第4話 ドナドナ
このあいだのクルクル貴族からどれくらいの時間が経っただろう? 体感的には2〜3ヶ月は経ったと思う。
「クソッ! どうして売れないんだ! 魔法も使わない、言葉も話せない……。維持費がかかるただのゴミじゃないか!」
まだ売れる気配のない俺に痺れを切らしたのか奴隷商の男は足で檻をガシガシと蹴ってくるが俺自身に害は無いのでシカトする。
「いずれ王国を牛耳るであろう大公からの頼みとはいえ、こんな負債にしかならないガキを買うべきじゃなかった……」
蹴るのに疲れた奴隷商の男は檻に腰を下ろし皮袋を開き、何かを数えている。
「コイツの維持費で大公から貰った金貨3枚も残り1枚か……。そのあいだは大公との約束もあるから手は出さないがマイナスになる様なら殺すか臓器を売るか」
ぉうっ! どうやら俺の処分の仕方を考えているらしい! 正直、こっちの世界にも未練は無いし、転生が可能なら早く殺してほしい、 むしろ殺せ!
「くくくっ、怖いか? 怖いよな?痛いの嫌だもんな?」
檻に腰をかけている奴隷商の男は俺が怖がっていると思っているのか笑っているが全く怖くないし早く殺してほしい。この世界に俺を転生させた神は、さぞ慌てているだろう何せ転生させた子供が全く生に無頓着でリセットを望んでいるんだから……。
「チッ、全く怖がってねぇじゃんかよ……。はやくこのクソガキが泣いて縋りついてくる姿が見たいぜ」
うん、そんなことは無いな、むしろリセットしたいから早く殺してほしい。
「ウッ……。店主、店主は居ますか?」
店先から幼い女の子の声が聞こえ奴隷商の男は声のする方へ向かって行く。
どーせ俺は売れ残るだろうし寝てようかな? でも寝てると檻をガシガシ蹴られたり棒で叩かれて五月蠅かったりするから嫌なんだよなぁ〜。
「彼があの国賊の子供ですか?」
普段は貴族や自分の息のかかったお得意様しか入れたことがない奴隷商が今まで見たことのない俺より歳下の様な女の子と護衛の様な女性をこの場所に連れてくるとは思えない……。ということは相当な貴族の令嬢か……。めんどくさいから相手にしないでシカトしてよう。
「国賊の子、貴方何か重要な物は持っていませんか? 最近城の中が少し慌ただしくしていて、もしかしたら貴方が国賊のメンバーリストなどを空間魔法で収納しているのではと睨んでいるのですが……」
有るには有ります。ただそれを素性の知れない君に見せるわけにはいかないし多分彼女が見たら俺と同じような目に遭うと思う。何故って? それは彼女の後ろからこっちを見つめる奴隷商の目がめちゃくちゃ血走ってるからね……。たぶんこの女の子に見られたら大公含め、俺を貶めた奴らにとって都合が悪いんだろう……。
「うぅ〜ん手詰まりですわ!! いったい誰が国家の敵なのです!! 彼なら何か知っていると思ったのに!!」
だから君の後ろの敵だと思われる奴隷商が血走ってますよぉ〜。たぶん国家の敵は大公含めた権力者ですよぉ〜。
「どうしましょう! 何か有ると思ってきたのに、完璧な肩透かしでしたわ!」
さすがにこれ以上、奴隷商を刺激するのはマズそうだ……。
勉強して覚えたこの世界の文字で彼女にコンタクト取ってみるしか無いか……。
【店主 敵 リスト有る 馬鹿なフリして俺を買え】
店主に気づかれないよう、女の子の護衛のおかげで店主の死角になる地面の砂に文字を書いて、袖を引っ張り地面を見せると同時に文字を消す。
女の子は理解出来たのか驚いた顔をしたあと頷き、俺を購入すると言って護衛の女性が懐から皮袋を取り出し、1枚で金貨50枚分の価値が有ると言われる白金貨を2枚手渡していた……。
「とりあえずこの国賊の子供は私が生まれてきたことを後悔するくらい痛ぶりますがお金は払いましたし、どうしてもいいですわよね?」
そういうと同時に蹴ってくるが全く力が籠もってない痛くない蹴りだ……。
「えぇ、どの様にしようが姫様のご随意に」
お金が余程嬉しいのか一瞥もせず白金貨を眺めながらニヤニヤしている。
「分かった、では帰るぞ国賊」
そういって俺を蹴ってくるが全く痛くない。
「ンンッン ンン、ンン」
分かった はい、はいって言ったつもりだけど相変わらず言葉が出ない。
コミュニケーションが取れるか前途多難だ……。
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