第34話 最終決戦! 愛と友情と物理で世界を救う! マジ最強っしょ!
「スペシャルギャラクティカマグナムパンチ!」
ウチ、愛内ゆきぽよが叫びながら繰り出した、蒼い光を纏った渾身の拳が、ラスボス・ヴァルザードの黒い魔力障壁…『混沌の鎧』とかいう厨二なやつに、真正面から叩き込まれた!
バキィィィィン!!
今までで一番デカい衝撃音が、崩れかけた黒曜の祭壇に響き渡る!
ヴァルザードの黒い障壁に、蜘蛛の巣みたいなヒビが入った!
「なっ…馬鹿な! 私の混沌の鎧が…この小娘ごときの力で…!」
ヴァルザードが、初めて焦りの声を上げる。
よし、効いてる!
「おっさんのそのキモい鎧、まとめて粉砕してやんよ!」
ウチは、さらに力を込めて、連続でパンチを叩き込む!
一発殴るたびに、障壁のヒビが広がっていく!
「調子に乗るな、小娘がぁ!」
ヴァルザードも、負けじと黒い宝玉…『混沌の核』の力をさらに引き出して、反撃してくる!
ドス黒い雷が降り注ぎ、地面から無数の闇の刃が突き出し、空間そのものが歪んでウチを押し潰そうとしてくる!
マジで、世界の終わりみたいな光景!
祭壇の天井や壁も、ボロボロ崩れ落ちてきてるし!
「うおぉぉぉ! やるじゃん、おっさん! でも、ウチは負けねー!」
ウチは、ヴァルザードの猛攻を、紙一重でかわしながら、それでも止まらずに拳を叩き込み続ける!
蒼いオーラが、ウチの全身から吹き上がり、まるで炎のように揺らめいている!
(なんで、こんな力が出んだろ…ウチ、ただのギャルなのに…)
戦いながら、ふと思った。
確かに『身体強化 極』はチートスキルだけど、今のこの力は、それだけじゃない気がする。
(ミカと、また渋谷でプリ撮って、タピオカ飲んで、笑い合いたい…)
(アルが、あんな悲しい顔すんの、もう見たくない…)
(ゴルドーさんやエリアナさん、宿屋のおばちゃん、リベルタの姉御や情報屋の兄ちゃん…みんなに、また会いたい…)
(あと、王都の新作コスメもチェックしたいし、限定スイーツも食べ逃せないし、可愛い服ももっといっぱい欲しいし!)
そーゆー、しょーもないけど、ウチにとってはちょー大事なこと。
そーゆーのを全部、このキモいおっさんに邪魔されたくない!
ただ、それだけ!
「貴様のような下賤な存在に、世界の真理が分かってたまるか! 力こそ全て! 絶望こそ真実! 私が、この腐った世界に、真の秩序を与えてやるのだ!」
ヴァルザードが、なんか難しいこと叫んでるけど、正直、何言ってんのか全然わかんない。
ただ、こいつが、ウチの大事なものを全部、ぶっ壊そうとしてるってことだけは分かる!
「うるせー! あんたの理屈なんて、知ったこっちゃねーんだよ!」
ウチは、ヴァルザードの闇の波動を、蒼いオーラを纏った腕で無理やり弾き飛ばし、さらに距離を詰める!
「ウチの力は、難しいことなんかじゃねえ! 友達と笑って、好きなもん食って、オシャレして…そーゆー、ちょーシンプルなモンなんだよ! あんたみたいな、一人よがりの自己満野郎に、ウチらのハッピーな世界、壊されてたまるか!」
蒼い光が、さらに強く輝きを増す!
それは、仲間たちの想い、ウチ自身の願い、全部が一つになった光!
「これぞ、愛と友情と希望と、ついでにテンアゲバイブスを込めた…ウルトラスーパーギャラクティカ…クラッシュ!」
ウチは、ありったけの全部を込めた、最後の一撃を、ついにヒビ割れたヴァルザードの混沌の鎧…その中心に、叩き込んだ!
ゴォォォォォォン!!!
今までとは比較にならないほどの、凄まじい衝撃!
ヴァルザードの黒い障壁が、ガラスみたいに粉々に砕け散った!
そして、ウチの拳は、ついにヴァルザード本体の胸部に、深く、深くめり込んだ!
「ぐ…が…はっ…!?」
ヴァルザードの体が、大きく弓なりにしなる。
そのフードがはらりと落ち、初めて、その素顔が露わになった。
それは、かつては高貴だったのかもしれないけど、今は歪んだ憎悪と絶望に染まった、痩せこけた老人の顔だった。
「こ…こんな力が…あるというのか…? ただの…人間の小娘が…この私を…」
ヴァルザードは、信じられないといった表情で、ウチを見下ろす。
その瞳には、驚愕と、ほんの少しの後悔…みたいな色が浮かんでるように見えた。
「ありえ…ない…私の…私の理想が…世界が…」
ヴァルザードの体から、黒い粒子が霧のように立ち上り始める。
胸に握りしめていた『混沌の核』にも、ヒビが入り、禍々しい光が弱まっていく。
「…終わ…りだ…」
最後にそう呟くと、ヴァルザードの体は、完全に黒い霧となって、風に掻き消えるように消滅していった。
同時に、『混沌の核』も、パリン、と音を立てて砕け散り、邪悪な魔力は完全に霧散した。
「………」
後に残されたのは、ボロボロになった祭壇の広間と、呆然と立ち尽くすウチだけ。
…いや、一人じゃなかった。
「…勝った…の?」
ウチは、力を使い果たして、その場にへたり込みそうになる。
視界が、霞んできた…。
(あー…マジで、疲れた…)
意識が、遠のいていく…。
最後に感じたのは、誰かに、優しく抱きとめられた感触だった。
崩壊した祭壇の隙間から、夜明けの光…いや、朝日が差し込んできていた。
新しい世界の始まりを告げるみたいに、キラキラと輝いて。
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