盲目の魔法使いは再起する
まるはな
プロローグ
朝霧の漂う中、森の奥深くを一人の男――ルクトが歩いていた。
大きく伸びた木々の枝葉の合間から朝の陽光が斜めに差し込み、苔むした地面に柔らかな光の筋を落としている。それはルクトのヘーゼル色の髪も明るく照らした。
その中をルクトは静かに、しかし迷いのない足取りで進んでいた。
短めの空色をしたローブにフードを被り、その上からは肩にかかる薄手のストラを羽織っている。足元はしっかりとした革のブーツ。魔法使いというよりは実戦慣れした冒険者の出立ちだ。
ただ一つ異彩を放っていたのは目元を覆う紋様入りの目隠しだった。緩く結ばれたそれは魔法でしっかり固定されているのか、ルクトの視界を完全に遮っている。
「おや、朝露草だ。こんなところに生えてるとは珍しいね」
足を止めたルクトは見えないはずの視線を木の根元に向け、そっとしゃがみこんで淡い色の草に手を伸ばした。
指ほどの長さの細い茎に、小さなピンク色の花をつけた草が数本、朝露を浴びていた。葉先はくるりと丸まり木漏れ日のきらめきを受けて淡く光って見える。
ルクトは朝露草の根元に丁寧に指を添え、傷つけぬように優しく引き抜いた。
腰に抱えたカゴにはすでにいくつもの薬草が整然と収められており、ルクトの作業の確かさを物語っている。
ギャウギャウッ!!ウォーーン……!!
「……ん?」
遠くで聞こえた狼の声にルクトは動きを止めた。耳をすませば狼の鳴き声と共に人間の怒鳴り声も微かに聞こえる。
「これは……いけないね」
自身の足元に意識を向ける。
すると苔と朝霧に包まれた地面に淡く輝く紋様が浮かび上がった。若草色の光を放つサークル状のそれは、ルクトの魔力の痕跡だ。
ふっと身体が軽くなる。
筋力を高める身体強化の魔法だ。
ルクトはその場で一度足を踏み鳴らすと、霧を裂き風のような速さで声のする方へと疾走した。
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