人混みに紛れる彼
奈落柩
第1話 ありふれた彼との出会い
私は今のこの何もない田舎が嫌だった。都会の煌びやかな美女や、もちろんイケメンとの恋。憧れて、憧れて、とうとう貯めてた電車賃持って家を飛び出した。
「新宿といえば歌舞伎町!」と思ってきたはいいもののおじさんに視線のキモイオタクみたいな人達。
「はぁ、なんか思ってたのと違うな」って路地で携帯いじりながらため息ついたら口の臭いおじさんが話しかけてきた「3万でどう?」
意味がわからなかった私は「はっ?」てつい返してしまった。それを否定ととったのか5万までなら出すからその代わりナマでおねがいと言われた。
だんだん意味がわかってきた私は気持ち悪ぃと叫んでしまった。その瞬間おじさんと私の間に入り込んできた人影がひとり。
「お、おじさん女の子がい、嫌がってるじゃん」
そしたら、あまり目立つのを避けたかったのかおじさんはそそくさとその場を離れていった。
中肉中背で黒髪が目にかかるくらいのスキニーにパーカーの特に特徴らしい特徴もない彼、強いてあげるのなら優しそう?
まぁ、とにかくほんとに特徴がなく人混みに紛れたら直ぐに見失ってしまいそうな彼はやっぱり優しそうに言った。「ここはよくいわゆるそういう目的の女の子が待つところだから勘違いされちゃったんだと思う。僕新宿に住んでるから色々詳しいしいある程度人は見なれてるつもりだからさ分かるんだけど君見かけないよね、初めて新宿に来たの?」
こういう人はタイプじゃないから普段だったら塩対応なんだけど助けてもらったし彼の優しそうな雰囲気もあって一応丁寧に話してしまった。「はい、新宿だったら楽しいことがあるかなって思って、その...」
「あはは、確かにもう何年も住んでるけど飽きないねそういう意味では楽しい街かもね、でもさっきみたいに汚い部分もあるから気をつけてね。あ、僕佐藤翔太ね。まだ懲りずにもし困ったことがあったら僕のところに来て、相談くらいには乗るから」と呆れ半分と言った感じで頬を書きながら話してくれた。
「はーい。ありがとうございます」私は助けてくれたのは嬉しいけど頼りなさそうだしそもそもタイプじゃないしで最後は空返事をしてしまった。
「あ、そうそう僕を探す時はその辺の飲んでる若者にジミーどこって聞いてみて多分誰かしらかが教えてくれるから」
いや確かに地味だけどこんな煌びやかなところで通り名がジミーってある意味すご(笑)ジミーに頼ることなんてあるのかなぁ...。まぁ、親切を無下にする理由はないし頷いておいた。
彼と別れてから数十分後...
もう何度目となるか分からない援交の誘い。そろそろぶん殴りたくなってきた。
きもいブおじじゃなくてイケメンとかにナンパされてお持ち帰りされるのを望んでたんだけどなんだここはおじさんしかおらんのか...はぁ、おじさんの群生地から抜け出したい。
正直私可愛いからナンパされて泊まるところくらいは困らないと思ってたんだけど今晩泊まるところどうしよう...。
んーーーーーーいやぁ、あいつはなぁないなぁタイプじゃないしなぁでも優しそうだったから一晩だけなら何もせずにでも泊めてくれたりしそうだなぁ。困ったら頼ってって言ってたしうん頼ろう。タイプじゃないから遠慮せずにいこう。
とりあえずこの辺になれてそうな酒飲みながら集まってるところ探して声をかけよっと。
お、あの人たち煌びやかだし慣れてそう声掛けてみよう。
「あのーすみません」
「ん?お、可愛いじゃんどうした?」
「ちょっと人を探してまして」
「新宿で人探しとはなかなか無茶するねぇ名前隠してるやつも多いからなぁそいつの特徴は?」
「えっとジミーさんってかたでなんと言えばいいのか特徴がないのが特徴?てきな?」
「あぁ、ジミーねあいつ確かに特徴ねぇーよなぁ(笑)でもここら辺じゃあいつに逆らうやついないくらい一応すげぇーやつなんだぜ?特徴ないけど(笑)」
「今の時間ならこの先を200メートルくらい行った先に神社があってさそこで猫に餌をやる時間だな。あいつ猫が好きだからさ結構長いこと居座るから今から急いで行けば会えると思うよ」
ちょびっとだけタイプだったので少しの愛想を混ぜながら「ありがとうごさいます。行ってみます!」と言いながら歩き出した。
いや、その辺の人に聞きゃわかるとか言ってたけどほんとに一発目で見つかる?普通、しかもほんとにジミーで通じるってどうなの?悔しくないの?
まぁ、有力な情報を簡単に得れたのはよかったからよしとしますか!
神社に着いたら彼が猫に餌を上げていた。足音に気づいた彼は顔を上げ「おやおや家出猫さんですか、さっそくお困り事ですか?」と聞いてきた。
なので私は「家事炊事やりますので何日か泊めて貰えたりしないでしょうか?」と聞いた。
「んー部屋は別になるけど隣の部屋に女の子がいるけど大丈夫?」
(こいつこの顔で彼女持ちかよ(笑) )
「え、むしろお邪魔じゃないですか?」
「あぁ、大丈夫僕がこんな性格だからさたまーにこうして泊まらせてあげたりしてるのをよく知ってるからさ」
「あ、家事炊事は大丈夫だよ、僕そういうの好きだしね気にせず泊まっていいよ」
(やはり見た目通りのお人好しね、てかお人好しなんてレベルじゃないほどのお人好しね)
「ちょうど話してる間に猫への餌やりも終わったし、ここからそんなに遠くないところだから、行こっか!」
そう言われてついて行ったところはタワマンだった。
(うわぁまじこんなところに住んでるの?お人好しっぷりといい、かなりいいところのボンボンね好物件だけど彼女ありかぁ...)
「くぅーーー」
ちょうど部屋に着いたらお腹がなってしまった。
「あはは、お腹すいたよね。すぐ作ると時間かかっちゃうから今日は冷凍してあるやつを有り合わせて簡単に作っちゃうね」
(冷凍してあるもので有り合わせができちゃうとか女子力たっか。卵焼き(カラ入り)しか作れない私とは大違いだわ)
出てきたのはハンバーグだった、そして普通に美味かった。
お腹が満たされて寝床の安心もできて気が抜けたのかなんだか眠たくなってきた。(顔ばっかりで考えてたけどこういう優しい人もありかもしれない)とぼやけた思考で考えながら私の意識は遠のいた。
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