唯一神決定戦 ――世界よ、ひれ伏せ

理系に生息するみじんこ

第1話 少女はすべての神に指名された

十二歳の誕生日の朝。

真木璃央は、自分の身体の奥で“何かが始まった”ことを感じていた。


明確なきっかけはない。ただ、瞼の裏に焼きついた夢と、胸の奥でじんじんと疼くような感覚だけが残っていた。


白い部屋。名乗らぬ声。

「おまえの名は、誰のものか――」


目覚めたとき、耳の奥でまだその言葉が響いていた。


リビングのテレビでは、どこかの国の災害と経済ニュース。

母は起きておらず、冷めた味噌汁が電子レンジの中で待っていた。

いつもの朝。

――のはずだった。


けれど璃央は、知る由もなかった。


四つの神が、唯一絶対の神になろうとしていること。

そのために、選ばれし“使徒”を指名し、力を与えていること。

そしてその指名が、すべて極秘裏に行われ、漏れた瞬間に関係者ごと“処分”される掟であることも。


璃央はまだ信じていた。

神は愛であり、平等であり、救いの象徴なのだと。


学校の宗教倫理の授業で習ったように。

テレビの福祉CMが語るように。

神の名を冠した施設の看板が示すように。


けれどそのすべては、表向きの仮面に過ぎなかった。


神々は今も、冷たい計算と本能のままに、

“ただひとつの神”の座を奪い合っている。


璃央の身体に宿る四つの印――

その意味を、彼女はまだ知らない。

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