隣だった君に

【プロローグ 「隣だった君に〈始まり〉」】

 春の風が、

白髪をやさしく撫でていく。


七十歳になった今も、

この季節だけは、胸の奥が騒がしかった。


桜の花びらが舞う公園。

ベンチに座り、空を見上げる。


──あの頃は、

もっと世界が広く見えていた。


教室の窓から見えた青空。

休み時間に駆け回った校庭。

そして、隣に座っていた、あの子の笑顔。


長い年月が流れて、

たくさんの景色が変わってしまった。


けれど、

胸に刻まれたあの日々だけは、

色あせることなく、ここにある。


──隣だった君に。


この想いを、

今、もう一度、届けたい。


そんな、小さな祈りとともに、

僕の物語は始まる。


(本編へつづく)

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