで!」


アリスは書類から顔を上げ、優雅に髪をかき上げた。


「ふむ、魔物の群れですって? ふふ、マダムとして、村の平和を守る好機ですわ! トム、村人たちを広場に集めなさい!」


「で、ですが、アリス様、こんな数は……!」


「ごめんあそばせ! わたくしの拳を信じなさい! おーっほっほ!」


トムの不安を振り払うように、アリスはドレスを翻し、広場へ向かった。フェニックスの炎が彼女を包み、まるで戦女神のような輝きを放つ。心の中で、フェニックスが呟く。


「相変わらず無茶だな、アリス。だが、面白い。見せてもらうぜ、お前の無双っぷりを!」


---


広場には、村人たちが集まっていた。猟師や農夫は手に槍や鍬を握り、女性たちは子供たちを抱きしめる。長老が杖を突き、震える声で言った。


「アリス様、我々も戦います。慈愛の炎のおかげで、体は若い頃のまま。この村は、皆で守るんです!」


若い母親、リナが涙目で叫んだ。


「アリス様が来てから、村は幸せになりました。生贄の呪縛もなくなった……。だから、私も戦います!」


村人たちの決意に、アリスの胸が熱くなった。彼女は高貴に微笑み、宣言した。


「ふふ、皆様の心意気、マダムとして誇りに思いますわ! 共に戦い、この村を楽園として守りましょう! おーっほっほ!」


その時、村の外から地響きが近づいてきた。闇の中、赤い目が無数に光る。オオカミ型の魔獣が唸り、岩石でできたゴーレムが地面を揺らし、翼を持つドラゴン型が空を覆う。村人たちが息をのむ中、アリスは一人、群れの前に立ちはだかった。


「魔物ども! この村はアリス=ガーランドの領地! 不届き者は、マダムの拳で成敗しますわ!」


先頭のオオカミ型が飛びかかってきた。だが、アリスは慈愛の炎をまとって疾風のように動く。有栖川流合気道の投げ技で、魔獣を地面に叩きつける。バキッ! 骨が砕ける音が響き、魔獣が「ギャウ!」と悲鳴を上げる。慈愛の炎の効果で死なないが、痛みはガッツリ。魔獣は恐怖で後ずさる。


「ふふ、ごめんあそばせ! 次はお行儀よくしなさい!」


ゴーレムが巨大な拳を振り下ろすが、アリスは軽やかに跳び上がり、ゴーレムの頭部にパンチを叩き込む。ズドン! 石の巨体が粉々に砕け、村人たちが歓声を上げる。ドラゴン型が火球を吐くが、炎はアリスを癒すだけ。彼女は空に跳び、ドラゴンの首を掴んで地面に叩きつけた。


「まあ! ドラゴンなんて、マダムのアクセサリーにしかなりませんわ! おーっほっほ!」


村人たちも奮起し、慈愛の炎で強化された力で魔物に立ち向かう。猟師トムが槍でオオカミを突き、リナが鍬でゴーレムを叩く。誰も死なない戦場は、まるで壮絶な舞台のよう。アリスは戦いながら、村人たちに叫んだ。


「皆様、素晴らしいですわ! この村は、わたくしたちの絆で守ります!」


魔物の群れは次第に戦意を失い、ついに逃げ出した。広場は歓声に包まれ、子供たちが「アリス様〜!」と駆け寄る。アリスはドレスの裾を整え、優雅に微笑んだ。


「ふふ、マダムの村に敵はありませんわ。ごめんあそばせ!」


フェニックスが心の中で笑った。


「やれやれ、アリス、お前ってやつは……。だが、この村、確かに悪くないぜ」


---


魔物襲撃の後、村はさらなる繁栄を迎えた。噂は瞬く間に広がり、アリスの名は王国中に響き渡った。「無双の麗人」――その異名は、魔物の群れを一掃した女領主として、冒険者や貴族たちの間で語り草になった。商人たちが村を訪れ、交易が盛んになり、村は目に見えて大きくなった。


ある日、領主館で、アリスは長老や村人たちと会議を開いていた。長老が感慨深く言った。


「アリス様、この村はかつて不毛の土地、フェニックスの呪われた地と呼ばれ、どの国も手を出さなかった。それが今、こんなに繁栄するなんて……」


リナが目を輝かせて提案した。


「アリス様、この村に名前をつけましょう! アリス様の名前にちなんで、ガーランド領なんてどうですか?」


村人たちが「いいね!」「ガーランド領、最高!」と盛り上がる。アリスは一瞬、驚いたが、すぐに高笑いした。


「ふふ、ガーランド領! なんとも高貴な響きですわ! よろしくてよ! この村は、わたくしアリス=ガーランドの名の下、社交界にも負けない楽園となりますわ! おーっほっほ!」


その夜、村はガーランド領の誕生を祝う宴で沸いた。ランタンが輝き、音楽が響き、子供たちが踊る。アリスはドレスで村人たちと笑い合い、星空の下でフェニックスと語った。


「フェニックス、ガーランド領、どう思います?」


「ふん、派手な名前だな、アリス。だが、お前らしい。この村、俺も気に入ってるぜ」


「ふふ、貴方もマダムの魅力にやられた一人ですわね! これからも、わたくしと一緒に、この領地を守りましょう!」


だが、繁栄の裏で、新たな影が忍び寄っていた。ガーランド領の力を欲する者たちが、動き始めていたのだ。アリスのマダムライフは、さらなる試練を予感させていた。


(第4章へ続く)

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