第十三話 決意
アイリスの話を聞きながら、リオの胸の奥に、かすかに痛む記憶がよみがえっていた。
彼のいた世界でも、国同士の争いや内乱は珍しくなかった。
リオ自身、魔術師団の一員として、何度も戦場に立った。
ときには、国を守るため、ときには、暴走する権力者を止めるため。
その中には、内戦の火種が広がる王国へ、「最強の魔術師」として派遣されたこともあった。
あのとき――
焼け落ちた村、泣き叫ぶ子ども、家族を失った人々。
どれほど強大な魔力を持っていても、リオ一人の力で救える命には限りがあった。
戦いが終わった後に残るのは、瓦礫と、癒せない心の傷ばかりだった。
自分の力は、本当に誰かの役に立っているのか――
そんな疑問と無力感が、リオの心に深く刻まれていた。
リオは小さく息を吐き、アイリスの横顔を見つめた。
彼女の決意に、かつての自分が重なる気がした。
この場所でなら、誰かの力になれるだろうか。
アイリスの話が静かに終わると、屋上にはしばし沈黙が流れた。
春の穏やかな風が二人の間をすり抜け、遠くで鳥のさえずりが聞こえる。
リオはゆっくりと口を開いた。
「……アイリス。今度は、俺の話をしてもいいかな」
アイリスは驚いたようにリオを見つめ、静かに頷いた。
「俺は――この世界の人間じゃないんだ」
リオは、言葉を選びながらも、できるだけ素直に語り始めた。
「目が覚めたら、突然この学園都市の近くにいた。
それまでいた世界では、魔術師団に所属していて……いろんな国や街を守るために戦っていたんだ。
でも、ある日突然、理由も分からずこの場所に転移してきてしまった」
自分でも信じがたい話だと思いながらも、リオは真剣なまなざしでアイリスを見つめる。
「どうして自分だけが異世界に来たのか、正直、今でも分からない。
でも、もしかしたら――何か意味があるんじゃないかって思うんだ。
この世界で、俺にしかできないことがあるのかもしれない。
……そう信じてみたい」
リオの声は静かだったが、その奥には揺るぎない決意があった。
アイリスはしばらく黙ってリオの話を聞いていたが、やがてふっと微笑んだ。
「……信じられないような話だけど、信じるわ」
それぞれの過去を抱えながらも、新しい場所で歩き出そうとする二人の間に、静かな絆が生まれ始めていた。
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