第28話 月夜の潜入任務! 消えた学園長と図書室の秘密!(後編)
ぐぅぅぅぅ~~~~きゅるるるるる~~~~っ!!!
静まり返った禁断の地下書庫に、狸谷ぽこさんのお腹の虫が奏でる、あまりにも場違いな大音量の交響曲! 俺、風間ハヤテと猫宮レイさんの顔面からは、サーッと血の気が引いていくのが自分でも分かった!
「…ん? 今の音はなんだ?」
書架の向こうから聞こえてくる、怪しい男たちの低い声! 足音が、確実にこちらへ近づいてくる! 万事休すか!?
(ど、どうする!? このままじゃ鉢合わせだ! ぽこさん、頼むから何か…いや、この狸娘に機転を求めるのが間違いか!?)
俺がパニック寸前で硬直していると、レイさんが素早く動いた!
「風間くん、あれを!」
彼女が指差したのは、書庫の隅に積まれた大量の古い巻物と、その近くにある小さな通気口。
「衝撃を与えて巻物を崩し、埃を立てて撹乱しますわ! その隙に通気口から脱出を!」
さすがレイさん、咄嗟の判断が早い!
「ぽこさん、やれますか! あの巻物の山、思いっきり!」
「お、お腹が空いて力が出ないでござる~」
「これをクリアしたら、学食の『夏限定!特盛りうな重』を奢ります!」
「合点でござるーーーーっ!!!」
食べ物が絡むと、この狸娘の潜在能力は底知れない! ぽこさんは目をギラつかせると、助走もつけずに巻物の山に猛然とタックル!
ドッッッッッシャーーーーーーン!!!
凄まじい轟音と共に、巻物の山が崩れ落ち、一瞬にして書庫内は猛烈な埃と古文書の紙吹雪に包まれた!
「な、なんだ!?」
「こらっ! 何事だ!」
男たちが咳き込み、混乱している声が聞こえる! 今しかない!
「行くぞ!」
俺たちはレイさんが示した通気口へ向かってダッシュ! …って、狭っ! 大人一人がやっと通れるくらいのサイズじゃないか!
「レイさん、先に行ってください!」
「あなたたちこそ、早く!」
レイさんが猫のようなしなやかさで通気口に滑り込む! 続いて俺も! 問題はぽこさんだ! あの豊満な胸が引っかか…
「ぽんぽこー!」
意外にも、ぽこさんは何の苦も無く、むしろ勢い余って俺の背中に激突しながら通気口を通過! …タヌキって、狭いところも得意なのか!?
通気口の先は、どこかの倉庫のような場所に出た。背後からはまだ男たちの怒声が聞こえてくるが、なんとか直接の遭遇は避けられたらしい。
「はぁ…はぁ…助かった…のか?」
「ええ、どうやら。しかし、あの男たち、一体何者なんですの…?」
レイさんが息を整えながら呟く。
俺たちは、その後も警備の先生に見つからないよう細心の注意を払い、命からがら寮へと戻った。時刻はとっくに午前三時を回っている。疲労困憊だ…。
「…で、結局、学園長先生はどこにいるでござるか?」
ぽこさんが、持ち帰った(というか、混乱の中でいつの間にか握りしめていた)古文書の欠片を齧りながら(こら!)、首を傾げる。
「それが分かれば苦労しませんよ…」
俺たちは、あの地下書庫で聞いた男たちの会話と、レイさんが記憶していた巻物の内容を照らし合わせることにした。
「『鍵となる娘』…『祠の力』…そして『闇鴉(やみがらす)』という組織名…」
レイさんが眉を寄せる。
「闇鴉は、かつて存在したとされる過激な忍集団ですわ。目的のためなら手段を選ばず、数々の禁術にも手を染めたとか…まさか、現代にまでその残党が?」
「そして、あの巻物に描かれていた祠…林間学校で見た、あの不気味な祠と酷似していました。河童が言っていた『気味の悪いもんが出る』というのも、この闇鴉と関係があるのかもしれません」
俺の脳裏に、あの薄暗い森と、古びた祠の光景が蘇る。
「鍵となる娘、というのが一番気になりますわね。一体誰のことなのか…」
レイさんの言葉に、俺はハッとした。まさか…ぽこさん…? 彼女の出自は謎に包まれているし、あの規格外の身体能力や、時折見せる不思議な力(食べ物に変化するアレとか)は、普通の人間(狸?)のものとは思えない。
俺がぽこさんに視線を向けると、彼女は「むにゃ…うな重…」と幸せそうな寝言を呟きながら、俺の肩に寄りかかって完全に寝落ちしていた。…こいつ、こんなシリアスな状況でよく寝れるな!
「…どちらにしても、学園長がその闇鴉に囚われている可能性は高いですわね。そして、あの祠が何らかの鍵を握っている…」
レイさんの推測は、おそらく的を射ているだろう。
「俺たちだけでどうにかできる問題じゃなさそうですね…犬飼先生に相談してみましょうか」
俺がそう提案すると、レイさんは少し考えた後、頷いた。
「ええ、それが賢明かもしれませんわ。先生なら、何かご存知かもしれませんし…何より、あの狸娘がこれ以上厄介事を引き起こす前に、手を打つべきですわ」
その視線は、すやすや眠るぽこさんに向けられていた。…まあ、その意見には全面的に同意だ。
翌朝、俺たちは犬飼先生に、昨夜の出来事(一部脚色と隠蔽あり)と、闇鴉や祠についての情報を報告した。先生は黙って俺たちの話を聞いていたが、その表情はみるみるうちに険しくなっていく。
「…そうか、やはり奴らが動き出したか…」
先生の口から漏れたその言葉は、俺たちの推測が間違っていなかったことを示していた。
「この件は非常に危険だ。お前たちはこれ以上深入りするな。学園長は我々教師陣が必ず取り戻す」
犬飼先生はそう言って俺たちを下がらせようとしたが、その目には、隠しきれない焦りの色が見えた。
「ですが、先生! 俺たちにも何かできることがあるはずです!」
「そうでござる! 学園長先生は、拙者にもよくお団子をくれた、優しいお爺ちゃんでござる!」(いつの間にそんな交流が!?)
「わたくしたちの力が必要ならば、いつでも!」
俺とぽこさん、そしてレイさんまでもが、珍しく声を揃えて食い下がった。
犬飼先生は、しばらく俺たちの顔を順番に見ていたが、やがて深いため息をつくと、重々しく口を開いた。
「…分かった。だが、無茶はするな。いいな?」
その言葉は、俺たちへの信頼か、あるいは諦めか…。
こうして、俺たちの日常は、再び非日常へと引きずり込まれることになった。消えた学園長、暗躍する謎の組織「闇鴉」、そして鍵を握る「古い祠」。これから一体、どんな騒動が待ち受けているというのか。
「とりあえず、まずは腹ごしらえでござる! うな重! うな重!」
…まあ、どんな状況でも、この狸娘の食欲だけはブレないようだが。
俺の胃痛は、新たな事件の予感と共に、早くも警報レベルに達し始めていた。学園の平和と、俺の平穏な日々(あと財布の中身)は、一体いつになったら訪れるのだろうか…。
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