【白き月、蒼き祈り】

月花心花

【序章:黎明の章 ─始源の一節─】

──記録の巻頭より抜粋。


『黎明の章:始源の一節』


遥か古(いにしえ) この星(ほし)にては

巨きなる鱗の獣ら 地を駆け空を裂きて 棲まいし時代あり

空は蒼く 海は深く 森はなお 月光をも覆うほどに満ちて

世は まだ眠れる記憶の裡(うち)に 在りき


然るに──

天の狭間(はざま)より一つの星 火を帯びて堕ち来たる

響きは虚空(そら)を裂き 光は昼を焼き

その身 蒼海の底深くへと沈みぬ


これを人は災厄と謂(い)ふ

然れど 我が家系に伝わるは異なりき


──それは 目覚めの刻(とき)なり


水と炎と 星々の血潮との交わりによりて

語り継がれし者 《ネファリス》 の血

初めて鼓動を得たり


脈打つは 時を超え

祈りのかたちとなりて 静かに残りぬ


記されし名は いつしか霞み

残されし声も 風とともに消えゆけど──


魂は還り 巡る


そは 我らが受け継ぎし記録の真(まこと)なり


忘却の深き淵にてなお

祈りは絶ゆることなく 静かに響き続けん


いまこそ語られむ。

白き月、砕けし刻(とき)より編まれし、

永き祈りの記録(ものがたり)を──

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