エピローグ

終章:我々は知らない、知ることはないだろう

「本日、世界企業連盟セルヴィスそうすいとパラディン・セキュリティのマーグレイヴCEOは専用機で日本を離れました。当初のねんであった、国家安全保障に関する会合にセルヴィスそうすいは出席せず、廃炉作業が進む福島原発や、半島といった被災地を一週間にわたり視察。世界企業連盟として、鈍化しつつある復興に対し、必要な支援を行うことを表明しました。また、非常時における組織のかた、情報のえんかつな収集と共有に関する研究を進め、今後の災害対策としてかしたいともコメントしており、世界企業連盟は紛争地域の復興だけでなく、被災地の復興にも積極的に取り込んでいく姿勢をアピールしました」


 レイがいるのは、とあるセーフハウスの一室。

 本棚にはプログラミング言語、行動心理学、深層心理学、解剖学、神経工学、電気工学、バイオインフォマティクス、人間工学、統計学、生理学、生化学、経済学、公衆衛生学といった様々な分野の分厚い専門書が敷き詰められている。


 ピピッ ピピッ


 机の上に置かれた、彼女の通信端末から呼び出し音が鳴った。

 すぐにラジオを消し、電話に出る。


「もしもし、私よ」

「今、時間は?」

「ある。周りには誰もいない。めずらしいわね、デイビッド、あなたから直接電話してくるなんて」

「悪いな、急にあんたを呼び出して。本当ならサムにでも頼もうと思ったんだが、奴は自分の仕事が忙しいそうだ」

「そういうあなたはどうなの?」

「もう歳さ。この老いぼれが必要とされる時代は終わった」

「はあ。必要とあればみんなはあなたを引きずり出すわよ? あと私を何歳いくつだと思っているのかしら。それで、仕事の内容は?」

「タイの“かい”に参加してくれないか? 少々めんどうなことになっていてな」

「少々?」

「……うそをついた。かなり、めんどくさいことになっていてな。相手にする勢力は十を越えるだろう」

「いいわよ、くわしく教えて」


 セーフハウス上空、くもりのない青空を、二匹のカラスが飛んで行った。


 今も彼女は世界をわたり歩いている。

 しかし、誰もそれは知らない、まことのがらす

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