第4話
次の試練がどんなものか、正直なところ予想もつかなかった。だが、少なくとも今の俺には、少しでも前に進むために必要な力を手に入れたことだけは確かだった。『逆転の極意』という新たな能力。それは、言ってしまえば、最悪の状況に追い込まれることで引き出される力だ。しかし、引き出されるからこそ、どうしてもそれに頼りたくはなかった。
「逆転の極意」だけに頼ったら、きっと本当の意味で強くなれない。試練に立ち向かう自分を、今度はどれだけ信じられるかが重要だ。
そんな思いを胸に、俺は試験会場を後にして控え室に戻る。その間、疲れた体をひたすらに引きずりながらも、次に何をすべきか、考えていた。
控え室では、他の受験者たちも一息ついているようだった。中には、俺が戦ったオーガを倒したことに驚いた顔をしている者もいたが、誰も声をかけてこなかった。それも当然だろう。彼らもまた、自分の試練に集中している最中だからだ。だが、そんな中でも一人だけ、俺に声をかけてきた人物がいた。
「お前、すげぇな。あのオーガを倒すなんて、どうやってやったんだ?」
その声の主は、赤髪の少年。彼はどこか挑戦的な眼差しで俺を見つめているが、その瞳にはどこか敬意を込めたものも感じられた。
「……俺がどうやったかは、もういいだろ。でも、そうだな、ひとつだけ言っておく。試練を乗り越えるためには、自分を信じることだ。」
俺は肩をすくめ、そう言って赤髪の少年を軽く見た。それを聞いた彼は、少し驚いた表情を浮かべたが、すぐににやりと笑い、言った。
「なるほど、面白い。俺もお前に負けねぇように、もっと頑張らないとな。」
その言葉に、俺は何も答えず、ただ頷くと、再び試練の場に戻る準備を始めた。だが、心の中では新たな決意が固まっていた。次の試練、そしてその先に待ち受ける試練に向けて、どれだけ自分が成長できるか。それが、これからの戦いの鍵になると感じていた。
しばらくして、審判の声が響いた。
「次の試練、開始!」
その一声で、全員が立ち上がる。これからどんな試練が待っているのか、正直不安ではあった。しかし、そんな不安を感じている暇はない。今はただ、目の前にある試練を乗り越えることだけを考えるべきだ。
試練の場に入ると、目の前には巨大な迷路のような場所が広がっていた。壁は高さ10メートル以上もあり、どこから入るべきかすら分からない。しかし、迷路の中には必ず出口がある。そして、その出口にたどり着く者が次の試練へ進めるのだ。
迷路の入り口に立つと、赤髪の少年がすぐに駆け出していった。彼の後ろ姿を見送りながら、俺はしばらく考え込んだ。迷路の先に待つのは、何かの罠か、それとも次の戦いのための準備か。分からない。しかし、迷路を進んでいく限り、俺に課せられた試練は続くのだ。
「行くしかない」
そう呟いて、俺は迷路の中へ一歩踏み出した。
迷路の中は予想以上に複雑で、進行方向を決めるだけでも一苦労だった。だが、すぐに自分の中で何かが切り替わったような感覚を覚えた。先ほどの『逆転の極意』が、ほんの少しだけ作用したのだろうか。周囲の音が少しだけ鮮明に聞こえ、視界がよりクリアになったように感じた。
迷路を進む中で、俺はついに他の受験者たちと出会う。だが、どこかで見覚えのある顔がひとり、立ち塞がっていた。
それは……赤髪の少年だった。
「お前もここに来たか。これが最後の試練だな。」
彼の目が、何かを秘めているような、鋭い光を放っている。お互いに気を使いながら、言葉を交わすことなく、そのまま足を進めた。
しかし、迷路の中で最後に待ち受けるものが何か、俺はまだ分からなかった。ただ、一つだけ確信していることがある。どんな試練であろうと、前に進んでやるという覚悟は、もう揺るがないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます