美少女Vtuber(男)はじめました!スキル「世界一可愛い声」で借金2億男子高校生、V界を駆け上がります!

流石ユユシタ

第1話 絶望から希望の道へ

2040年、配信業がとんでもないブームとなっていた。



配信の形態は多岐に渡り、もっとも人気のあるジャンルと言えば……



【ダンジョン配信】であると言える。ダンジョンと言われる20年前の日本に急に現れた謎の現象。



 ダンジョン、迷宮とも言われるがこの中にはモンスターや宝物などがわんさか存在しており、その内部を冒険し、それをネットに流すのが大流行しているのだ。




『──えっと、宝箱はどこかなー』

【ねるるちゃん! 右にある!】

【今日もかわいい】

【さいこうだな】





 スマホ画面の中にはダンジョンと言われる場所を散策する、冒険者であり配信者の美少女が配信されている。そして、そこには毎秒ごとに大量のコメントが上から下に流れていく。





「お兄ちゃん、またダンジョン配信見てるの?」

「おう」

「えー、この子水着みたいな格好でダンジョン行ってるの?」



 俺、幸木勝利さちきしょうりがダンジョン配信を見ていると、妹の幸木永遠さちきとわが俺のスマホを覗き込んでいた。



「お兄ちゃん、この子より私の方が可愛くない?!」

「そうだな!」



 家のベッドのソファで寝転がりながら、配信を見ている俺の目の前で一度くるりと彼女は回って見せつけてきた。


 ふふ、と不的な笑みを浮かべ自信のありようとこれでもかとアピールしている。


 割と自分の容姿に自信があるタイプの妹である。

 

 確かに可愛いのは認めよう。白銀のように輝かしい髪の毛、それをツインテールにしているようだ。


 今日はツインテールにしているが、髪型は偶に変わる。しかし、頭の上のアホ毛だけは絶対に変わらない。


 それでいて容姿はすごく整っているのだから余計に面白い。左目に涙ほくろが少しあり、両目ともに綺麗なルビーとも言える碧眼。


 これは噂だが、永遠の通っている中学校で1番美人と言われているらしい。俺は高校1年生だから、今の現状を詳しく知らないが、去年同じ中学校に通っていた時は紹介してくれという話が多かった。


 無論、全て断ってやったがな!!! 





「でも、ダンジョン配信ってすごい人気なんだね」

「そうだな」

「Dチューバー、私はあんまり詳しくないからなー。Vチューバーとかの方が好きだし」

「逆に俺はVチューバーを知らない」



 Vチューバー、バーチャルのモデルを動かしながら声を当てて配信する配信形態のことだったよね?


 俺は詳しく知らないから。でもダンジョン配信者をDチューバーと言う言い方はVチューバーからの流れらしいよな。


 だって、ダンジョンが出来たのは20年前で、それより前に既にVチューバーは配信をしていたらしいし。


 



「お兄ちゃん、この人なんで水着でダンジョン入ってるの?」

「客寄せのためだろ」

「ええー、こんなエッチなのが好きなんだ」

「いや、俺はこの配信者の剣捌きを見てるんだ。見てくれ、この見事な捌き方」

「ふーんそうなんだ」




 まさこれがダンジョン配信。冒険者と言われる資格を持つ者はダンジョンに入り、配信をする。シンプルだがこれがとんでもなく人気で、年収億単位がわんさかいる。



 だからこそ、若者は夢を持ちダンジョンに挑む。



 ダンジョンには夢がある。配信者にならなくても、ダンジョンには有力で希少な物資が沢山あるからだ。強い冒険者であるだけで年収が高いからな。




「さて、そろそろ今日も冒険に行くか」

「おっと、お兄ちゃん。私を忘れてもらっては困るぜ。この幸木永遠、今日がついに初ダンジョン潜りだからね」

「そうだった、案内するぜ。このダンジョン探索歴3年のベテランがな!」

「さんきゅー! めっちゃ心強いぜお兄ちゃん!」






 ダンジョン配信は儲かる。そして、ダンジョンには夢がある。



 ただ、こんなのは才能がある奴だけ限定の言葉なんだ。





 ──俺みたいな凡人冒険者には夢などないのである。






 そして、妹と二人で家を出た。すると永遠はスマホに似ている電子板を見せつけた。その板は黒色であり、表に画面が取り付けられている。



「見てよ。私の【冒険者ライセンス】」

「ほう、かっこいいなぁ」

「でしょ? これ私のランクとかステータスが表示されるけど、非表示にできるの?」

「出来る」



──画面には


ランク【E】


名前 幸木永遠

レベル1

攻撃:4

防御:8

俊敏:6

魔力:13

【スキル因子】




 永遠の情報が顔写真と一緒に表示されている。一瞬で自分の情報を確認したり、相手に表示して身分証としても活用ができる。ただ、すぐに出るのが苦手な人も居るからね。





「お兄ちゃん、それで今日行くダンジョンはこのステータスで大丈夫?」

「問題ない。俺のレベル1のステータスの時より上だ」

「あ、や、やったぁ? 喜んで大丈夫?」

「兄の威厳を気にしてくれてありがとう。気にせず喜ぶと良い」

「そ、そう?」




 まるで、地雷を踏んでしまった子供のように妹は俺のことを気にしてくれている。


 まぁ、俺が冒険者として才能がないと言われて、馬鹿にされてるからだろうけどね。




「才能ないと言われるのは俺も原因ある。だから気にするな」

「あ、うん、じゃ……気にしないね!」

「おう」

「でも、お兄ちゃん。私も15歳の年になってから魔力覚醒してるから才能ないのは一緒だよ!!」

「そうだな!」



 魔力は20年前位に人間に宿り始めたらしい。徐々にその数を増やして、人間ほぼ全員に宿り始めたとか。


 ただ、そこから次の世代の赤子は生まれた時から持ってる子が殆どである。それ故に後天的に魔力覚醒をするケースはほぼないんだよなぁ。



 だが、妹の永遠は15歳の歳、今年の4月に急に覚醒した。これはどうしてなのだろうか……




「そ、そうだな!? お兄ちゃん気を遣ってくれ!!」



 ダンジョンは資格を持ち、13歳になる中学1年生であれば誰でも入ることができる。つまり未成年で学生でも入れるのがダンジョンである。


 まぁ、大体は13歳からダンジョンに挑むが永遠は15歳で初ダンジョンだ。なので俺は心配なので今回は付き添うことにしている。




「よっしゃ、ライセンスをゲートに通したら早速行くぞ」

「ほい!」

「ダンジョンは国が管理しており、入るにはゲートと言われる門にライセンスを通さなくてはならないというのは知ってるな」

「それは資格試験でばっちりだぜ! ところでお兄ちゃん、なぜゲートを閉じる必要があるの?」

「資格試験受けたのでは?」

「復習も兼ねてね、ついでにお兄ちゃんを試してるのさ」



 まぁ、中でモンスターや宝箱がわんさか存在してるからな。勝手に入られたり、外に出られりしたら困るからだけど。


 わざわざ、説明する必要があるかどうか……





「ダンジョンは希少物資が多いからな。勝手に取られたら困る」

「ほほう、正解だ。やりよるな。お兄ちゃん」

「ふふふ、無論だ。あ、ちょうど良い、あれを見てくれ」




 目線を向けると、一人の男性冒険者が宙に浮いてるカメラに対して話しかけていた。



「もしかして、あれってダンジョン配信?」

「そうだな。他の通行人はモザイクがかかるようになってるから心配しなくても良い」

「なーんだ。私の可愛さが世界に轟く可能性があったのに杞憂であったぜ」




 俺は配信をしないが、配信をする人も沢山いる。そりゃ皆んな人気者になりたいのだ。



 気持ちはすごいわかるが……なんか特別な【スキル因子】とかステータスでないとそういうのって難しいんだよね。




「あの人、人気者なのかな? サインもらったら売れるかな?」

「転売目的ダメだ。ただ、多分人気ではないだろうな」

「ほほう? その根拠は?」

「【ダンジョン名】
はじまりの洞くつ。それがこれだ。本当に初心者しか来ないし、正直飽きるほど配信されてる」

「あ、そうなんだ。私はDチューバーは詳しくないんだよね」

「企業なら、もうちょい別の場所にするな。最近だと人工ダンジョンもあるしな。罠多めとかにしたりしてリアクションを楽しんだり。それなりにハラハラしたいなら少し上のダンジョンに挑んだりする」

「ほぇ」



 まぁ、何事も例外ってのはいるけど。ただ、ここは飽きるほど見られてる場所だ。


 ならば、ここで配信するのは俺的に言えば嗅覚がないと言える。


 それなりの人気がある奴らならここは選ばないだろう。ここは初心者がダンジョンに慣れる、レベル上げ、多少の小遣い稼ぎの場所だ。





「俺も3年前位にここで配信してたからな。その時もちらほらはいたけど、それでも伸びてるやつはいなかった」

「流石はお兄ちゃん。詳しいね」

「まぁ、ダンジョンで成り上がりたいなとは思っていたからな」




 ただ、成り上がるには高難度ダンジョンに入ったりする必要があるが俺の場合は弱すぎて入れない。



 なので俺はちまちまダンジョン潜って小遣い稼ぎをする毎日である。ダンジョンには希少物質があるので割とお金はもらえる。



 まぁ、普通のアルバイトと同じくらいだけども。希少物質も毎回落ちてたりするわけじゃないしね。





「そっか。よーしお兄ちゃんの分も私が成り上がって、借金返したるやーい!!」

「たるやーい? どんな語尾?」

「ノリで言った、超可愛くない?」

「可愛い」




 なんだかんだで俺の精神が持っているのはこの子のおかげだ。


 

「お兄ちゃん、あと借金いくらだっけ?」

「2億だな」

「2億かぁー。でも私が成り上がればすぐにでも……」



 俺達の両親は俺が小学6年生、永遠が小学5年生の時に両親の会社が倒産した。


 そして、その借金を返すために難しいダンジョンに挑んで死んでしまった。



 だから、あまり高難易度のダンジョンにコイツを入れたくはない。





「正直、俺が返すつもりだけど」

「お兄ちゃんだけには任せないよ。家は私達のだから」


 

 両親の借金は相続放棄すれば……やはり良かったか。そうすれば永遠がダンジョンに挑む必要もなかったか。



 ──俺が



【親との思い出の家をどうしても潰されたくないから。放棄したくない……】



 俺があの時馬鹿な選択をしたからな。だから、俺が払うことにしてた訳だけど。借金は2億くらいあるけども、両親の知人から借りてたということもあり、ギリギリ待ってもらっている。


 

 俺が働いて、俺が返すつもりだったけど……




「よーし、お兄ちゃんあれスライムだよね! 倒して良い?」

「まぁ待て。先にお兄ちゃんの剣技を見せる!」




 見てろよ、お兄ちゃんが借金を返して見せる!! 


 目の前には水色のぷよぷよしているスライム。モンスターの中ではマジで弱いモンスターである。なので才能なしの俺でも剣を持ってれば、サクッと討伐できる。



 ここはカッコつけて、心配ないくらい強いと見せなくては……



「おりゃ!!」

「おおー。お兄ちゃんかっこいい! あ、やっぱりモンスターって魔石落とすんだね。教科書通り」




 永遠は倒したモンスターから落ちる魔石を拾った。それを興味深そうに眺めている。





「へぇ、これが魔石。それで、これを集めて換金かぁ。あと、経験値も貰えるんだよね? どんな感じ?」

「経験値はあんまり溜まっている感じとか分からないかな。レベルアップしたら、冒険者ライセンスが音を鳴らして教えてくれる」

「ほぇー、お兄ちゃんはレベル9だもんね! 沢山倒して追いつけるように頑張らないと!!」

「ふ、すぐにレベル10にしてやるさ」




 レベル10は特別なラインなんだよなぁ。だからこそ、早く到達したい。


「レベル10になったら【スキル因子】貰えるもんね、楽しみだね!」

「おうさ」

「……あ、あのね、お兄ちゃん。その、やる気を削ぎたい訳じゃないけど、もし、スキル因子がダメっていうか、戦闘向きじゃないならさ……」




 あ、急に気まずそうな顔になった。確かに永遠の言いたいことが、これから先に何を言おうとしているのかわかった。




「冒険者、辞めたほうがいいと思うんだ……借金は私も返すために冒険者するから。お兄ちゃんは危ない場所で働いて欲しくないんだ」




【スキル因子】



 ステータスがレベル10になると生まれる概念だ。これによって、冒険者としての命運がかかっていると言っても過言ではない。



 これが戦闘向きか、珍しいか、雑魚か。それによって冒険者として大成するかどうか決まる。




 だから、俺にとっては……俺みたいな才能がない冒険者としては最後のチャンスなんだ。





「ほ、ほら、お兄ちゃんはその、料理とかも上手だし。危険なことして……パパとママみたいに死んで欲しくないんだ」

「……うん、でもさ。俺もまだ分からないから。スキル因子が強力ならそこから強力なスキルが生まれるんだ。生まれ続けるから。だから、まだ、その答え言えない」

「……だよね、うん。変なこと言っちゃった! ごめんね!」




 通常、レベル10は半年くらいで到達する。だけど、俺は3年かかってもまだ到達していない。だから、才能がないと言われてる。



 永遠だって色々言われてるんだろう。後天的に自分が目覚めたことと俺の現状を重ねられて、借金だって俺は2億ある。



 だから、だからこそ……俺は……逆転したい。







 冒険者に俺はまだなれてない





 本物になりたい。沢山稼いで、借金なんてすぐ返して、妹と真の意味で俺はあの家に住みたい。まだ、あの家は借金の担保なんだ。



 だから……俺は逆転したい。全部ひっくり返してやりたい。妹だって馬鹿にされてるんだぞ……だから!! 



 絶対逆転してやりてぇんだ




「お兄ちゃん?」

「おう、どうした」

「いや、ごめん。お兄ちゃん、絶対冒険者として成功するよ! さっきの剣捌き惚れ惚れした!」

「ふふ、当然だ」


 

 いけない、俺は飄々としていなくては……。




「おっと、次にスライムがまた来たな」

「おおう来たね」

「俺がまだ、倒す」





 また、俺は剣を持って飛び出した。そして、スライムを倒す。



 いつも倒してレベルが上がる時を考える。もし、それで変なスキル因子だったら……



 もう、挽回する可能性がない……ちまちまここで稼いで返す事もできる。でも、それでは意味がない。



 すぐにでも速く……あの家を俺は欲している。妹を俺から解放したいのだ。






──レベルアップしました





「ッ!!!!!!」

「え? お兄ちゃん、今のって……」







 スライムを倒した瞬間、俺の冒険者ライセンスが音を鳴らした。



 体中から冷や汗が出るのを感じる。




 それは焦りだった。ついに現実と向き合う時がやってきてしまったという焦り。今までならいつか俺は逆転ができると妄想していた。



 それが、今日終わる。手が震えている、喉が急に乾いた。




 ──恐る恐る、ライセンスを見た。

 



 


ランク【E】


名前 幸木勝利

レベル10

攻撃:17

防御:15

俊敏:19

魔力:23

【スキル因子】

『世界でとびっきり1番の美少女声』

【スキル】

『世界でとびっきり1番の美少女声』

・世界で1番可愛い女の声が出る

・自身には通常時と同じように聞こえる。

・魔力消費する























「終わった……」

「お兄ちゃん……」















 終わってしまった。現実は残酷な現実を突きつけてくる。やばい、涙が出てきそうになる。








『いや、借金2億って……笑えないわ』

『冒険者、3年やってレベル10に行けないなら才能ないって』

『そろそろ、冒険者とかじゃなくて普通の進路考えたら?』





 やばい、泣くわけには行かない。ここで泣いたら俺が被害者みたいになっちまう。泣きたいのは俺ではないだろ。



『──妹、可哀想じゃない? 普通に自分勝手すぎない? 両親もそれは望んでないんじゃないの?』




 それが1番効いた言葉だったな。やばいな、フラッシュバックが……次々と頭の中に過ぎってしまう。





「お兄ちゃん……」

「……悪い! 才能なかったわ!! けど、俺はめげないから。営業職とかは沢山稼げる場所もあるし、就職頑張るぜ! ボランティアとか言って今のうちからさ、内申書を上げて」

「うん」

「だから、心配、いらないからさ!」

「うん」






 やばい、惨めだ。こんな事なら最初から借金なんて背負わなければ良かったのに。でも、空元気と見抜かれても俺は……




 自然と、元気な声が出なくなった。




「……ごめん」

「お兄ちゃんが謝る事じゃないって。もうさ、一緒に頑張ってこ? 大丈夫、最悪夜逃げしちゃおうぜ?」





 妹に慰められてる、ハグされて慰めてられている。惨めすぎて、心が折れそうになっている。





「……ごめん」

「もうー、謝らないで! それよりさ、今日は美味しいの食べよ! これからこれから! これから新しい道を探せばいいんだよ!! 私も一緒に探すから!」

「……そうかな」

「そうだよ! 私もいる!!」

「……そう、だな」

「そうそう!!! 今日は帰ろ? 一緒に寝てあげる」





 永遠に慰められて少しだけ元気が出た。そうだな、確かにまだ別の道がある。本当は冒険者とかで成り上がりたい気持ちはあった。英雄とか呼ばれたかったんだ。



 でも、それが無理なら仕方ない




「あ、お兄ちゃん。ライセンス落としちゃってる」





 放心状態になっていたから、ライセンスを地面に落としてしまったのに気づいてなかった。それを永遠が拾った。その際にステータスが見えたのだろう。





「『世界でとびっきり1番の美少女声』……?」




 まるで意味わからないのを見たかのように妹がスキル因子の名前を告げた。スキル因子がその後のスキル全てを決める。



 これが俺の3年の結果だ……。認めるしかあるまい





「……どんな声なの?」

「え? さ、さぁ」

「……もし、嫌じゃなかったら聞かせて欲しい。ちょっと気になるっていうか……配信とか見てるからさ。色んな声の人っているじゃん?」

「……まぁ、一回くらいは使うか。使わずに終わるのも勿体無いし」






それに、夢を終わらせるにはちょうど良い。これは最悪な形で終わらせたほうが次への踏ん切りもつくだろう。





「じゃあ、お兄ちゃん。私におはようって言ってみて」

「──

「……は?」





 スキル使えてるのか? 俺には普段の声と同じに聞こえるんだけど……いや、確か周りと自分の聞こえる差があるんだったか? どちらにしてもゴミスキルだな。




「じゃ、帰るか」

「……も、もう一回!」

「え?」

「も、もう一回! 次はお姉ちゃんって言って!!」

「え? 嫌だけど……」





 食い気味でこちらにお姉ちゃと呼べと要求してくる妹。おい、もう諦めたんだ。これ以上は使いたくないんだ。




「最後に一回だけ!!」

「……一回だけだぞ」

「うん! ついでに大好きも入れて!!」

「……一回だけな?」

「うん!!」




 まぁ、一回だけなら……ふ、ここまで惨めな結果だと諦めもつくもんさ。








 おえ、気持ち悪い。俺には自分の声に聞こえるんだっての。こんな惨めなことを二度とやりたくない。




「──お姉ちゃんも大好きだよ!!!!!」

「え? だ、大丈夫? 俺がずっとかけてきたストレスが限界突破したのか? ご、ごめんな」

「いや、そんなことないよ!! お兄ちゃん!!」

「あ、そう?」

「うん!! ごめんってスキル使って言ってくれたらストレス消える!!」

「ストレスあるのかないのかどっちなんだ?」





 よくわからないけど、これ随分と気に入ってるようだ。まぁ、ごめんというくらいなら言ってあげなくもない。





「私が全部悪い!!!」

「え?」

「こんな可愛い女の子に謝らせるなんて……ごめん、全部私が悪いよ!! 全部悪い!! 最近卵が高騰するのも私のせいなんだ! この子が住みやすい世界を作らないと!!」

「だ、大丈夫?」





 本当に大丈夫だろうか? やはり2億円の借金を持っている兄の妹という事実が彼女の心に負担を……





「お兄ちゃん!!!」

「なに?」

「この才能を活かさないのは損だよ!!」

「才能? これ冒険者で使える?」

「違うよ!! Vチューバー、これは絶対美少女Vチューバーとして売り出せば最高に売れる!! Vオタの私がいうよ!! 間違いない!!!」





 Vチューバー……? ヴァーチャルで配信をするあのVチューバーのことだろうか?



 しかも、美少女って言った? まさか、このスキルを使って俺に女の子のフリをして配信しろって言ってる?




「まさかとは思うけど、俺に美少女のモデルつけて、女の子のフリして配信しろって言ってる?」

「正解、流石はお兄ちゃん。理解が早いね」

「……いや、そういうのはちょっと」

「借金とかあるからそれ言ってる暇なくない?」

「……」

「あ、ごめん。でも、本当にこれは売れる!!」





 食い気味だ。でも俺……そういう女の子のフリするっていうのは抵抗があるんだけども。




「あ、えと……」

「お兄ちゃん。私達家族の人生がかかってるんだよ!! これで借金をパッパと返して、私は結婚したいんだ!!」

「あ、結婚か。そうか、俺が借金あったら永遠も結婚しずらいか……」

「まぁ、あってもするつもりでもあるけど」

「そうか……相手誰?」

「さぁ? 誰でしょう? 秘密。でもね、お兄ちゃん、これはチャンスだよ。絶対に売れる!! この可愛さは最高!! エロいASMRとかも売れそう!!」




 待て待て待て。俺にエロいASMRとかやらせようとするな。





「いや、そういうのはちょっと」

「お兄ちゃん、エロい声だして」

「無茶言うなよ」

「お兄ちゃん、借金絶対返せる! 耳かきASMR出してこう!!」

「出してかないって」

「じゃ、配信はできるよね。それで軌道にのったら出そう!! エロい声」





 どんだけエロい声を出させたいんだろうか。これは……永遠の傾向から言うとかなり断るのが難しい。



 基本的に譲る精神があるんだが、ここまで前のめりだと正直断るのは無理に近い。それにここまでの圧は見たことがない。








「お兄ちゃん!! 取り敢えず、家帰るよ!!! これは来たー!!! お兄ちゃんはやっぱりすごかったんだ!!!」

「え、あ、ちょっと!?」








 急に永遠が俺の手を引いて走り出した。その時、俺の勘違いかもしれないが、少しだけ永遠は泣いているように見えた。



 でも、笑顔だったから勘違いかもしれない。















◾️◾️






 2040年、6月20日。




 ヴィクトルナと言う名前の個人勢Vチューバーが現れた。



──【世界でとびっきり1番の美少女声を持ってる、Vチューバーです】




 そんなタイトルで静かに、配信始まった。














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