だいすき、はアナログで。

@karabakari

第1話 ルーター、お前を──喰う!!!


「ルーターを……食うしか、ない……!」


 俺の名前は──いや、別にどうでもいいか。

 どうせ日本中央電話(JCT)の誰も覚えてないし。


 場所は、第1通信研究棟・地下2階の実験室。

 この部屋、通信機器のためのシールドルームで、内外からの電波は一切通さない。

 Wi-Fiも、5Gも、Bluetoothも、なにもかもシャットアウト。

 つまり、人間が最も孤独になれる場所ってわけだ。


「ふあああぁ……ピーマンになりたい……」


 って夢か

 机の上には、実験用のルーター。バイオ素材だとかで、環境にやさしいみたい。

 っていうか、誰も来ねぇし。薄暗ぇし。なに? 

 環境に優しくする前に、従業員に優しくしてくれる?

 連休で人がいないとかで、急遽駆り出されたけど、俺にも予定あるからね?

 (コンビニ新作スイーツ食べ比べとか)


 まあ、ヒマな仕事ってのは悪くないけど──

 今日に限って、ひとつだけ問題があった。


 ドアが、開かない。

「……ん?」


 無意識に数回ノブを回す。が、動かない。いや、非常用のスイッチを押せば開くはず・・開かない。

 

「おい、うそだろ……?」


 スマホ、圏外。インカム、ノイズだけ。外と連絡取れない


 ──マジで、閉じ込められた。


 助けが来る……かもしれない。でも、今日って連休初日じゃね?


 突発的な対応だったから、シールドルームの中にいるなんて、管理されていないかも。

 やばい……誰にも気づかれず、俺はここで朽ちるのか……?

 そう思った瞬間、腹の底がぐう、と鳴いた。


 ああ、メシ。メシ食ってない。

 カロリーメイトすら、ない。


 2日目経った ※体感7日

 何か食べられるものはないか……椅子の裏についてるねじ…硬すぎるか

 LANケーブル………いややっぱ金属じゃん、金属はムリだろ。


 ふらつきながら、壁にもたれる。

 視界が揺れる。思考がうまくまとまらない。

 だめだ、意識が──


 ──そのとき、視界の隅に“それ”があった。

 実験対象のWi-Fiルーター。

 厚み3センチ、アンテナ2本、茶色のバイオプラスチックケース。

 なんだろう。あれ、カロリー高そうじゃね?


 喉がごくりと音を鳴らす。


「ルーターを……食うしか、ない……!」


 バリボリ……バリボリ……

 もはや食べてるってより戦ってる……

 俺は、夢中で茶色のプラスチックにかじりついた、

 静電気が舌を刺してきやがる……!

 内側のチップもなんとなく苦くて、しょっぱくて、結晶化した苦いチーズみたいだった。

 

 その瞬間、視界がバチッと光った。

 ルーター内部から走った微弱電波が、脳の奥でなにかと接続した。


 バチバチバチ……

 世界が、グレーの砂嵐みたいにざわめいた。

 そこに、ぽつんと、青い波紋だけが──

 あれ? 思考が走る。情報が流れる。……え、俺って……天才……?

 え、俺……電波、見えてる……? いや、これって──

 バタン。俺は、そのまま床に倒れた。

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