双子の高校生は見習い陰陽師

@KuReKo151

第1話 双子の高校生は見習い陰陽師

 放課後のチャイムが鳴ると同時に、教室には一気に解放感が広がった。放課後のチャイムが鳴ると同時に、教室には一気に解放感が広がった。

 笑い声と椅子の引かれる音の中…


「くかー……」


 机に突っ伏して盛大に寝息を立てる双子の弟・日吉麻斗の姿があった。


「また寝てたのかよ日吉〜!」

「進学初日から全開だな〜」  


 麻斗を茶化しながら教室を出るクラスメイトと入れ替わるように入って来て、麻斗を見下ろすのは双子の兄・日吉優斗。


「……寝るのは昼休みだけにしてくれよ。放課後だよ」


 優斗が呆れたように言うと、麻斗はぴくりとまぶたを動かし、のろのろと顔を上げた。


「……あれ、もう放課後?」

「進学早々のオリエンテーションで寝るのってどうなの」


 優斗の呆れた声も気にせず麻斗はバッと立ち上がった。


「やった、ゲームタイムだ!帰ってゲームしよう!」

「おい、宿題があるだろ」

「細かいことは気にすんなって。今日は早く帰ってレイドに……」


 言いかけたところで、優斗のスマホが震えた。見ると、見慣れた名前──柊宗一郎、叔父からのメッセージだった。



> 【前に俺が張った久御山神社の結界が反応してる。お前らで行け】

【詳細は帰ってきてから】


 優斗は眉をひそめ、スマホを麻斗に見せる。


「……やっぱり、今日もだ」

「はああああ!?またかよ柊のおっさん!どんだけ俺ら便利に使ってんだよ!」

「仕方ないよ、最近こういうの多いし…急がないと」


 麻斗はぶつぶつと文句を言いながらも、鞄を肩にかけた。


「マジでブラックバイトより酷くね……?」

「ほら、文句言ってると置いてくよ」


 そんな兄の軽口に、麻斗は「ちぇっ」と舌打ちして、教室を出ていった。


放課後の騒がしさを抜けた後、校門をくぐって通学路を歩き出すと、麻斗はようやく少し気を引き締めたようだった。


「にしてもさ、せっかく今日は家帰ってレイド回そうと思ってたのに……」


 ぶつぶつ言いながら鞄を肩に引っ掛け、スニーカーの先で道端の石を蹴飛ばす。その隣で、優斗はスマホを操作しながら、淡々と確認していく。


「柊叔父さんが言ってた“久御山神社の結界”って、たしか前に一度張り直した場所だよね。半年くらい前に。」

「え、あのとこか?やだなーあそこ、蚊多いしさー……」

「……そういう理由?」


 優斗がため息まじりに呟くと、麻斗は腕を組んでウンウンと頷く。


「っつーかさー、前もあったよな?古井戸んとこの払ったとき。俺だけ蚊に刺されまくったやつ」

「……ああ、あの時。結局、井戸の底に封じられてた“念”が原因だったんだっけ」

「そうそう!あん時も俺が前に出て、優斗は後ろで術式組んで……って、なんか毎回そのパターンじゃね?」

「そういう役割分担でしょ」

「納得いかねー!俺ばっか刺されるのおかしいだろ!」


 麻斗が騒ぐのを横目に、優斗は少しだけ口元を緩めた。


「……でも、文句言いながらも、前には出るんだよね」

「おうよ!退魔担当は俺だからな!」


 軽口を叩き合いながらもふたりの歩幅が揃いはじめ、自然と会話が途切れた時。

 彼らの表情から、わずかに“学生”の色が引いていく。

 街灯がぽつりと灯りはじめる夕焼けの下。  ふたりの足取りが、神社という“異常”へと向かう。

 このあと彼らが向かうのは、怪異のうごめく神社――そう、物語はここから始まる。


 ◆ ◆ ◆


 夕暮れの神社の鳥居の前に2人の青年が立っている。彼らは顔も声も瓜二つだが、彼らの正反対な性格を象徴するように少し違う点もある。優斗は整った髪型に、きっちりと制服を着て背筋を伸ばしながら神社を見据え、眼鏡を指であげた。一方、麻斗は崩れた制服と寝癖のついた髪、鳥居の柱に身を預けてふわぁと大きなあくび。

 2人は陰陽師見習いとしてこの神社の怪異を祓うべく鳥居の前にいた。

 この日も、優斗は古びた鳥居の前に立ち、結界を張るための術式を精密に組み上げていた。指先から淡い光が放たれ、空気が静かに震える。


「麻斗、勝手に動くなよ。ここの霊気、尋常じゃない。少しでも術式が乱れるとやばいことになる」


 優斗の声は落ち着いていたが、額には汗が滲んでいた。彼の周囲では、黒い霧のようなものが蠢き、まるで彼を飲み込もうとするかのようにうごめいていた。

 麻斗はぼんやりと空を見上げながら、優斗の言葉を右から左に聞き流していた。


「わかってるってー。兄貴が結界張ってる間は、俺はオトリになってりゃいいんだろ?」


 麻斗はそんな軽口を叩きながらも、その全身にはうっすらと光がまとい始めている。まるで彼自身が武器であるかのように。


 双子の弟・日吉麻斗は、生まれつき退魔の波長を持っていた。異形や霊に対して、彼纏う波長そのものが攻撃となる力だ。しかしその力は、感情や気分に左右されやすく、出力は一定ではないのが欠点。

 対して、双子の兄・日吉優斗は、逆に惹魔体質であり、異形を引き寄せてしまう特異な霊的性質を持っていた。そのため、普段から幽霊や怪異に絡まれやすく、対抗するために、勉強を怠らず、術式や結界術に長けている。

 つまり、この双子は互いの欠けた部分を補い合うようにして、奇妙な怪異事件に対処してきたのだった。


「…くるぞ」


 優斗が静かに言った瞬間、鳥居の奥、境内の闇の中から、不気味な影が姿を現した。怪異が姿を変えて飛びかかる瞬間──


「うおっ!速っ……!」


 麻斗が身を引いた刹那、麻斗の脳内に思念が届く。物心ついたときから2人の間で交わされる特別なもう一つの能力。


(優斗!右後ろ、壁際に誘導できるか!?)

(了解。次の瞬間、そっちに結界張る)


 ──わずか1秒足らずのやりとり。言葉では到底間に合わない連携が、麻斗の拳に確信を宿す。

 バッ!

 麻斗が半歩引いて誘導した先、ぴたりと広がる結界の光。

 そこに追い詰められた怪異に──


(優斗、動き見えてるか?)

(ああ、正面から来る。結界張るから、まだ飛び込むな)


 ほんの一瞬、互いに視線を交わすだけで足元の霊気がざわめく。

 ぐにゃりと歪んだ腕、頭部が溶けかけたような顔。常人なら直視すらできない異形だ。


「よっしゃ、俺の出番だな!」


 麻斗の拳を纏う光、退魔の波長に、目の前の不気味な影がぐらりと揺らぐ。


「この影、絶対優斗に惹き寄せられてるだろ!」

 苛立つように叫びながら、麻斗は駆け出した。


「仕方ないだろ、僕の体質なんだから!」


 優斗も怪異を外に出さないように結界を維持したまま、冷静に返す。だがその声には、どこか焦りが滲んでいた。

 影はまっすぐ優斗に向かって蠢き、手のようなものを伸ばそうとする。

 その瞬間──!


「させるかよ!!」


 麻斗の拳が、一閃。

 眩い退魔の波長が軌跡を描き、影の腕を叩き落とした。黒い霧がジュウ、と音を立てて蒸発していく。


「へへ、効いてんじゃん」


 にやりと笑った麻斗に、影が怒りのような叫びをあげた。空気がビリビリと震える。


「麻斗、気をつけろ!こいつ、まだ──!」


 優斗が声を張り上げた次の瞬間、影が姿を変える。幾本もの足のようなものを生やし、地を這う獣のような形態へ。

 そして、一気に麻斗へと飛びかかった!

 影の獣が飛びかかる刹那、優斗は素早く印を結んだ。 


「──『展開・迅速結界』!」


 優斗の周囲に幾何学模様の光が広がり、瞬時に術式が組み上がる。放たれた結界の壁が、麻斗と影の間に割り込むように現れた。


(いま遮った。5秒だけ稼げる)

(5秒もいらねえ──ぶち抜く!)


 麻斗の拳に、退魔の波長が収束する。

 ドンッ!

 影の突進が結界にぶつかり、鈍い音が響く。空気が弾け、優斗の眼鏡がズレるほどの衝撃。

 だが、結界は破られなかった。


「助かったぜ、兄貴!」


 麻斗は振り返りもせず叫び、結界の隙間をすり抜け、影に向かって駆ける。拳にはさらに強く、眩い退魔の波長が凝縮されていた。


「行け、麻斗!」


 優斗が声を張り上げる。

 兄弟だけに許されたテレパシーが、同時に麻斗に届いた。


(今なら通る!)


 麻斗はにっと口角を上げると──  


「うおおおおおっ!!」


 渾身の拳を叩き込んだ!

 バゴォンッ!!

 退魔の波長が炸裂し、影の獣が断末魔のような叫びをあげながら霧散していく。

 空気に漂っていた黒い霧も、徐々に晴れ、夜の境内に静けさが戻った。


「もう終わったよ、兄貴」


 麻斗が拳をぶんぶん振りながら、優斗に声をかけた。優斗は術式を静かに解きながら、境内をぐるりと見渡した。霊気のざわめきは収まり、嫌な気配も感じられない。

 ──どうやら、完全に祓い終えたらしい。


「…ああ。もう大丈夫だな」


 優斗が眼鏡をクイッと上げて答えると、麻斗は「よっしゃー!」と両手を上げてガッツポーズ。しかしその直後、優斗はちらりと弟に目をやり、ため息をついた。


「まったく、お前、もう少し慎重に動け。さっき、あわや結界ごと巻き込む勢いだったんだからな」

「へーへー、悪かったな!でも最終的に勝ったんだからいいだろ!」


 麻斗は笑いながら鳥居に背中を預け、ぼりぼりと頭を掻く。その無頓着さに、優斗は肩をすくめた。

 ──こんなふうに、二人は生まれたときからずっと、背中合わせに生きてきた。

 一方は、退魔の力を生まれ持ちながらも感情に振り回される無鉄砲な弟。

 もう一方は、怪異に好かれすぎる体質ゆえ、嫌でも冷静に在らざるを得なかった兄。

 ふたりの"異能"は、対照的でありながら、どちらも欠かせないものだった。


(…この能力ちからがなかったら、俺たちはとっくに死んでたかもしれない)


 そんなことを胸の奥で呟きながら、優斗は夜空を見上げた。

 しかし、ふいに──ふわりと、冷たい風が吹き抜ける。


「──っ!」


 優斗が表情を引き締めるのと同時に、境内の奥、闇の中から新たな気配が立ち上がる。


「…兄貴?」


 麻斗もすぐに異変を察知し、構えた。

 怪異は──一体だけじゃなかった。

 麻斗はそっと目を閉じた。優斗と麻斗は、普段から霊や怪異は自然に目に映る。だが、さらに深く、気配の根をたどるために──あえて"視る"ことに集中する。

 静寂の中、自分の呼吸だけが耳に響く。そして──


(ここだな)


 麻斗はピタリと一点に意識を定めた。

 境内の奥、苔むした石灯籠の影──そこに潜む、もう一つの異形の存在。


「……いるな」


 麻斗が目を開けると、瞳に一瞬、退魔の光が宿った。


「見えたのか」


 優斗もすぐに構え直す。術式の残滓を素早く再構成し、次の戦いに備えると、石灯籠の影が、ぐにゃりと歪む。そこから這い出してきたのは、さきほどよりもずっと濃い、瘴気にまみれた怪異だった。


「兄貴、俺が前に出る」


 麻斗がにっと笑う。


「頼む。今度のはさっきより手強い。慎重にな」


 優斗も、眉間にしわを寄せながら頷いた。

 麻斗は一歩、影に向かって踏み出す。拳に、また白く揺れる退魔の波長が集まり始め、麻斗の拳が閃く。

 だが──


「うおっ!? 硬っ……!」

(優斗、なんかこいつ──拳、通んねえ!)

(動き止まった今のうちに下がれ!足元に陣張る!)

(おっけ、任せた!)


 バシュッ!


 拳が怪異にヒットした瞬間、麻斗は顔をしかめた。さっきまでの影とは違い、異様な硬質感が全身を覆っている。拳に宿した退魔の波長でも、簡単には穿ちきれない。


「麻斗、下がれ!」


 優斗の声が飛ぶ。すかさず優斗が術式を展開、麻斗の足元に小さな光陣を広げた。

 次の瞬間──バシュッ!と光陣が弾け、麻斗の身体を風のように押し戻す。

 同時に、怪異が麻斗を掴みかかろうと伸ばしていた腕を間一髪すり抜けた。


「サンキュー兄貴!!」


 体勢を立て直しながら麻斗が叫び、再び拳を握る。今度はただの一撃じゃない。退魔の波長を、限界ギリギリまで一点に圧縮させた拳──


「これでどうだッ!!」


 渾身の拳が、怪異の胸を貫いた。白い閃光とともに、怪異は一声叫びを上げ、崩れるように霧散していった。──夜の境内に、再び静寂が訪れる。


「……はぁ」


 麻斗は息を吐き、頭をかく。


「これで、今度こそ終わり、だな」


 優斗も、術式を完全に解除しながら答えた。

 静かになった神社の境内を背に、二人は夜道を歩き出す。


 ◆ ◆ ◆


「ったく、高校生になったばっかだってのに早速呼び出し食らうとか最悪だったな……」


  麻斗が不満げに呟きながら、薄暗い参道を歩く。


「仕方ないだろ、そういう依頼なんだから。早く神社に帰ろう」

「えー!コンビニ寄ってお菓子とか買おうぜ」


 麻斗が優斗の腕をコンビニの方向に引っ張ると、冷たく腕を振り払われた。


「今回はちょっと気になる霊気だったし早く帰って柊さんに報告するのが先だ」

「ちぇ、妹がいたら絶対よしよししてコンビニでお菓子買ってくれてたんだろうなー!」

「妄想はその辺でいいから」


 優斗は涼しげに答えるが、胸の奥には微かな不安が残っていた。

 そして2人が向かうのは柊神社──

 彼らの師匠のいる場所であり、今も裏の世界と関わる拠点である神社。神主を務める叔父、柊宗一郎ひいらぎそういちろうは、表向きはただの神主だが、裏では陰陽師として、数多の怪異事件を裏から解決してきた人物だった。

 そして今夜もまた、優斗と麻斗は、柊神社の灯りに向かって、静かに歩いていく──。


「おう、小僧ども。無事やれたんだろうな?」


 柊神社の社務所から、くわえ煙草のまま柊宗一郎が顔を出した。肩までの乱れた髪に、だるそうな目。その姿からは神主らしい厳かさは微塵も感じられない。だがこの男、柊宗一郎は、表向きこそ神社の神主だが──裏では、怪異や霊にまつわる厄介事を裏で引き受ける、本物の陰陽師だった。

 優斗と麻斗は、そんな宗一郎の元で日々修業を重ねている。怪異に関わる力を持ちながら、危うさも併せ持つ双子を、辛辣な言葉と実力で叩き上げてきたのだ。


「ま、なんとかね」


 優斗が眼鏡を押し上げながら答える。


「余裕余裕! 俺の拳でぶっ飛ばしてやったぜ!」


 麻斗は得意げに胸を張ると、宗一郎はふうっと煙を吐き出して、じろりと二人を見た。


「バーカ。てめえらが"なんとか"で帰ってくるうちは、まだまだ半人前だっつってんだろうが」

「うっ……でも!」


 言い返しかけた麻斗の頭に、ゴン、と宗一郎の拳が振り下ろされる。


「いてっ! なんだよジジイ!」

「ジジイじゃねえ、叔父さんだ。ちゃんと敬え、バカ弟子どもが」


 宗一郎は鼻を鳴らして、二人を社務所の中へと手招きする。


「で? 今日のやつ、どんな気配だった?」


 柊宗一郎が腕を組みながら尋ねると、優斗と麻斗は並んで報告を始めた。


「最初に出たのは、ただの影の怪異だったけど……」

「二体目がやばかった。あれ、普通の怪異と違って、硬かったんだよな」


 麻斗は拳を握りしめながら、眉をしかめる。あの重い手応えを、拳が今でも覚えている。

 優斗も静かに続けた。


「しかも、動きが異常に緩慢だった。あれは…自然発生の怪異じゃないかもしれない」


 宗一郎は一瞬だけ目を細めたが、すぐにふっと笑った。


「なるほどな。まあ、よくやった。今日はゆっくり休め。……が、明日から地獄な」


「「えっ」」

「"なんとか"祓えるレベルを超えるために術式の訓練倍増な。逃げんなよ、クソガキども」


 そう言って宗一郎は、悪戯っぽく笑った。

 容赦のない地獄宣言に、麻斗が「あ゛~~!!」と顔を仰向けて叫び、優斗も、静かに、深いため息をついたのだった。

 ──夜の柊神社には、いつものように、どこか騒がしく温かい空気が流れていた。


(どうする?優斗、逃げる?)


 麻斗がニヤニヤしながら、こっそり優斗にテレパシーを飛ばす。

 二人の間では当たり前になっているが──

 この"心の声"、つまりテレパシーは、生まれたときから自然と使えたものだった。

 しかも、使えるのは優斗と麻斗、双子の間だけ。知られたくない会話をするときも、遠く離れた場所でも意思疎通できる、めちゃくちゃ便利な能力だ。


(やめとけ、またゲンコツされるぞ)


 優斗が冷ややかに返したその瞬間だった。

 バッ!

 社務所の机に肘をついていた柊宗一郎が、ギロリと二人を睨んだ。


「そこ!テレパシー使ってんじゃねえぞ!!」


 びくっと硬直する双子。

 なお、柊には"内容"までは分からないらしいが、"使ったかどうか"だけは、なぜかバレるのだった。


(……バレた)

(いや、バレてんじゃねえか!!)


 無言で顔を見合わせる二人。

 優斗が眼鏡の奥でぐっと目を細め、麻斗は苦笑いで頭をかくと、宗一郎はため息をひとつ吐くと、ズイ、と歩み寄る。


「いいか。テレパシーってのはな、便利なもんだが、油断すりゃ足元すくわれんだぞ。

 怪異は"言葉"じゃなくて"心"に寄ってくる。脇甘くしてりゃ──簡単に踏み込まれる」


 ピシリと、重みのある言葉。

 優斗と麻斗は自然と背筋を伸ばした。


 ふだんはテキトーな態度の宗一郎だが──

 本当に大事なことは、いつもこうして叩き込んでくるのだ。


「……わかったか、小僧ども」

「はい……」


 二人は素直に頭を下げるしかなかった。

 麻斗がぶーたれてる時、柊が優斗だけを手招きした。優斗が首を傾げながら柊の方に行くと、柊はこっそりと、だが真剣な声で言う。


「再三言ってるが、お前の惹魔体質は、霊や怪異どころか、それ以外からも狙われる。肝に銘じとけよ」


 優斗は真剣な表情で頷いた。

 その夜、柊神社には、月の光だけが静かに降り注いでいた。

 しかし、優斗と麻斗の戦いの日々は、これからも──続いていく。


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