第11話

「じゃあ、とりあえず【リサイクルボックス】の中身をざっくりと見ていきましょうか…」


【リスト】スキルのおかげで、異空間の【リサイクルボックス】に眠る膨大なアイテム…いや、ゴミの山を把握できるようになった。

その中には、以前回収したロックゴーレムや、身に覚えのないカースドールやスライムといった無機物モンスターもリストアップされている。


「まさか、モンスターまで回収できるとはな…」


改めて【リスト】でロックゴーレムの項目を見る。

あの時、死ぬかと思ったロックゴーレムが、今は異空間に眠っている。


「ちなみに、このモンスター達ってどうなってると思います?」


カメラに向かって問いかける。

当然俺は以前試した時に結果を知っているわけだが視聴者の反応も見てみたいわけで…

【リスト】からロックゴーレムをイメージし【リサイクルボックス】に触れる。

配信画面には、俺が異空間から何かを取り出そうとしている様子が映っている。


『レイトさん何出すんだ!?』

『生きたまま回収してるんだよね?』

『こいつできるぞ!?』

『期待!期待!』

『おっさん、何する気だよ!』

『テロか?やんのか!おぉん?』

『動くのか!?』

『ロックゴーレム!』

『マジでか!?』

『見たいけど怖い!』

『まさかのジャンク屋が召喚配信!?』


コメント欄が盛り上がる中、異空間の渦から、あの巨大なロックゴーレムが現れ始めた!


『うおおおおお! 出たあああああああああああ!』

『ゴーレムだあああああああああああ!』

『なんで!?』

『回収してたのかよ!』

『マジでモンスター回収スキルだったのか!?』

『怖すぎ!』

『動くのか!?』

『やばいって!』

『逃げてええええええ!』

『セーフティエリアだぞここ!』

『おっさん逝ったな!』

『配信切るなよ!』

『ギルドに通報!』

『アンチ湧いてきたなwww』

『まぐれだろ!』

『どうせ失敗する!』


コメント欄が無駄に盛り上がっている。


「動く? 動かない? 答えは………!」


今のところ、ロックゴーレムは静止している。

前回取り出した時と同じ状態だ。

回収すると活動停止するのだろうか?

それとも、まだ動く準備をしていないだけか?


もう一度動かないロックゴーレムに【ジャンクメトリー】を試してみる。

巨大な岩の塊に手を触れ、スキルを発動。



『…シンニュウシャダ―…』

『…シンニュウシャダ―…』

『…シンニュウシャダ―…』


ロックゴーレムの穏やかな思念が流れる。

自分にはイメージとして流れているのだが視聴者はどうだろうか?


「今、【ジャンクメトリー】ってスキルを使ってるんですが、皆さんにはどう見えます?」


『思念読んでるの!?』

『何も』

『おっさんが体育座りのゴーレムを触ってるカオスな図』


「そうか…流石にこれは俺にしかわからないんですね…ちなみにこのゴーレムは

冒険者に出会う度(シンニュウシャダー)と言って追いかけ回すようですね。」


『…ハイジョスル?…』


「あ、思考が追いついて来たようです。(ハイジョスル?)だそうです。」


『モンスターの記憶!?』

『ゴーレムにも心があった…?』

『意外な効果!』

『いや、ハイジョスルって…』

『逃げてレイトさん!』

『早くボックスに戻して!』

『感動したけどそれどころじゃない!』

『おっさん早く!』

『セーフティエリアなのに!』

『ギルドに通報!』


コメント欄が動き出したゴーレムに気づき騒ぎ始める。


「オッケーオッケー、前回と一緒です。あ、心配しなくても大丈夫ですよ

この後の対処は前回試してみて問題ありませんでしたから。」


【廃品回収】!!


歪みと共に、立ち上がりかけたロックゴーレムが、再び俺の目の前で消滅した。

異空間の【リサイクルボックス】へ送られる。


「……というわけで、ダンジョン内で放置されている、所有していない状態であれば壁、天井、空中問わず回収できるっぽいんですよね。」


『ビビらせんなし!』

『通報!通報!』

『あれ?まてまて!永久機関!?』

『通報しますた!』

『どゆこと?』

『あっ!出す>回収>出す>回収!!』


「ん?永久機関?どういうことです?」


あまりにも気になるワードにドローンに向かい質問する。

確かに出して回収するのは繰り返せるが…


『【ジャンク屋】の熟練度ってどうやって上げるかわかってる?』


「それは…今のところ不明ですね。でも確かにダンジョン内の掃除を始めてからスキルの熟練度が上がってる感じはしますね。

スキルの効果範囲や回収する感覚が鋭くなるというか…言葉での表現は難しいのですが…」


『他の天職でも普通はスキルの使用で熟練度が上がっていくのは知ってるよね?』

『ってことおっさんなら【廃品回収】を使えば熟練度が上がるってこと?』

『いや、この場合スキル全般だから【リサイクルボックス】【リスト】【ジャンクメトリー】も対象のはず』

『【リスト】は流石にたいしてあがらんでしょ』

『対モンスターに対するアクションが熟練度上がりやすかったような』

『だからゴーレムを出しても暴れないなら、出す>回収>出す>回収で延々熟練度が上がるのではないかと』

『間に【ジャンクメトリーも入れるといいかも】』


「おぉ…皆さんありがとうございます。ちょっと試してみますが…絵面が地味そうなのでホントにちょこっとだけ…」


【リサイクルボックス】!!【廃品回収】!!

【リサイクルボックス】!!【廃品回収】!!

【リサイクルボックス】!!【廃品回収】!!

【リサイクルボックス】!!【廃品回収】!!


『ナニコレ』

『俺達は何を見せられているんだ…』

『体育座りのゴーレムがシュールすぎる』

『いや、まぁやれとは言ったけどさぁ…』


「流石に1体の出し入れじゃ効率が悪そうですね…ちょっと待てよ?確か【リスト】に…」


ふと【リスト】にカースドールが大量にあったことを思い出す。


「あった、あった…こっちでやってみましょう」

【リサイクルボックス】!!


ドサドサドサッ!


音を立てて現れたのは数十体のカースドールだった。

手のひらより少し大きい人形達がギシギシと動き出す。


「できた!!……のはいいけどゴーレムより動き始めるのが早いですね…」


【リサイクルボックス】内にある複数のものが取り出せるかを試してみたがうまくいったようだ。

本格的に暴れられると困るので急ぎ回収する。


【廃品回収】!!


歪みが現れると人形達は吸い込まれるように消えていく。

少し離れた所に転がったカースドールも瞬間移動のように歪みに消えていった。

確かにモンスターのほうが普段のゴミ回収より違和感が強い気がする。

そして何度か繰り返してもそれが変わることがなかったので初回のみなどの制限はなさそうな感じもする。


「いけるいける、もう少し試してみますね。」


【リサイクルボックス】!!【廃品回収】!!

【リサイクルボックス】!!【廃品回収】!!

【リサイクルボックス】!!【廃品回収】!!

【リサイクルボックス】!!【廃品回収】!!

【リサイクルボッ……うっ!…


『どうした!?』

『MP切れ!?』

『おっさん無理すんなー!』

『レイトさん大丈夫です?』



【ニコイチ】ジャンク品を組み合わせてアイテムを作る



「いえ…体調とかではなくてですね……新しいスキル【ニコイチ】が使えるようになりました。

これは…ジャンク品同士を合成してアイテムを作るとありますね…何が作れるんでしょう?」


『ニコイチだと!?』

『合成スキル!?』

『何を合成するんだ!?』

『知っているのか雷…』

『いや、しらん!!』

『ってかスキル成長早すぎねぇ?』

『思った!』

『禿同』

『禿同!』

『禿同!!』

『だから髪の話はよそでやれと』

『で?おっさん、やんのか?やれんのか!?おぉん?』

『危ないって!』

『逃げてええええええ!』

『セーフティエリアでやるな!』

『ギルドに通報するぞ!』

『まぐれだろ!』

『どうせ失敗する!』

『アンチ湧いてきたwww』


「よし…やってみよう! 今日のメインイベントは…!【ニコイチ】の合成実験でーす!」

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